ゆーとぴあつりーのあれこれ

自分の好きを形に

【方形の円 偽説・都市生成論】ビルを見て都市を見ず

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ギョルゲ・ササルマン著『方形の円 偽説・都市生成論』


架空の都市を舞台にその歴史やそこを訪れたものの末路を描くショートショート
この小説は一言でいうとそういった話が36編収録された短編集だ。


本書を書店で見かけたとき「これを読み終わったら書評的なものを書きたい」と思わせる期待感があった。
そして事実、読み終わったので稚拙ながら筆を執った次第だ。


しかしこの記事は当初抱いた期待感を満たしたから書いているわけではない。
いきなりディスるようで申し訳ないが、本書は端的に言うとつまらなかった。
それは本書に収録されている話の多くはよくわからない話であったりオチに意外性を感じないなど、星新一的なショートショートの楽しみを期待すると肩透かしを食う羽目になるからだ。
それでもこれを書いているのは読んでいる中で様々な気づきや本書に対する見方が変化することがあり、一度言語化してみたくなったからだ。
だからこの記事は解説の酉島伝法氏の言葉を借りると案内所をこのネットの片隅に建てる行為をしようという話だ。


まず前提として帯にもあるカルヴィーノ著『見えない都市』との類似点についてだが、僕はこちらの作品を読んだことがないため割愛させてもらう。
同時代に国も違う別々の作家が同じように架空都市をテーマに短編集を書いたという奇妙な一致性があるらしいため機会があれば比較のために読んでみたいと思う。


話を戻すついでに作者と本書の歴史について触れていく。
著者はギョルゲ・ササルマン。
ルーマニア出身で本書は1975年に刊行された。
当時のルーマニア社会主義国家であり、当局の検閲により全編収録はされなかった。
初めて全編が収録されたのは1994年のフランス語訳版である。
その後、スペイン語版・ドイツ語版などを経て英語版が出たのが2013年。
この時点で英語版訳者が"根本的に私の理解に抵抗した"という理由で12編が訳されずに出版されることになった。


ここに冒頭のディスへのアンサーがある。
日本語版では英語版で訳されなかった12編も含め36編すべてが収録されている。
このことは僕たち日本人にとって解像度の低い文化圏かつ今の時代感覚ではない話が多く収録されていることを表している。
文脈のない話には興味が引かれにくいし、逆に文脈がありふれた話は興味を失いやすいともいえる。
この前提を持たないまま日本語版の初版である2019年の作品だと思って読むと違和感を抱き続けることになる。


さて、これで"なぜこの本がつまらないか"については終わろうと思う。
ここからは本題の"本書に対する気づき"について語ろう。
まず本書の特徴として1つ1つの話が非常に短いというのがある。
だいたい5ページ前後で1つの話が終わるのだ。
つまりたった5ページで都市の見た目や特徴を、そこに住む人々や訪れた人を、そしてその終焉を描き切ろうとしているということだ。
というよりも描き切るにはその程度のページ数で十分だと言わんばかりの圧すら感じた。
もちろんそのせいで説明不足の物足りなさを感じるのだが、その不足感は次の都市に向かわせる動機になっているようにも感じる。
そういった構成が漫然と感じていた架空都市とショートショートの相性の良さの正体なのかもしれない。


また、副題の『偽説・都市生成論』について。
購入当初はただかっこいい副題だという感想しかなかったが、読んでいく中でこの副題が各編へ与える印象の寄与が大きいことに気づいた。
本書は1編1都市を扱っており、各編のタイトルはその都市名からつけられている。
普通都市は都市そのものがあり、そのあとに名前が付けられるという流れになると思う。
しかし、副題を鑑みるとまず極端な都市名を設定し、それに沿った都市を作り上げた結果その都市に訪れる結末は何かという実験を行った報告書というような印象を抱かせる。
それによってどこか架空の都市を作り上げることで現実世界への皮肉や警告を表しているのではないかという錯覚を与えているように感じる。
それは著者による最初の都市、ムセーウム(学芸市)が『スクンテイア』誌*1に寄せられた抗議に対して同紙の自身が受け持つコラム内で寓話として答えたものだったことが関係しているのかもしれない。
だが、これは別に啓蒙的なことを目的に書かれたものではないことも副題からわかる。
偽説というようにこの話はあくまでフィクション、身も蓋もないことを言えばウソであり、それによって本書はエンタメとしての立場を守っている。
虚構と現実。
報告書と小説。
この副題によってそれらはうまく1つにつなぎ合わさり、作品の寓話性を高めることに成功していると思う。


