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キーワード能力雑記:【第4回目】~隙を生じぬ二段構え~

キーワード能力雑記へようこそ!
この記事では毎回1つのキーワード能力に焦点を当てて色々深堀していこうと思う。
第4回となるキーワード能力は前回もちょくちょく登場していた『二段攻撃/Double strike』だ。

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2回攻撃できる能力


早速定義に移っていこう!

702.4 二段攻撃/Double Strike

  • 702.4a 二段攻撃は、戦闘ダメージ・ステップのルールを変更する常在型能力である。rule 510〔戦闘ダメージ・ステップ〕参照。
  • 702.4b 1体以上の攻撃クリーチャーまたはブロック・クリーチャーが、戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃(rule 702.7 参照)や二段攻撃を持っていた場合、そのステップに戦闘ダメージを与えるのは先制攻撃か二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後に、戦闘終了ステップに進む代わりに、第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかったか、この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後で、戦闘終了ステップに移行する。
  • 702.4c 第1戦闘ダメージ・ステップの間に二段攻撃を失うと、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを割り振ることはできない。
  • 702.4d 第1戦闘ダメージ・ステップに先制攻撃の戦闘ダメージを与えたクリーチャーに二段攻撃を与えると、そのクリーチャーは第2戦闘ダメージ・ステップにも戦闘ダメージを与えることができる。
  • 702.4e 1体のクリーチャーに複数の二段攻撃があっても効果は変わらない。


先制攻撃のときにも出てきたようにこの二段攻撃は先制攻撃の亜種なんだ。
だから今回は先制攻撃とは違う部分のルールだけ見ていこう。

702.4b 1体以上の攻撃クリーチャーまたはブロック・クリーチャーが、戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃(rule 702.7 参照)や二段攻撃を持っていた場合、そのステップに戦闘ダメージを与えるのは先制攻撃か二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後に、戦闘終了ステップに進む代わりに、第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかったか、この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後で、戦闘終了ステップに移行する。


あれ?前回も同じ説明をしたって?
でも前回わざと説明を省いたところがあったのをみんなは覚えているかな?

(前略) 第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、 (中略) この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。


そう、ここの部分こそが二段攻撃が二段攻撃である所以だ。
二段攻撃も先制攻撃同様第1戦闘ダメージ・ステップでダメージが与えられることができる。
ところで先制攻撃の場合は第2戦闘ダメージ・ステップではダメージを与えることができなかったね。
ダメージを与える権利は1人1回までだ。
だが、二段攻撃は違う。
二段攻撃は既に攻撃を終えたにもかかわらず第2戦闘ダメージ・ステップでも攻撃を仕掛けてくるんだ。


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二段攻撃の名の通り相手に2回ダメージを与える


このことから二段攻撃は実質的にパワーを倍にする能力ともとらえることができるね。

それと《巨大化》みたいなパワーにプラスの修正の与えるカードは相性が抜群だ!

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また、ダメージを与えることで誘発する能力は2回誘発するから非常に相性がいいね。

このように二段攻撃は非常に優れた能力だということができるんだ。
特に先制攻撃と比べたとき、二段攻撃はほぼほぼ上位互換*1だといえるね。
そのためか二段攻撃を持つクリーチャーは先制攻撃を持つクリーチャーよりも重いマナ・コストに設定されていたり、素のP/Tが低めに設定されていることが多いんだ。

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同じ色、P/Tでも二段攻撃の方が重かったり
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同じマナコストでも二段攻撃の方が素のスペックが低かったりする


だから二段攻撃を持つクリーチャーはマナレシオが低くなりがちという特徴があるんだ。

さて、次にいこう!

