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キーワード能力雑記:【第3回目】~先手必勝~

キーワード能力雑記へようこそ!
この記事では毎回1つのキーワード能力に焦点を当てて色々深堀していこうと思う。
第3回となるキーワード能力は『先制攻撃/First strike』だ。


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相手より先に攻撃ができる能力


いつもの通り先制攻撃の定義を見てみよう!

702.7 先制攻撃/First Strike

  • 702.7a 先制攻撃は、戦闘ダメージ・ステップのルールを変更する常在型能力である。rule 510〔戦闘ダメージ・ステップ〕参照。
  • 702.7b 1体以上の攻撃クリーチャーまたはブロック・クリーチャーが、戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃や二段攻撃(rule 702.4 参照)を持っていた場合、そのステップに戦闘ダメージを与えるのは先制攻撃か二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後に、戦闘終了ステップに進む代わりに、第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかったか、この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後で、戦闘終了ステップに移行する。
  • 702.7c 第1戦闘ダメージ・ステップの戦闘ダメージが与えられた後で先制攻撃を持たないクリーチャーに先制攻撃を持たせたとしても、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを与えなくすることはできない。第1戦闘ダメージ・ステップの戦闘ダメージを与えた後で先制攻撃を持つクリーチャーから先制攻撃を取り除いたとしても、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを与えることはできない(二段攻撃を持つ場合を除く)。
  • 702.7d 1体のクリーチャーに複数の先制攻撃があっても効果は変わらない。


先制攻撃を端的に表せば「相手より先に戦闘ダメージを与えることができる」能力といえるんだ。
詳しいことは今回も一つ一つ紐解いていこう。

702.7a 先制攻撃は、戦闘ダメージ・ステップのルールを変更する常在型能力である。rule 510〔戦闘ダメージ・ステップ〕参照。

ここで出てくる戦闘ダメージ・ステップは戦闘フェイズの一部で、攻撃クリーチャー、防御クリーチャーがどのように戦闘ダメージを与えるのかを決定して実際にダメージを与えあうためのステップだ。
戦闘フェイズは以下の5つのステップから成り立っているんだ。


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戦闘フェイズの内訳
今回は戦闘ダメージ・ステップが主役


先制攻撃は戦闘ダメージ・ステップに干渉してルールを捻じ曲げるらしいことがここで定義されているね。
それじゃあいったいどういう風に変えているんだろう?
それは702.2b以降で定義しているから次に行ってみよう。

702.7b 1体以上の攻撃クリーチャーまたはブロック・クリーチャーが、戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃や二段攻撃(rule 702.4 参照)を持っていた場合、そのステップに戦闘ダメージを与えるのは先制攻撃か二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後に、戦闘終了ステップに進む代わりに、第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかったか、この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後で、戦闘終了ステップに移行する。

長いね……
でも大丈夫!順を追って確認してみよう!

まず、攻撃クリーチャーかブロック・クリーチャーが戦闘ダメージ・ステップ開始時に先制攻撃を持っている場合に何かが起こるみたいだ。(おっと!二段攻撃君の出番はまだだから座っててくれ。君の出番はすぐにやってくるから!)
その起きることとは大きく分けると2つ。

1つ目が本来なら攻撃クリーチャー、ブロック・クリーチャー全員が行うはずの戦闘ダメージの発生が、先制攻撃を持つクリーチャーしか行うことができなくなるんだ。
この結果、先制攻撃を持つクリーチャーだけが一方的に相手を殴りつけられるわけだね。


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つまり攻撃クリーチャーのパワーがブロック・クリーチャーのタフネス以上なら一方的に倒せるんだ。


2つ目が通常の戦闘ダメージ・ステップが終わると追加でもう一度戦闘ダメージ・ステップが開始するということだ。(追加されたこのステップを第2戦闘ダメージ・ステップと呼んでるね)
ただし第2戦闘ダメージ・ステップでは、先制攻撃を持つクリーチャーはダメージを与えられないと言っている。
今度は先制攻撃を持たないクリーチャーたちの番というわけだ。

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第1戦闘ダメージ・ステップを生き残れば今度は先制攻撃を持たないクリーチャーたちが反撃する番だ