さらにあとがきを読むことで本書の成立過程、著者自身や各国訳者の本書に対する思いを読むことでも最初に抱いたつまらなさの理由に気づけたり各都市に対する考え方を変化させるきっかけになったりした。
これは持論だが、僕はあとがきや解説といったものも作品の一部ととらえている。
だからこそ、架空都市というミクロな視点からあとがき・解説というマクロな視点に移ることができることは本書にとっては重要な部分を果たし、本書への解像度を高めていると思う。


さて、ここまででは本書の中身から感じた僕の気づきだ。
この気づきであれば僕以外が本書を読み終えたときも同じような変化が訪れるかもしれない。
だから最後にそれらを踏まえて僕自身が本書に抱いた感覚を書くことで誰かの気づきになれればと思う。
まず都市を題材としているから本書全体を1つの都市だととらえてみよう。
そうすると本書に収録されている各編における"都市"は都市にそびえるビルのようなものだととらえることができる。
本書を読んでいる間はビルの1本1本を詳しく見て回っている段階だ。
ビルごとに大きさや形状、色など違いはあるかもしれないが、基本的にそれらを見て回る行為はさして面白いものではないと思う。*2
だけどすべてのビルを見終わって少し俯瞰した立場で眺めると、それらがひしめく都市の全容を知ることができる。
そうなったときにはじめて都市としての風景が出来上がり、感慨を抱くことができるのではないかと考える。
つまり、「木を見て森を見ず」ならぬ「ビルを見て都市を見ていなかった」という気づきが本書をより芳醇なものにしていると。
そのことに気づいた後で改めてビル1本1本を見るとこのビルは都市のどこに位置していていてどういう歴史のあるビルなのかがわかってくると思う。


僕の案内所建設はここまで。
いろいろ書いたが僕自身は本書を読んだことに満足している。
ただし、前述したように小説として面白いかどうかといわれると疑問が残る作品でもある。
だから僕自身はこの本を人には薦めない。
それでも気になった人がいたら一度読んでみてほしい。
そうして案内所を建ててみたくなったら思い思いの案内所を建ててみてほしい。
それらの案内所が寄り集まり、『方形の円』という都市として完成されていくのだろうから。


*1:ルーマニア共産党の機関紙。現在は廃刊

*2:ビル愛好家がいたら申し訳ない

キーワード能力雑記:【第7回目】~コーナーで差をつけろ!~

キーワード能力雑記へようこそ!

この記事では毎回1つのキーワード能力に焦点を当てて色々深堀していこうと思う。
第7回となるキーワード能力は『瞬速/Flashだ。

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いきなり飛び出て相手の戦略を狂わせる能力


それじゃあいつものように瞬速の定義を見ていこう。

702.8 瞬速/Flash

  • 702.8a 瞬速は、その能力を持つカードをプレイすることのできるあらゆる領域で機能する常在型能力である。「瞬速/Flash」は、「あなたはこのカードを、あなたがインスタントを唱えられるときならいつでもプレイしてよい。」ということを意味する。
  • 702.8b 一つのオブジェクトに複数の瞬速があっても効果は変わらない。


702.8bはいつもの複数持っていても意味がないことを示しているだけだから実質702.8aが瞬速の個性と言えるね。

702.8a 瞬速は、その能力を持つカードをプレイすることのできるあらゆる領域で機能する常在型能力である。「瞬速/Flash」は、「あなたはこのカードを、あなたがインスタントを唱えられるときならいつでもプレイしてよい。」ということを意味する。