702.4c 第1戦闘ダメージ・ステップの間に二段攻撃を失うと、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを割り振ることはできない。

702.4d 第1戦闘ダメージ・ステップに先制攻撃の戦闘ダメージを与えたクリーチャーに二段攻撃を与えると、そのクリーチャーは第2戦闘ダメージ・ステップにも戦闘ダメージを与えることができる。

この2つは戦闘中に二段攻撃を得た/失った場合について書かれているんだ。
それがどういうことか改めて第2戦闘ダメージ・ステップでダメージを与えられる条件を確認してみよう。

第2戦闘ダメージ・ステップでダメージを与えられるクリーチャーの条件

  1. 最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかった
  2. この時点で二段攻撃を持っている

つまり、第1戦闘ダメージ・ステップで二段攻撃を持っていたけど第2戦闘ダメージ・ステップの時点で失ってしまっているクリーチャーは1.2.どちらの条件も満たさないから戦闘ダメージを与えられない。
一方で第1戦闘ダメージ・ステップで先制攻撃を持っていたクリーチャーに二段攻撃を与えて第2戦闘ダメージ・ステップに入った場合は、2.の条件を満たすから戦闘ダメージを与えられるというわけだ。


最後に

702.4e 1体のクリーチャーに複数の二段攻撃があっても効果は変わらない。

はいつも通り。

二段攻撃を複数持っても三段攻撃にはならないんだね*2

ちなみに書いていないことに関しては基本的には先制攻撃と同じだ。
戦闘ダメージ・ステップ開始時以降に二段攻撃を得ても関係ないし、二段攻撃を持つクリーチャーが格闘してもダメージを与えるのは1回だけだ。
ただし、1つだけ注意しないといけないことがある。
それは『第2戦闘ダメージ・ステップの段階でブロック・クリーチャーがいなくなってもプレイヤーにダメージを与えることはできない』という点だ。
これは普通の戦闘において、ブロック・クリーチャーが除去された場合でもブロックは成立しているのと同じ理屈なんだ。


さて話は移り変わって、過去に紹介したキーワード能力の中と二段攻撃の相性を見てみよう。

まず、接死との組み合わせは非常に相性がいいね。
なぜなら相手クリーチャーがいくら強かろうが先にダメージを与えられれば接死で倒すことができるからだ。
これは先制攻撃も同様のことが言えるね(先制攻撃の記事では言及し忘れたけど)。
一方で、接死を持つクリーチャーが二段攻撃(先制攻撃)を持つクリーチャーを相手にするのは、まず相手の攻撃に耐えてからでないと肝心のダメージを与えるタイミングが来ないからかなり厳しいね。

他にも先制攻撃と同時に持ってたときのことを確認してみよう。
このときは基本的には何の意味もなさないと考えて問題ないよ。
もう一度確認するけど第1戦闘ダメージ・ステップでダメージを与えられるのは『先制攻撃か二段攻撃を持っている』ことが条件だから両方持っても挙動としては二段攻撃を持つクリーチャーと何ら変わらないんだ。
ただし、先制攻撃と二段攻撃は違う能力だから『片方を失ってももう片方がある限り先にダメージを与えられる』ということは覚えておこう。

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前回登場した《タールルームの勇者》も二段攻撃相手にはさすがに驚いてしまうかもね

ちなみに相手が先制攻撃を持っていた場合、第1戦闘ダメージ・ステップでお互いにダメージを与えあうから普通の戦闘とあまり変わらないけど、もしここで決着がつかなければ二段攻撃側はもう一度ダメージを与えられることを考えると二段攻撃の方がやや有利と考えることができるね。
二段攻撃が先制攻撃の強化版だということがこの関係からもうかがえるね。


それじゃあ次になぜ二段攻撃が生まれたのか見てみよう。
二段攻撃はレギオンで初登場したキーワード能力だ。
このレギオン、なんと収録されているカード全てがクリーチャー・カード(しかも基本土地すら入っていないんだ!)という前代未聞のセットだったんだ。
つまり、レギオンにはクリーチャーが持ちうる能力しかセットに入れることはできないことを意味していたんだ。
そしてレギオンというセット名は『軍団』という意味で、戦闘をする上で有利となるような能力が求められたんじゃないかな。
だからこそこのセットで二段攻撃が収録されたんだと僕は思うよ。

