キーワード能力雑記:【第8回目】~翼を授ける~
キーワード能力雑記へようこそ!
この記事では毎回1つのキーワード能力に焦点を当てて色々深堀していこうと思う。
第8回となるキーワード能力は『飛行/Flying』だ。
今更説明しなくともいいかもしれないが早速定義から確認してみよう。
702.9 飛行/Flying
- 702.9a 飛行は回避能力である。
- 702.9b 飛行を持つクリーチャーは飛行か到達を持たないクリーチャーにはブロックされない。飛行を持つクリーチャーは、飛行を持つクリーチャーも持たないクリーチャーもブロックできる。rule 509〔ブロック・クリーチャー指定ステップ〕、rule 702.17〔到達〕参照。
- 702.9c 1体のクリーチャーに複数の飛行があっても効果は変わらない。
まず702.9aを見てみよう。
702.9a 飛行は回避能力である。
ここでは飛行=回避能力であるとその正体を明かしているね。
では、回避能力とは何なのか、その正体は総合ルール内の用語集に記載されているからそっちを確認してみよう。
回避能力(かいひのうりょく)/Evasion Ability
クリーチャーが攻撃クリーチャーをブロックすることを制限する能力。rule 509.1b-c 参照。
これを見るとわかるように飛行を持つということはブロックに関して何らかの制限を相手クリーチャーに与える能力だと言い換えることができるね。
ちなみに509.1bを見ると回避能力は常在型能力であると書かれているんだ。
つまり回避能力である飛行は常にその効果を発しているというわけだ。
では飛行は実際にどのような制限をブロック・クリーチャーに与えるんだろう。
それは次のルールに記載されているんだ。
702.9b 飛行を持つクリーチャーは飛行か到達を持たないクリーチャーにはブロックされない。飛行を持つクリーチャーは、飛行を持つクリーチャーも持たないクリーチャーもブロックできる。rule 509〔ブロック・クリーチャー指定ステップ〕、rule 702.17〔到達〕参照。
このルールは前半と後半に分かれているから順にみていこう。
まず、前半部分は702.9aで抱いた疑問に対する回答だ。
飛行とは「飛行を持つクリーチャーか(今回は触れないけど)到達を持つクリーチャーにしかブロックされない」能力だと定義されているね。
飛行持ちは同じく飛行持ちである同族にしかブロックされないんだ。
そして、後半部分は飛行を持つクリーチャーがブロックする際には飛行を持つか否かに影響されないことを明示しているんだ。
つまり、飛行は戦場を陸と空に分け、空からの攻撃を一方的に有利にする非常に強力な能力だといえるね。
702.9c 1体のクリーチャーに複数の飛行があっても効果は変わらない。
702.9cはいつもの複数飛行を持っていても意味はないということだね。
飛行の飛行で相手よりさらに高く!みたいなことはできないわけだ。
さて、飛行という能力は初心者であってもそのルールを勘違いすることがほぼないと言っていいほど直感的な能力だ。
「飛行を持つクリーチャーは翼などの空を飛ぶことが出来る能力を有しており、それらを持たない地上(=飛行を持たないクリーチャー)からの妨害を無視できる」というイメージをそのまま体現しているキーワード能力の中で最も美しい能力だと個人的には思う。
そんな説明不要と思われる飛行という能力にも語るべき要素が2つある。
1つ目が「飛行という能力は対戦相手のデッキに依存する能力である」ということだ。
いったいどういことなんだと思うかもしれないけど順を追って説明するよ。
まず、君の対戦相手がガチガチのコントロールデッキでクリーチャーが1枚も入っていないと仮定してみよう。
そんな相手に対しては戦場に出すクリーチャーが回避能力を持っているかどうかは関係がなく、すべてブロックされないから飛行を持つかどうかは関係ないよね。
逆に相手が赤単スライのような高速アグロだった場合もこっちが飛行を持っているかどうかお構いなしに攻めてくることが予想されるから、飛行が持つ攻撃時の優位性は失われてしまう。
また、極端な話、相手のデッキに入っているすべてのクリーチャーが飛行を持っていたとしたら、それは回避能力でもなんでもなくなってしまうんだ。
何が言いたいかというと、飛行は「環境に飛行を持つクリーチャーと持たないクリーチャーが存在して、適度に攻撃とブロックが発生する場面で役立つ」といえるんだ。
この特徴は特にリミテッド環境では重要だ。
リミテッドではお互いに決定力を欠いてクリーチャーが大量展開されたまま膠着状態に陥ることが多々ある。
そんな時にそれらを無視して攻撃できる飛行持ちクリーチャーの存在はゲームを勝利へ導くことが出来る重要な要素だからだ。
また、飛行クリーチャーはそれを対処する側にクリーチャーを破壊できる除去カードを大きな地上クリーチャーか小さな飛行クリーチャーかどちらに打つべきかといった選択を迫ることができるね。
飛行が持つこのような要素がゲームに展開や選択肢を与え、より面白くなる手助けをしているというわけだね。
2つ目に飛行はフレーバー豊富であるがゆえにイラストに気を付けなければならないということだ。
飛行には「飛行を持つクリーチャーは何らかの方法で空を飛ぶことが出来ることをイラストで示す必要がある」という制約があるんだ。
具体例を見てみよう。
もし君が大空を雄大に飛び回る鳥のイラストが描かれたカードに出会ったとき、そのテキストに飛行の2文字を見つけられなかったらどう思うだろう。
きっと君は「このカードが飛行を持っていないなんておかしい!」と思うんじゃないかな?