前半部分は置いておいて後半の文章で瞬速は「あなたはこのカードを、あなたがインスタントを唱えられるときならいつでもプレイしてよい。」という文言そのものだといっているね。
つまりその文言の意味が分かれば瞬速を理解できるね。


……と、その話を進める前にマジックにおいて呪文を唱えられるタイミングについて確認しておこう。

土地以外のカード*1は基本的に「自分のターンのメイン・フェイズ中でかつ他に呪文も能力もスタックに乗っていない*2」タイミングに唱えられるよね?
ただしインスタントと呼ばれているカードたちは例外で、そのような制限を無視して相手のターンだろうが誰かが呪文を唱えている間だろうが唱えることができるんだ。

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代表的なインスタントたち


この記事を読んでいるような人たちなら何を当たり前のことをと思うかもしれないけど、この話が瞬速を語るうえでとても重要になってくるんだ。


話を戻すと「インスタントを唱えらえられるときならいつでもプレイできるようになる」とは本来のカードタイプが持つ制限を無視してインスタント同様好きな時にプレイできるようになるというのが瞬速が持つ役割といえるね。

こうしてみると定義前半部分の意味がよくわかるね。
つまり墓地やライブラリなど手札以外から唱える時もインスタント同様唱えられることを保証するために定義されているんだ。


さあ、瞬速の定義はこれでおしまいだ。
今までのキーワード能力に比べてもすごくシンプルな能力だったね。
ただし、瞬速について気を付けなければならないことが3つあるから順番に見ていこう。

まず1つ目は瞬速とインスタントは違うということだ。

瞬速はあくまで唱える制限をインスタントと同様に変えるだけでカードタイプには手を加えていない。
だからインスタントに影響のあるカードがあっても瞬速を持つカードには意味をなさないし、その逆も同じなんだ。

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インスタントではないから《緊急阻止》で瞬速を持つカードは打ち消せないし、《狡賢い夜眷者》の能力でインスタントのコストを下げることはできない


2つ目は瞬速を持つ土地についてだ。

カルドハイム現在、初めから瞬速を持つ土地は存在しない*3けど仮に土地が瞬速を持っていたとしたらどうだろう。
もう一度確認すると瞬速は「あなたはこのカードを、あなたがインスタントを唱えられるときならいつでもプレイしてよい。」だ。
プレイには呪文を唱えることと土地を戦場に出すことの両方の意味があるんだ。
つまり瞬速は土地のプレイに関してもインスタントと同じタイミングでプレイしてもよいといっているね。

ただし土地には以下のルールがある。

305.3 プレイヤーは、いかなる理由があれ、自分のターン以外には土地をプレイすることはできない。プレイヤーにそうさせるように指示する部分は無視する。同様に、そのターンに許可されている全ての土地のプレイを済ませているプレイヤーは、土地をプレイすることはできない。プレイヤーにそうさせるように指示している部分は無視する。

つまり瞬速を持つ土地は自分のターンであればいつでもプレイできるけど、対戦相手のターンにプレイすることはできないんだ。
他にも1ターンに1枚しか出せないことやスタックを用いないことなどの土地に関するルールもそのままだから注意しよう。


3つ目が「瞬速を持つ」ことと「瞬速を持つかのように唱えられる」の違いだ。

まずは以下の2枚について見てほしいんだ。

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どちらもテフェリーをカード化したもの


注目してほしいのは《ザルファーの魔道士、テフェリー》の「あなたがオーナーである、戦場に出ていないクリーチャー・カードは瞬速を持つ。」という能力*4と《時を解す者、テフェリー》の「[+1]:あなたの次のターンまで、あなたはソーサリー呪文をそれが瞬速を持っているかのように唱えてもよい。」という能力だ。
この2つはどっちも瞬速に関する効果だけど何が違うかわかるかな?