先制攻撃は「先制攻撃を持っているクリーチャーが戦闘に参加している」という条件で上記2つの効果を生み出す能力だというのこの定義では示しているんだ。


ここで重要なことは先制攻撃を持つクリーチャーが攻撃もブロックもしてなければそもそもその後に書かれている事柄は起きないという点だ。
つまり、元々戦闘ダメージ・ステップは2回あるわけではなくて、先制攻撃を持つクリーチャーが戦闘に関わることで初めて2回発生するようにできているということだ。

なんでこんな風に定義しているんだろう?
それはある種特殊な状況下でしか発生しないことを考慮するために常に戦闘ダメージ・ステップを2回発生させるのは処理の流れ的に無駄が多いからなんだ。
特殊な状況下でしか発生しないことはその状況になって初めて定義した方がゲームのデザインがスッキリしていいよね。

あとこれはイメージの話なんだけど、普段のゲームプレイの感覚では通常の戦闘ダメージ・ステップの前に新たな戦闘ダメージ・ステップが挟み込まれるようなイメージを持っていた人もいるんじゃないかな?
でも実際には通常の戦闘ダメージ・ステップが先制攻撃用のステップに変化して、その後に追加の戦闘ダメージ・ステップが起きるという流れが挙動としては正しいんだ。

わざわざこんなことを意識しなくてもゲームをプレイする側は何の不都合も起きないけど、これもゲームをデザインする側からすると重要なんだ。
同じ効果を実装するのであればよりシンプルなものが素晴らしいデザインだといえるよね。
複雑なマジックが長く続いているのはこういったシンプルさを重視していることも秘訣なんじゃないかなと思うんだ。


それじゃあ次の定義に移ろう。

702.7c 第1戦闘ダメージ・ステップの戦闘ダメージが与えられた後で先制攻撃を持たないクリーチャーに先制攻撃を持たせたとしても、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを与えなくすることはできない。第1戦闘ダメージ・ステップの戦闘ダメージを与えた後で先制攻撃を持つクリーチャーから先制攻撃を取り除いたとしても、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを与えることはできない(二段攻撃を持つ場合を除く)。

ここでは戦闘の途中で先制攻撃を得たり失ったりしたときのことについて定義しているね。

まず、第1戦闘ダメージ・ステップ(通常の戦闘ダメージ・ステップのことだ)で処理を終えた後に先制攻撃を得たクリーチャーについて。
この場合、第2戦闘ダメージ・ステップでは戦闘ダメージを与えるとあるね。
もしこの定義がなかったら

このクリーチャーは第1戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃を持っていなかったからダメージを与える権利はない。ところで第2戦闘ダメージ・ステップ時は先制攻撃を持たないクリーチャーがダメージを与える番だけど今このクリーチャーは先制攻撃を持っている。よってここでもダメージを与える権利はない。

となってしまってダメージを与えるタイミングを失ってしまう。
でもこのクリーチャーは確かに戦闘には参加していてダメージを与える権利を持っているはずだ。
それにこんな処理だとしたらかなり直感的じゃないよね?
だからルールの方でそんなことはないですよと定義しているわけだ。

次に先制攻撃を持っていたクリーチャーが第1戦闘ダメージ・ステップの後に先制攻撃を失った場合。
この時、そのクリーチャーが第2戦闘ダメージ・ステップでダメージを与えることはないと書かれているんだ。
つまり、

第1戦闘ダメージ・ステップ開始時に先制攻撃持ってたから既にダメージを与えたけど、第2戦闘ダメージ・ステップに入ったときには先制攻撃を失ってるからもう一度ダメージを与えてもいいよね?

みたいなことを許さないための定義なんだ。

このルールによってダメージを与えるタイミングは(第1)戦闘ダメージ・ステップ開始時の先制攻撃の有無にのみ左右されていて、ダメージを与える機会を失ったり不当に2回攻撃することがないということが定義されているんだ。


さあ、最後はいつものあれだ。

702.7d 1体のクリーチャーに複数の先制攻撃があっても効果は変わらない。

常在型能力恒例の2つ以上持っても意味ないよルールだ。
だって例えば先制攻撃を2つ持ってたら第1戦闘ダメージ・ステップに2回ダメージなんておかしいもんね。


さて、書かれているのはここまで。
次は書かれていないことについて考えてみよう。

まず、戦闘ダメージ・ステップ開始時以降に先制攻撃を持っても意味はないね。
確認したように先制攻撃の有無を確認するのは戦闘ダメージ・ステップの開始時だ。
その後で先制攻撃を持ったとしてももう遅いんだ。
だから先制攻撃を得るタイミングは計画的に。