この違和感は飛行が非常に直感的でわかりやすいがゆえに生じる問題だ。
この違和感は逆のパターン、つまり「飛行を持っているのにイラストはどう見ても飛べるように見えない」場合も起きるだろう。
そのため開発陣はカードのデザインにはイラスト発注時にそれが飛べるのか飛べないのかを意識して発注することでイメージにできるだけ沿うようにしているんだ。
さて、次は飛行の歴史を語っていこうと思う。
飛行の歴史はマジックの誕生、つまりアルファ時代から存在している。
マジックの生みの親、リチャード・ガーフィールドはテストプレイの段階ですでに出てきたクリーチャーが並びすぎると膠着状態に陥りゲームが停滞する問題に気が付き、それを回避するために様々な能力を作った。
その中の1つが飛行だったというわけだ。(ちなみに先制攻撃もこの問題を解決するために作られた。)
そんな飛行はこれまで発売されたすべてのセットに入っていると思われがちだけど、実はそうじゃないんだ。
まず純粋に1枚も入っていないセットにポータル三国志がある。
このセットは初心者用入門セットとして現実の三国志演義をモチーフにしたセットだ。
このセットに飛行が入っていない理由は他のマジックのセットとは違い三国志の武将たちをモチーフにしているため、飛行の代わりとなる別の回避能力を充ててカードのイメージと一致するようにしているんだ。(この能力もいつか紹介したい。筆の遅さ的にいつになるかわからないけど。)
そして”純粋に”と書いたように純粋な飛行クリーチャーが入っていないセットがもう1つあるんだ。
それがフォールン・エンパイアというセットだ。
フォールン・エンパイアはドミナリアの南半球、サーペイディア大陸を舞台としたマジック5番目のエキスパンションだ。
このセットには初めから飛行を持つクリーチャーは1枚も存在しなかったんだけど、起動型能力で飛行を得られるクリーチャーは1枚だけ存在した。
それが《Vodalian Knights》だ。
Vodalian Knights (1)(青)(青)
クリーチャー — マーフォーク(Merfolk) 騎士(Knight)
先制攻撃
Vodalian Knightsは、防御プレイヤーが島(Island)をコントロールしていないかぎり、攻撃できない。
(青):Vodalian Knightsはターン終了時まで飛行を得る。
あなたが島をコントロールしていないとき、Vodalian Knightsを生け贄に捧げる。2/2
青でありながら先制攻撃を持っているし、マーフォークが馬版マーフォークのような生物に乗って空に飛び出しているしで今の感覚だと変わっているといった印象を持つこのカードだけど、これがフォールン・エンパイア唯一の「自身の能力で飛行を持ちうるクリーチャー」なんだ。
この点を踏まえるとフォールン・エンパイアは”純粋な”飛行クリーチャーが1枚も存在しないセットといえるんじゃないかな?