答えは前者は特定のカードに対して実際に瞬速を与えているけど、後者は特定のカードに瞬速と同じタイミングで唱えることを許可するという違いだ。

簡単にいうと《ザルファーの魔道士、テフェリー》がいる限り君がオーナーであるクリーチャー・カードは瞬速を持つけど、《時を解す者、テフェリー》の[+1]能力を起動しても君が唱えるソーサリー・呪文は瞬速を持っていないんだ。
この違いは1つ目に説明した際に出てきた《狡賢い夜眷者》のように瞬速を参照する能力に影響を与えるね。

実は他のカードに「瞬速を持つかのように唱えられる」能力を与えるカードはたくさんあるんだけど、実際に瞬速を与えるカードはこの《ザルファーの魔道士、テフェリー》だけなんだ。

なぜほとんどのカードが瞬速を与えずに「持つかのように」なんて回りくどい方法をとっているんだろう。
明確な理由を見つけることができなかったからここからは僕の推察だ。

まず、定義から瞬速はあらゆる領域で有効になる。
ということはもし実際に特定のカード群に瞬速を与えようと思った場合、あらゆる領域から条件に合うカードを探してそれらのカードテキストに瞬速を追加するという処理が働くことになる。
このことはテーブルトップではあまり問題にならないかもしれないけど、MOやアリーナのようなデジタルの場では処理が煩雑になることが予想できるね。
しかも、この処理は瞬速を与えているカードの効果が切れた際にも同様のチェックをしてそのカードで与えていた瞬速を失わせる必要もある。
一方で「瞬速を持つかのように唱えられる」の場合はそのような煩雑な処理をせずに唱え始める段階でそのカードが適正に唱えられるかチェックする時に一緒に確認するだけで済むね。

両者の差は瞬速を参照するカードに引っかかるかどうかだけど、そもそも参照するカード自体が少ないからそのような相互作用を失ってもプレイヤーはあまり"損した"と思わないんじゃないかな。
ならばより処理が簡略になる「瞬速を持つかのように唱えられる」を採用しようと思うのが開発する側の気持ちだと思う。

そういった理由で実際に「瞬速を持つかのように唱えられる」を採用しているんだと僕は思う。
では、何故《ザルファーの魔道士、テフェリー》は瞬速を与えるのだろう。
それは瞬速の歴史に答えがあると思っているから見てみよう。



瞬速が初めてキーワード化されたのは時のらせんだ。
ただしそれ以前からインスタント以外をインスタントタイミングで唱えてもよいといったテキストを持つカードは存在した。

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マジック最古の瞬速クリーチャー


ただし瞬速はこのテキストをキーワード化しようと生まれたものではなかったんだ。

当時マジックの主席デザイナーマローことマーク・ローズウォーターはこんな大胆なことを考えていた。
「インスタントをカードタイプから特殊タイプ*5にしよう!」
今の僕らが聞くとすごいことを言っている気がするけど、これには彼なりのしっかりとした理由があるんだ。

まず、マジックのカードは大きく2つにわけることができる。
それは「戦場に出てゲームに影響し続けるカード」「使いきりで一度使ったら墓地に行くカード」だ。
そのうち前者のカード群にはパーマネントという総称が与えられているね。
一方で後者にはそのようなものはなくテキスト上では「ソーサリーかインスタントであるカード」といった書き方がされているんだ。
これは少しばかりスッキリしない書き方だね。
ここでインスタントを特殊タイプにするとどうなるだろう。

瞬速熊 (1)(緑)
クリーチャー ― 熊
あなたは瞬速熊を、あなたがインスタントをプレイできるときならいつでもプレイしてよい。
2/2

例えば上のようなカードはこう表せる。

瞬速熊 (1)(緑)
インスタント・クリーチャー ― 熊
2/2

インスタントの特殊タイプを持つカードはインスタントタイミングで唱えることができる。
このように定義してやればテキストがスッキリして分かりやすくすることができるね。
そしてこれまでインスタントだったカードはインスタント・ソーサリーとして扱うわけだ。
そうするとパーマネントでないカード群はソーサリーの一単語で表せるね。

だけどこの計画は失敗に終わることになる。
マローが他の開発陣を説得していったけどうまくいかなかったんだ。
なぜこの案が通らなかったのか、それは一言でいうと「時間が経ちすぎた」だ。