次に戦闘以外では一切影響しない点だ。
例えば格闘する際を考えてみよう。
格闘は簡単に言えば「クリーチャー2体が互いに自身のパワーに等しい点数のダメージを相手に与えあう」という効果だ。
先制攻撃を持っているからって先にダメージを与えられるというわけではないんだ。
あくまで戦闘フェイズでのみ効果が発揮される能力だということを覚えておこう。


ここで少し目線を過去に移してみよう。
先制攻撃のルールは初期からあまり変わっていないんだけど、その変種としてこんな表記のカードが存在したんだ。


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これらのカードも先制攻撃を持っているみたいだけど少し見慣れない形をしているね。
これは『先制攻撃(攻撃時のみ)/First strike when attacking』という形で定義された特殊な先制攻撃だ。
効果は名前の通り、「これを持つクリーチャーが攻撃した時、戦闘終了時まで先制攻撃を得る。」といった誘発型能力として定義されていたみたいなんだ。
現在ではこの定義は廃止されて代わりに「このクリーチャーは、それが攻撃しているかぎり先制攻撃を持つ。」といった常在型能力に変更されているんだ。
これによってかつては先制攻撃を得るのに対応して何か行動ができたけど今はそのタイミングがないという違いがあるから気を付けないといけないね。

ちなみに最近のWotCは常に先制攻撃を持つクリーチャーよりも攻撃時や自分のターンの間だけなど限定的に先制攻撃を持つクリーチャーの方を採用する傾向があるとマローは語っているんだ*1


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「あなたのターンであるかぎり、これは先制攻撃を持つ」というテキストを持つクリーチャーたち


この理由として「先制攻撃は攻撃的に使うと楽しいが、防御的に使うとゲームをシャットアウトしてしまいつまらなくなるから」というのを挙げている*2
これはどういうことだろう。

例えば先制攻撃を攻撃的に使うとどうなるだろう。


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先制攻撃は戦闘を優位に進めることができる能力だ。
だから積極的に戦闘に参加させることで勝利に近づくことができる。
もちろん相手もこのままだと負けてしまうからその状況を変えるために動いてくるだろう。
結果として先制攻撃はゲームに流動性を与え、マジックを楽しいものにしてくれるんだ。

一方で防御的に使った場合を考えてみよう。


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この場合、攻撃側は攻撃すると自分のクリーチャーを一方的に失うことになる。
そうなると攻撃しないことが正しい選択となり勝利に近づくことができないんだ。
また、防御側は無理に行動をしなくても負けることはない。
だから相手の動きを待って対処できるよう準備することが得策となるよね。
その結果、盤面は膠着しいつまでたってもゲームに変化は訪れなくなる。
それが長引けば長引くほどゲームとしてはつまらないものになってしまうことが予想できるよね。

戦闘をエキサイティングなものにするはずの先制攻撃が逆にゲームを退屈なものに変えてしまっている。
これがマローが言っていた問題点だ。
これは先制攻撃が戦闘において攻撃・防御どちらに使っても優位に働くことから生まれるジレンマなんだ。
そしてこのジレンマを解消するためにWotCが考えたのがさっき書いた「限定的な先制攻撃」というわけなんだ。


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限定的な先制攻撃の場合も通常の先制攻撃と同様攻撃的に用いることでゲームの優位性を獲得できるね。
これは先制攻撃をカードに持たせることでゲームをエキサイティングにするという目的を満たしているね。
対して防御的に用いた場合はどうだろう。