ちなみにこのセットにはほかに飛行について言及するカードが2枚存在している。
《Tidal Flats》は青2マナを支払うと飛行を持たないブロックしているクリーチャー1体につき1マナを要求し、支払われなければそれにブロックされているクリーチャーは先制攻撃を持つというものだ。
またしても青いカードで先制攻撃を与える今の色の役割から見ると違和感のあるカードデザインだね。
カードパワーとしては弱いけど、カード名の日本語が干潟であることを考えるとブロック・クリーチャーがぬかるみにはまってうまく動けなくなっている隙に先に攻撃してやるといった感じでフレーバーはうまく表しているんじゃないかな。
もう一方の《Goblin Kites》はタフネス2以下のクリーチャーにターン終了時まで飛行を与えるけど、コイントスに負けるとそのクリーチャーを生け贄に捧げなければいけないカードだ。
こっちはゴブリン製の凧という不安定な飛行方法を表現しているね。
このセットがなぜ飛行が少ないのか、確かなことはわからないけど、フォールン・エンパイアは小型クリーチャーと部族がテーマで登場するのがドワーフやマーフォーク、エルフといった空とは無縁なクリーチャー・タイプが主役だからというのがあるのかもしれないね。
さて、マジックの根幹の1つともいえる飛行は同じく根幹であるカラー・パイとも密接にかかわっているんだ。
まず、最も飛行を得意としているのが青だ。
青は風や空とイメージが結びついていて、鳥からスフィンク、フェアリー、はては人工的に作った翼によって空を飛ぶものなどその種類は多彩だ。
次いで多いのが白。
白には鳥人間であるエイヴンや天使といった翼を持つクリーチャーが多い。
第三色は黒であり、デーモンや吸血鬼、ホラーなどが持っていたりいなかったりする。
そして実は赤は飛行が苦手な色として定義されている。
これは意外に思うかもしれないけど、赤はドラゴンやフェニックスといった象徴的なクリーチャーたちが例外的に認められていることが苦手な印象がない原因じゃないかな。
余談だけど、赤には飛行を持つクリーチャーへの火力と飛行を持たないクリーチャーへの火力とが対比されているカードが多い。
赤が飛行が苦手でありながら象徴的なクリーチャーが飛行と結びついている矛盾がここにも表れているのかもしれないね。
最後に最も飛行を苦手としているのが緑と色だ。
緑は《極楽鳥》のような黎明期から存在する象徴的なカードかドラゴンがテーマである際のサイクルの一部などごく限られたものしか飛行を持っていないんだ。
むしろ緑は飛行のことを嫌っていて緑に許されていないクリーチャーへの対処方法が飛行持ちには許されているんだ。
さて、ここで緑がなぜ飛行を嫌っているのかというのを考えてみよう。
まず、緑が大切にしているのは受容だ。
緑は他の色と違い世界をどうこうする気は毛頭ない。
むしろ自然の秩序を保ち、運命を受け入れ、その中での自分の役割というものを果たすのが大切だと考えている、
そういう点から自然を破壊し本来の姿から歪める人工物(アーティファクト)を嫌うのはとても筋道が立っていると思う。
ただ、緑の理念をどれだけ見てみても緑がここまで極端に飛行を嫌う理由がわからないんだ。
公式の記事なんかを見ても「緑は飛行を嫌う~」と理由なしに出てくるけど、僕が探した限り明確に説明している記事はなかったように思う。
この点から僕は緑に飛行が許されていないのはカラー・パイが理由ではないと考えている。
そこでカラー・パイとは違う面からこのことについて考えてみたいと思う。
まず、クリーチャーの質について各色の特徴を考えてみよう。
最もクリーチャーの質が高いのは緑だ。
緑はクリーチャーの色であり、最もマナ・コストに対するパワー/タフネスの値が大きい、つまりマナレシオがいい色だ。
一方でその逆、最も質が悪いのが青だね。
とすると単純に各色のクリーチャーが戦闘を行うと、最もマナレシオのいい緑がマジックで最も強い色になってしまうよね?