カードタイプの廃止自体は過去にもインタラプトやマナ・ソースの例があった。

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現在はどちらもインスタントに吸収された


だけど時のらせんが発売された2006年の時点でマジックは13年の歴史を積み上げられていたんだ。
この長い歴史の中で数えきれないほどのカードが作られ、彼の提案はそれらに多大な影響を与えるため今更変更できることではないと判断されたわけだね。


その代替案として生み出されたのが瞬速というキーワード能力というわけだ。
非パーマネントカードの総称の問題は残っているけど、テキストをわかりやすくするという目的は果たせたわけだ。


瞬速の導入で過去の「あなたがインスタントをプレイできるときならいつでもプレイしてよい」カードはエラッタが入り瞬速を持つようになった。
一方で他のカードに「あなたがインスタントをプレイできるときならいつでもプレイしてよい」効果を与えるカードは「瞬速を持つかのように唱えられる」効果にエラッタされたんだ。
ここで瞬速を与えなかったのは瞬速を参照するカードとの相互作用が変化してしまうからだと思う。
ただし、《ザルファーの魔道士、テフェリー》は時のらせんに収録された新カードだ。
だから過去のカードのような相互作用の変化を気にする必要がなく、素直に瞬速を与える方法をとったんじゃないかな。
だけど、先述した通りデジタルでの処理が大変だったからその後の類似カードでは継承されず、「瞬速を持つかのように唱えられる」方法が採用されたのがこのカードだけが浮いているように見える理由だと僕は考える。


さて、瞬速の歴史はわかったから次は名前についてだ。
まず英語名のFlashについて。

これは開発中はSurpriseと呼ばれていたみたいだ。
Surpriseという単語には驚かすという意味があるから確かにあっているように感じるけど、開発陣はあまり気に入っていなかったみたいなんだ。
それはこの能力に「素早い」という意味合いを持たせたかったからだ。
それはインスタントタイミングでのプレイに《キング・チータ》のような素早く襲い掛かるというフレーバーがあったからかもしれない。
そうしていくつかの候補となる単語から選ばれたのがFlashだったんだ。
Flashには閃光や一瞬といった意味があって非常に短い時間というイメージがあった。
そして既に存在している《閃光/Flash》というカードは瞬速とは違うもののインスタントタイミングでクリーチャーを出すというような類似点があった。

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瞬速の名前の元になったカード


まさにぴったりのように感じるね。
だけどここからももう1つだけ障害があった。
ここでは紹介しないけどFlashという単語を含む別のキーワード能力が既に存在するんだ。
しかもそのキーワード能力は同じセットに収録されていたんだ。
つまり名前が似ているのに機能は全く違うキーワードを作るかどうかが懸念されたわけだ。
最終的にはFlash以上にふさわしい名前を見つけることができずこの問題は許容されることになったわけなんだけど、名づけというのは難しいなと感じるね。

一方日本語訳では閃光ではイメージしにくいからか瞬速という訳になったらしい。
ちなみに瞬速は一般的な単語ではなくこの訳のための造語だけど、瞬く間ほどの速さで唱えられるという元の開発陣の意図を上手くくみ取りつつ効果を適切にイメージできる名訳だと僕は思うよ。


次は瞬速のカラー・パイについて見てみよう。
まず前提として瞬速は5色すべてで使うことが許されている能力なんだ。
これは瞬速がどちらかといえばフレーバーより機能を表した能力だからだと言えるね。
その中でもは第1色に位置付けられていてこれは後出しでの対処が得意という色の性質とインスタント以外の打消しのような瞬速を持っていないとそもそも機能しない能力を青が持っていることが理由となっているんだ。
次いで第2色にはが割り当てられている。
これの理由は対抗色である青への対抗姿勢や茂みから急に襲い掛かってくる獣を表現するためじゃないかな。
残りのについては長らく第3色として扱われてきたんだけど、2018年ごろからが、そして大好評発売中のカルドハイムからが第2色に格上げされたことがWotCから発表されたんだ。




White gets Flash Now!? Here's What's Next for White! | Good Morning Magic | Kaldheim