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防御的に用いたとしてもこれは結局普通のクリーチャー同士の戦闘と同じだ。
となると攻撃側は単純に盤面にあるクリーチャーのP/Tだけを比べて戦闘するかを決めることができるよね。
しかも今回の場合、相手がブロックしてくるかもしれないクリーチャーは相手のターンには先制攻撃を持って攻撃してくるかもしれないクリーチャーだ。
そうなると相手のターンに備えて攻撃しなかったとしても仮に攻撃された場合ブロックすると損してしまうよね。
だけどもしここで攻撃することで相手がブロックしてくれたらどうだろう。
その場合、お互いのクリーチャーは相打ちとなって相手ターンの攻撃に対して憂慮することがなくなるかもしれないよね。
仮にブロックされなかったとしても相手のライフを減らすことができるからライフレースをどちらが制するかという話になってゲーム自体は進行するよね。
つまりどちらになっても攻撃側は攻撃することでゲームを進めることができるんだ。


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これを見ると限定的な先制攻撃の場合、防御的に用いるとむしろ相手に攻める理由を与えてしまうことがわかるよね。
だから優位性を獲得したかったら攻撃的に運用していく必要があるんだ。
そしてこの状況こそがWotCが望んでいたエキサイティングなマジックだ。
普通の先制攻撃に比べ弱くなっているように感じるかもしれないけど、ゲームを面白くするための道具としてこの「限定的な先制攻撃」は使い勝手がいいとWotCは判断しているということなんだね。


さて、次は先制攻撃の歴史を見てみよう。

先制攻撃は接死や防衛と違いアルファから存在する由緒正しい能力だ。


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アルファには3種類の先制攻撃持ちクリーチャーと先制攻撃を与えるオーラが1種類あった。
今のマジックでは先制攻撃は、そしてたまにが扱うという役割分担がされている。
だからである《エルフの射手》が先制攻撃を持っているのは少し違和感があるかもね。
黎明期は色の役割があやふやで今とは違う考え方だったということが見て取れるね。

さて、上に書いた通り先制攻撃は基本的にの役割だ。
では何故その色に割り振られているのか、それは先制攻撃が持つフレーバーを考えてみよう。
先制攻撃は読んで字のごとく相手より先に攻撃できることを表しているんだ。
それをどのように実現させるかというところでこの2色が選ばれているんだ。

は統率された軍隊の色だ。
その際には槍や弓といった長距離からの攻撃手段を持って戦いを有利に進めるだろう。
そうなると必然的に敵よりも先に攻撃する手段を持つわけだ。
それが先制攻撃として表れているんだね。

対して、赤は白に比べてもっと単純だ。
悩んでる暇があったら相手より先に殴ったらいいじゃん!と素早く行動に移す。
そのフットワークの軽さが先制攻撃として表現されているんだ。

一方では積極的に自ら動く色じゃないから先制攻撃を持たないんだ。

ところではたまに持つことが許されていると言ったよね。
では、どいうときに黒が先制攻撃を持つことが許されるんだろう。
それは白と対をなす存在として描かれる時だ。
アルファにあった《黒騎士》もその1つ。
騎士というクリーチャー・タイプは白と黒に多く存在する。
そして白と黒は対抗色と言って互いが敵対関係にあって、対比して描かれることが多い色なんだ。
ところで騎士は素早く敵を倒す機動性、槍を使ったレンジのある攻撃など先制攻撃を持つフレーバーがそろっているよね?
特に白い騎士は色の理念も併せて先制攻撃を持つことが多いんだ。
となるとその白い騎士と対比して描かれる黒い騎士も先制攻撃を持ってもいいよね?
そういう時に黒は先制攻撃を持つことが許されるんだ。


次に『先制攻撃/first strike』という名前について考えてみよう。
まず目につくのは2単語で構成されているところだ。
基本的にキーワード能力は英語名詞一単語で表現されることが多いんだけど、絶対そうしなければならないというほど強いルールではないんだ。
アルファを作るときには意識されなかっただけの可能性もあるけど、無理に1単語にまとめるよりわかりやすさを重視した結果なんだろうね。
そしてfirst strikeという名前は読んで字のごとく先に攻撃するという意味だ。
能力のイメージそのままだね。
でも僕はマジックを始めたばかりのころ、この能力のことを「召喚したターンから攻撃ができる」能力だと勘違いしたんだ*3
これはデュエルマスターズ『スピードアタッカー』からくる連想だったんだけど、どちらも素早いことがフレーバーとなっている能力だから僕の中で変な関連が生まれてしまったのかもしれない。
これは僕の個人的な勘違いだけどこれまで紹介してきた接死や防衛に比べると必ずしも名前=効果という風には一致しづらいんじゃないかな。
先制攻撃はまだわかりやすい方だけど今後紹介していく予定の能力たちも必ずしも名前だけで能力が予想できるとは限らない(とはいえフレーバー面を考えると名前と効果には関連があるように作られてるけど)から変な先入観を持たないようにしようね。