つまり弱い側である青に緑に勝つ手段を与える必要がある。
だからこそ戦闘を有利に進めることが出来る飛行を青に与えることでその歪みを正すことが出来るようにしたというのが僕の考えだ。
この考え方であれば逆に緑に飛行が少ない理由も説明できると思う。
元々戦闘に強い緑にさらに戦闘に有利な飛行を与えるとこの格差がさらに広がってしまうわけだから、飛行を与えるわけにはいかないよね。
こうして青が飛行第1色、緑が有効な飛行を持たないように設定されたんだ。
この考え方でほかの色についても説明できると思う。
白はクリーチャーの質は悪くないけど、その長所は小型クリーチャーであって大型クリーチャー1体で盤面が膠着してしまうこともあるよね。
その状況を打破する力を与えるために飛行を得意と設定したんだ。
一方で赤はクリーチャーの質こそそこまで高くはないけどプレイヤーへの直接火力やパワーへのプラス修正が得意な色であることが、飛行を苦手な色に据えられた要因だと考えられるね。
次に緑が飛行を苦手とするだけでなく敵対的である理由について考えてみる。
これも緑という色の特徴を見てみよう。
緑はクリーチャーへの対応力を持たない色だ。
いくら緑のクリーチャーが強いとはいえ他の色はクリーチャーへの対処方法を持っているわけで、そういったもので対処されてしまえば相手のクリーチャーには全く触れられない緑になす術はないよね。
でも色の理念的に生命を最も重んじる色である限り安易な対処方法を与えるわけにはいかない。
そこで挙がるのが緑は飛行が苦手である必要があるというゲームバランス上の設定だ。
この設定を生かして苦手を通り越して緑は飛行を嫌っているという設定にすればどうだろう。
こうすることで緑に足りていなかった盤面干渉力を与えることが出来るんだ。
さらにこのことは飛行を得意とする青に対するアンチとしても働き、一種の対抗色対策カードのような役割を与えることが出来、色の関係を表すのにちょうどいいよね。
ここまでが飛行が持つ色の役割についての持論だ。
ゲーム全体が持つフレーバーとバランス、両方を考えたときにこの組み合わせが一番しっくりくると思うけどみんなはどう思うかな?
もし明確に公式が言及している記事を知っている人がいたら教えてほしい。
と、ここまで書いていたら公式からこんな記事が紹介された。
これはマローが各色について語ったボッドキャストの文字起こしだ。
上記のリンク先では緑について語られており、その中には大雑把にこんなことが書いてあった。
- 緑は大地、青は空気と紐づけられており、敵である青が空にいるため緑は空が好きではない。
- マジックを機能させるために意図的に緑から空に関する要素を削った。
- そのため自然界には鳥などの空を飛ぶものがいるという反論は意味をなさない。
- 緑の哲学上、飛行クリーチャーの破壊はあまり気にいるものではないが仕方がない。
- ある意味で緑は飛行クリーチャーを特別視している。
原文は英語のため大雑把な訳だけど、要は「フレーバー的には緑は大地と関係があるからと説明はできるが、ゲームの機能的な側面のために意図的に飛行を嫌うという設定にした」ということだ。
正確に知りたい人は原文に当たってほしい。
さて、僕の予想は概ねあっていたみたいだ。
やはり飛行の得意不得意はマジックの根幹たるコンバットに強く影響することから意図的に設定されている面があるようだね。
それだけ飛行がマジックにおける基本的な要素であるともいえるね。
さて、飛行についていろいろ考えてみたところで最後にいつものカード紹介だ。
まずはスリヴァーから《肺臓スリヴァー》《風乗りスリヴァー》《有翼スリヴァー》《Sliv-Mizzet, Hivemind》だ。
まず、少し変わった見た目をしている《肺臓スリヴァー》から見てみよう。
《肺臓スリヴァー》は飛行のほかに「墓地に置かれたときにライブラリートップに戻してもよい」という能力も併せて共有するスリヴァーだ。
"すべての"となっているのが昔のスリヴァーであることを表しているね。
このカードが登場したのが時のらせんというのもあって元ネタが存在しているんだ。
それが《復讐する天使》というカードだ。
その能力は元ネタの方では倒れても倒れても何度もよみがえり復讐を果たす力強い天使を表しているけど、スリヴァーでは肺に貯めた空気で宙に浮き、その空気をふいごのように噴き出して安全圏まで逃げるということを表現しているんだね。
一方で《有翼スリヴァー》と《風乗りスリヴァー》はよりシンプルだ。
お互い翼を手に入れることで重力という軛から解き放たれることに成功しているね。
さらに《風乗りスリヴァー》の方は《有翼スリヴァー》よりも1マナ軽いうえに近代マジックのクリーチャーよろしく自分がコントロールする範囲だけにメリットを共有するように変更されているね。