ところで二段攻撃の原型はレギオンよりも前に生まれていたということを知っているかな?
それはこの当時イベントされていた『カードを作るのは君だ!/You Make the Card!』という企画が関係しているんだ。
このイベントはWotCから何個かの選択肢が公開され、ユーザがそれらに投票していくという形でカードをデザインしていくというものだったんだけど、この時にそのカードが持つ能力について一般から公募した能力の中に二段攻撃の元型が含まれていたんだ。
でもその時ユーザの投票によって作られるカードは「緑のクリーチャー」であることが決まっていて二段攻撃は緑にはふさわしくないと判断されWotCが公開する選択肢から除外されることになってしまったんだ*3
一度はお蔵入りとなった二段攻撃だったが、その能力自体は非常にエレガントであるとWotCは判断した結果、開発中だったレギオン赤いカードとして収録することにしたんだ。

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ギオンに収録された初の二段攻撃を持ったカードたち


ところでなぜ二段攻撃が緑のカードとしてふさわしくないと判断されたんだろう?
二段攻撃は先制攻撃の派生作品のようなものだ。
それを踏まえると先制攻撃のカラー・パイと同様が担当することも違和感がないよね。
それに、は訓練された戦闘技術として、はその素早さから実現される手数の多い攻撃として二段攻撃を持つことに違和感がないのに対して、は巨躯から繰り出される重い一撃を持って相手を打ち倒すという側面が強いから二段攻撃のイメージとは合わないんだ。
ちなみに先制攻撃の時は許容されていたなんだけど、二段攻撃に関してはほとんど存在していなくて、何の条件もなく二段攻撃を持っている黒単色のクリーチャーは《墓所の勇者》しか存在しないんだ。

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黒の二段攻撃持ち


しかも《墓所の勇者》はマナを支払わないと戦場に残れないから純粋な単色のクリーチャーとしては誰も持っていないと言えるね。
これは、もある1枚の例外を除いてとの多色カードであったり起動型能力のコストとしてマナやマナを要求してくる形以外で二段攻撃を持つカードは存在していないんだ。

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例外中の例外として0マナで二段攻撃を持てる青いカード
これだから次元の混乱は……


そのことを考えるとが先制攻撃が得意であることの延長線上に「先制攻撃が得意であるゆえに通常の戦闘と先制攻撃を同時にこなす二段攻撃も操れる」という表現なのかもしれない。


二段攻撃の生い立ちもわかったところで次にその名前について考えてみよう。
『二段攻撃/Double strike』は英語名・日本語名ともに読んで字のごとく2回攻撃するということをストレートに表現しているね。
この名前はキーワード能力の中でも特に『名前と実際の挙動が一致している』能力の1つだと個人的には評価しているんだ。
下手したら先制攻撃よりも先に二段攻撃を見た方が先制攻撃の挙動を間違えないんじゃないかと思うくらいいいネーミングだと思うよ。
first strikeとdouble strike、先制攻撃と二段攻撃でネーミングをそろえている点も両者に関連があると示しているよね。
二段攻撃の名前に関しては文句のつけようがないね。


さあ、最後に恒例の二段攻撃に関するカード紹介だ。

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消滅した都市の子孫。忘れられた武将の弟子。現代の鍛冶には作れぬ刃の達人。これらの称号はすべて歌われるに値する生涯で彼が手に入れたものである。


まず初めに紹介するのは《フェメレフの誇り、クェンデ》だ。

能力としては先制攻撃を持つものに対してさらなる強化として二段攻撃も伝授するものだ。
これは彼が軍人としてだけではなく指導者としても優れていることを表現しているように思うね。
ただし気を付けなければならないのは彼はあくまで既に先制攻撃を持つもののみを指導の対象としていることだ。
一度彼の恩恵で二段攻撃を得たとしてもその後先制攻撃を失ったものは二段攻撃の仕方も忘れてしまうから気を付けなければいけないね(まあ、先制攻撃もできないものが二段攻撃なんかできないだろうと考えれば辻褄は合うか)。