最後に先制攻撃と関連のあるカードたちを見ていこう。

まずいつも通り先制攻撃を共有するスリヴァーを見ていこう。


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やはり基本的な能力だけあって共有するスリヴァーも多いね。

まず初めは《かぎ爪のスリヴァー》だ。
スリヴァーは基本的に「○○(漢字2文字)スリヴァー」といった日本語訳が与えられるんだけど、テンペスト収録のこいつはまだ翻訳ルールが決まっていなかったのかもしれないね。
このスリヴァーは名前の通り仲間たちにその鋭いかぎ爪を共有するみたいだ。
しかもただのかぎ爪じゃないみたいだ。

「剣の長さ分ぐらいは奴らから離れていろ!」というジェラードの号令は、スリヴァーのかぎ爪が突然長く伸びてきたために途中で止まってしまった。「待て!! ―長槍を出せ!」

ジェラードはベナリア軍の指揮官として武芸の達人として称えられている人物だ。
最終的にはファイレクシアと戦い自らの命と引き換えにヨーグモスを打ち倒したいわば英雄だ。
そんな彼をも驚かせたのが《かぎ爪のスリヴァー》というわけだ。
本来なら剣ほどの距離で十分だった間合いがこいつの登場で長槍ほどもかぎ爪を伸ばして襲う姿に変形するのは相手よりも先に攻撃する機会を得る先制攻撃のイメージにぴったりだね。


次に《長槍スリヴァー》。

「この長柄の武器が役に立ちそうだったのに!」
―ベナリアの巡回兵、メリク・エイダー

メリク・エイダーもベナリアの兵士で、ジェラードの一族であるエイドム・キャパシェンの副官を務める人物だ。
彼も突如長槍のように伸びたかぎ爪のせいで自分の武器が優位性を失ったことを嘆いているね。
性能面を《かぎ爪のスリヴァー》と比べてみると1マナ重くなることでサイズが1周り大きくなっているね。
しかも《かぎ爪のスリヴァー》と違い自軍のみの強化になっているんだ。
《長槍スリヴァー》が現代マジックに適応していることが見て取れるね。

我らの槍の長さは、我らが群れと戦う時の助けだった。しかし、今やその優位さすらも失われてしまった。
―ベナリアの勇士、エイドム・キャパシェン

これは《吐毒スリヴァー》のフレーバ・テキストだね。
フレーバー・テキストに出ているのはさっき出てきたメリクの上官だけど、おそらく《長槍スリヴァー》で言及しているメリクと彼は会っていないんじゃないかな?
それは、《吐毒スリヴァー》が次元の混乱で収録されたスリヴァーだからだ。
次元の混乱では「現在我々が知るマジックの歴史とは異なる世界線のマジックがとある事件で混在してしまった世界」をテーマにしているんだ。
だから《吐毒スリヴァー》と出会ったエイドムの部下であるメリクと《長槍スリヴァー》と出会ったメリクはパラレルワールドの関係にあるといえるね。
さて、改めて別の歴史を歩んだ次元の混乱のスリヴァーたちに話を戻そう。
次元の混乱側の歴史では先制攻撃は白ではなく黒が担っているみたいだね。
そして、白が槍状の武器を用いてリーチを確保してきたのに対して次元の混乱側ではその吐き出す毒によってリーチを確保しているんだね。
あと《吐毒スリヴァー》は《かぎ爪のスリヴァー》同様全てのスリヴァーを強化するんだ。
この頃のスリヴァーたちには敵味方隔てることのない強烈な仲間意識があったのかもしれないね。


最後に《先制スリヴァー》。

恐怖のあまり背を丸めることばかり考えて、すでに攻撃を受けたことにも気づかない。

もう名前からして素早く相手をしとめる姿が見て取れるね。
他の3種が攻撃のリーチを伸ばすことで戦闘を有利にするよう変質したのに対して《先制スリヴァー》は素早く相手をしとめる方向に変質したみたいだ。
ちなみに赤1マナのスリヴァーは《先制スリヴァー》が初めてらしいよ。
1マナ1/1という身の軽さも先制攻撃のイメージとマッチしていていいね。