《風乗りスリヴァー》のフレーバーテキストには順応の達人とあることから次元が違うことを考慮しても《有翼スリヴァー》より洗練された姿なのかもしれないね。
最後に《Sliv-Mizzet, Hivemind》を紹介しよう。
これはあのラヴニカのギルドの一つ、イゼット団のパルンである二ヴ=ミゼット様となることが出来るスリヴァーだ。
R&D Playtest cardにふさわしく、遊び心のあるカードになっているね。
スリヴァーの手にかかればミゼット様ですら模倣可能ということなのかもしれない。
ちなみにフレーバーテキストも《火想者二ヴ=ミゼット》のオマージュになっているところも芸が細かいね。
火想者二ヴ=ミゼット
「(Z—>)90º — (E—N²W)90ºt = 1」
Sliv-Mizzet, Hivemind
(^17S)180°=(Z->)90°
飛行を共有できるスリヴァーは実はもう1種類いるんだけど、まだ紹介していないキーワード能力も共有するからその時に紹介しようと思う。
スリヴァーファンにはその時まで気長に待っててほしい。
次に紹介するのはこの2枚だ。
《混沌界》は飛行クリーチャーと地上クリーチャーのブロックできる・できないの関係を入れ替えてしまうエンチャントだ。
飛行が得意な青や白の対抗色であり文字通り世界に混沌をもたらす赤にぴったりのカードだ。
なぜこのカードを紹介しようと思ったのかは1つ目の能力「飛行を持つクリーチャーは、飛行を持たないクリーチャーをブロックできない。」に注目しようと思ったからだ。
この能力は今のオラクルではこうなっている*1。
飛行を持つクリーチャーは、飛行を持つクリーチャーのみブロックできる。
この能力は後に《雲の精霊》をはじめとしたクリーチャーに引き継がれ、俗に"High-flying"や"High Flyer"などと呼ばれる能力となったんだ。
フレーバーとしてはより上空に位置しているため地上には干渉できなくなってしまったことを表していて、デメリット能力として機能しているんだ。
飛行が持つ攻撃時の優位だけを取り出しているとも言えて、積極的に攻めるデッキではデメリット能力ゆえコストが軽く設定されているそれらのカードが使われることもあったみたいだ。
ところで"High Flyer"が飛行を失ってしまうと何もブロックできなくなってしまうのには注意が必要だ。
フレーバーには反するかもしれないけどそんな不思議な状況が起こるのもマジックの魅力の1つだ。
飛行に関するカードは膨大にあるから次で最後にするけど、最後に紹介するのはR&D Playtest cardからこのカードだ。
Sarah's Wings (白)
部族 インスタント — 天使(Angel)
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。それはターン終了時まで飛行を得る。(飛行を持つプレイヤーは飛行を持たないクリーチャーによっては戦闘ダメージを与えられない。)
[テストカード - 構築では使用できない。]
《Sarah's Wings》は一見するとクリーチャーに飛行を付与するいたって普通のカードに見える。
だけどこのカードが”おかしい”のはその付与する飛行をプレイヤーにも与える点だ。
現行のルールだと飛行はクリーチャー以外が持っても意味がない能力だ。
だけどテストカードだからその注釈文でこのカードが意図する挙動が示されている。
それは「飛行を持つプレイヤーは飛行を持たないクリーチャーからダメージを受けない」ということだ。
挙動は違うけど同じような結果になるカードとしては《Moat》などがすでにあるね。
Moat (2)(白)(白)
エンチャント
飛行を持たないクリーチャーは攻撃できない。
《Moat》の方は堀があるせいで飛んでいないクリーチャーは攻撃できないというフレーバーなのに対して《Sarah's Wings》はプレイヤー自身が空に浮くことで地上クリーチャーからの影響を無視できるという感じで機能もフレーバーも全然違うのに起きていることは似ているというのが興味深いね。
ちなみにSarahが何者かについてはよくわからなかった。
イニストラードを覆う影のストーリーで名もなき漁村に住む鍛冶屋の妻としてSarahという人物が出てくるらしいけど、カード名やイラストからこのSarahは天使であるだろうし無関係かな。
さて、飛行について色々見てきたけどどうだったかな?
もしこれが面白いと思ってもらえたら幸いだ。
次回はいつまでも待っていられないと今にも騒ぎ出しそうなあのキーワード能力について見ていこう。
その日まで、あなたの翼が大空にはためきますように。