ところで彼は一体どういう人間なんだろう。
彼はドミナリアにあるフェメレフという宗教国家に属する騎士だ。
だが彼の本当のルーツは失われた国家ザルファーの英雄、マギータにあるんだ。
彼はマギータの子孫を自称し、見たこともない故郷ザルファーを永劫の彼方へと奪い去った(と信じられている)テフェリーに復讐を誓うキャラクターとして登場するんだ。
ストーリー上、彼は悪役として登場しそしてその復讐は失敗に終わってしまうから一見彼は小物のように見えてしまうかもしれない。
だけど彼の能力やフレーバー・テキストの彼を賛美する内容を鑑みると軍人・指導者としての力は本物だったんじゃないかな。
彼の歪んだ正義感が生来のものなのか育ちの中で形成されたものかはわからないけど、最終的にはテフェリーをかばったスビラという女性(後のテフェリーの妻)に「テフェリーを殺したければ私を殺せ」と言われ手にかけることなく去ったところから彼がその後改心して真っ当な人生を送れているといいね。


さて、次はいつものようにスリヴァーたちについて見てみよう。

まずは《骨鎌スリヴァー》だ。

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「やつらの尖腕は俺達の剣より鋭く、しかも俺達の弓より速い。」 ――― テューンの斥候、ハストリック


《骨鎌スリヴァー》は基本セット2014で登場した白のスリヴァーだ。
こいつの特徴は何と言っても名前にもなっている鎌のように大きく発達した腕にあるね。
光が透けるほど薄い刃でありながら、骨の固さも同時に持ち合わせていることがこのイラストから読み取れるね。

フレーバー・テキストでは基本セット2014の舞台であるシャンダラーにあるテューンという国で斥候をしていた人物によってその攻撃力と素早さについて言及されているね。
ところでハストリックという人物、斥候としての活動中に偶然スリヴァーたちの巣を発見してしまい捕虜となってしまったという経緯から他のスリヴァーのフレーバー・テキストにもちょくちょく登場するんだけど、最終的にはスリヴァーの”歌”によって狂乱してしまい街中でスリヴァーたちの脅威について喚き散らかすだけの存在になってしまったんだ。
彼の戯言が現実になってしまう日が来ないことを祈ろう。


次に《憤怒スリヴァー》について見てみよう。

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裂け目が開き、我らの矢は突然止まった。動くことは世界を押し返すようなものだった。しかし、スリヴァーの爪は動き続け、セッドの胸に赤い傷が見えたかと思うと、空中に赤い血の帯が浮かんだのだ。 ――― ベナリアの勇士、エイドム・キャパシェン


《憤怒スリヴァー》は時のらせんで登場した赤のスリヴァーだ。
セット発売の時系列で考えるとこいつの方が《骨鎌スリヴァー》より先輩ということになるね。
昔のスリヴァー同様こいつも敵味方関係なく自身の能力を付与する効果になっているんだ。

ところでこいつは何に対してそんなに怒っているんだろう。
フレイバー・テキストに目を移すと《吐毒スリヴァー》の時にも紹介したエイドム・キャパシェンがいるね。
彼の台詞を見るとおそらくスリヴァーたちとの戦闘中に『時の裂け目』と呼ばれる次元そのものを荒廃させるほどの現象が起き、彼らが放った矢は空中で止まるという世界の理を無視した結果が目の前で起きたみたいだ。
もちろんスリヴァーたちにも影響はあったがこいつらはその力に屈しなかった。
『時の裂け目』の中でもこいつらは暴れまわりエイドムの僚友であるセッドに切りかかった。
その時の原動力が自分たちを押さえつけようとするものに対する激しい怒りであり、その力の表現として二段攻撃を得たんじゃないかなと思うよ。

あと《憤怒スリヴァー》は当時のスリヴァー能力のテンプレートに従っているだけだから意識されていないだろうけど、名前やフレーバー的にも敵味方気にしてられない状況だったことが表されてて全スリヴァーが能力を共有することに説得力を与えているように思うね。


さて、二段攻撃について色々見てきたけどどうだったかな?

もしこれが面白いと思ってもらえたら幸いだ。

次回はキーワード能力としては意識されていないであろうあるサブ・タイプと密接にかかわる能力だ。
その日まで、あなたに2倍の恩恵が訪れますように。

*1:MTGにおいて完全上位互換というものはほとんど存在しないけどここでは大まかなイメージとして使っている。

*2:おっと。ここは黒枠の世界だ。

*3:ちなみにこの時作成されたカードというのが《忘れられた古霊》。 f:id:teilving:20201017020029j:plain