さて、スリヴァーたちには別れを告げて次はこのカードについて見てみよう。


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なかなかふざけた見た目をしているね。
でもこれも立派なマジックのカードなんだ。(まあ、大会とかでは使えないけど)
このカードはMystery Boosterというセットに収録された「R&D Playtest card」と呼ばれるものでWotCが開発中にテスト用として作成したデザインを楽しむことができるものとして作られたものなんだ。

このカードの性能を見る前になぜこのカードのことを取り上げるのか先に話そう。
その話をするためにはまずマジック黎明期まで遡ることになるんだ。

その当時プレイヤーたちの間ではこんなジョークが流行っていたらしい。
曰く「Throat Wolfという名前のFirstest strikeを持ったウルトラレア(またはスーパーレア)のカードが存在する」と。
このFirstest strikeという能力、要は先制攻撃/First strikeよりも先に攻撃ができる能力であると噂されていたんだ。(ゆえにFirstest)
よくあるジョークの類だけどこれと他のジョークの違いは、WotCが当時出していたマジック専門誌『Duelist』でこれについて取り上げられたということだ。
そしてその時《Throat Wolf》はこんなテキストだと紹介されたんだ。

Throat Wolf (5)
Throat Wolfの召喚
Firstest Strike
Throat Wolfは、対戦相手のアンタップ・ステップの間に攻撃してもよい。
Throat Wolfは、攻撃に参加してもタップしない。

4/4

まあ能力についてはジョークだからマジックのルール内でどう動くのかは触れないけど、このジョークがWotCにまで届くほど当時有名だったことがわかるね。

それから時を経てビジョンズには《Throat Wolf 》をもとにこんなカードが収録された。


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《タールルームの勇者》は普通の先制攻撃しか持ってないけどブロックするかされるたびに相手の方の先制攻撃を失わせることでFirstestを再現しているね。
フレーバーテキストからも彼が誰よりも素早く対応できることがわかるね。

タールルームの言葉に、「驚かされる」という言い方はない

彼らに対して意表をついてやるのはなかなか難しそうだ。

それじゃあ本題に戻って「R&D Playtest card」として印刷された《Throat Wolf 》のテキストを見てみよう。

Throat Wolf (1)(赤)(赤)
狼(Wolf)の召喚
あなたはThroat Wolfを対戦相手の戦闘フェイズの間に唱えてもよい。
Firstest strike(このクリーチャーは先制攻撃を持つクリーチャーよりも前にクリーチャーに戦闘ダメージを与える。)
各対戦相手の各ターンの最初の戦闘フェイズの後に、追加の戦闘フェイズを行う。その戦闘フェイズの間は、Throat Wolfのみが攻撃できる。
[テストカード - 構築では使用できない。]

3/1

Firstest strikeについては元のジョークに則っているから省くとして、他の能力も相手の戦闘フェイズに出てきて奇襲する感じとか各対戦相手のターンに戦闘するフットワークの軽さとかでその素早さを表現しているね。
ちなみに「狼(Wolf)の召喚」となっているのはかつてクリーチャーのサブタイプを「○○の召喚」と書いていた再現なんだ。
元ネタの時代背景に合わせた細かい再現だね。





さて、先制攻撃について色々見てきたけどどうだったかな?

もしこれが面白いと思ってもらえたら幸いだ。

次回は今回の記事にも既に名前が出てきていたあのキーワード能力について見ていこう。
その日まで、あなたの対応力の早さが相手を上回りますように。

*1:マローのtumblr"Blogatog"で言及 

https://markrosewater.tumblr.com/post/184051958838/were-seeing-more-first-strike-when-its-your
markrosewater.tumblr.com

*2:同じく"Blogatog"内で言及 

https://markrosewater.tumblr.com/post/184052468393/whats-wrong-with-first-strike-that-wizards-isnt
markrosewater.tumblr.com

*3:この能力は別のキーワード能力としてマジックに存在している。それについてはまたの機会に…