それぞれ格上げされた理由はこうだ。

まず前提として青と黒が共に得意とするキーワード能力がないという問題があるんだ。
何故それが問題になるかというとリミテッド環境を調整したりその組み合わせの多色カードを作ったりする際に制約となるからだ。
それまで様々な形で試行錯誤はされていたんだけどあまりうまくいくことはなかった。
そんな中白羽の矢が立ったのが瞬速といわけだ。
青はもともと瞬速が得意な色だ。
ところで黒には例えば暗殺者のように突如現れて襲い掛かってくる脅威がいるよね。
これは瞬速が持つフレーバーと相性がいい。
そういうわけで黒の中で瞬速の立ち位置を向上させ、青黒の共通点を増やす目的で第2色へと格上げされたんだ。

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闇から突如現れる脅威


白の理由は統率者戦に向けてのものだ。
統率者戦は伝説のクリーチャーを1体選び、そのクリーチャーが持つ色のカード99枚で構成されたデッキで戦う多人数向けの人気フォーマットだ。
ところでWotCはマジックのゲームの中で色ごとの役割や強弱が同じくらいになるよう調整しているわけだけど、統率者戦ではこの調整が行き届いていないという不満が寄せられていたんだ。
特に白は最弱の色扱いを受けてしまっている。
その理由は統率者戦が多人数戦かつライフが40点スタートであることから、白の得意とするウィニー戦略がうまく働かず、逆にドローやインスタントタイミングでの干渉力の弱さが目立ってしまい、勝ち切ることが難しくなっているからだ。
そのうちのインスタントタイミングの干渉力にメスを入れるために瞬速を用いようというわけなんだ。
もともと白には瞬速を持つ天使クリーチャー*6が自軍を守るために現れるカードがいくつかあったことや、Flashの持つ光のイメージが白と相性が良かったのも選ばれた理由かもしれない。

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窮地に駆け付け自軍に救済を与える存在


その結果、現在の瞬速第2色はの3色が並んでいる状況だ。
この変更がこの後も継続していくのかは今後の芯セットを見ていくしかない。
このようにカラー・パイは日々絶えず変化するものだということを覚えておこう。


カード紹介に移る前に1つだけ、瞬速の特徴として「テキスト上では他のキーワード能力と区別されて書かれ、概ねその位置は文章欄の先頭である」というのがあることを紹介しておこう。
いったいどういうことなんだろう?
それは以下のカードを見比べると一目瞭然だ。


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《竜の眼の歩哨》は防衛と先制攻撃を持つクリーチャーだ。
注目してほしいのはテキスト欄で、防衛と先制攻撃が一行で書かれているよね?
このようにいくつかのキーワード能力を持つカードはテキスト欄を有効に使うために連続で書かれることがあるんだ。

一方で《ベナリアの騎士》はどうだろう。
瞬速と先制攻撃が別々の行に書かれているね。
また、確かに瞬速の方が1行目に書かれているね。

何故テキスト欄を圧迫してまでこうしているのか、それはプレイアビリティの向上のためだ。
もしこれが他のキーワード能力の列挙の中に書かれていたとしたら、プレイヤーはぱっと見それがインスタントタイミングで唱えられるカードであるかわからず、最悪の場合見落としてしまう可能性があるだろう。
これが原因で適切なプレイができずゲームに負けてしまったら悔やむに悔やみきれないよね。
そういったことを避けるために瞬速は行を占有してでも独立して書かれているんだ。

また、瞬速は唱える時には重要だけど、ひとたび解決されてしまえば何もしない能力だ。
戦場に出ているカードに対してそれが何をするかテキストを確認したいときとかは瞬速という単語は確認の邪魔になってしまう。
でも、他のテキストから隔離されていればその部分は読み飛ばして残りのテキストに集中できるよね。
そういった点を考慮してか文章欄に書かれる能力の順番というものが概ね決まっていて、唱えることに関する能力である瞬速は文章欄の先頭の方に書かれることになっているんだ。

僕らが普段煩わしさを感じずゲームができているのはこういった細かい規則によるものがあるんだね。


さて、話は戻っていつものカード紹介だ。

まずは久々にスリヴァーに登場してもらおう。

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激浪計画の指揮者は、スリヴァー研究の迅速な成果を求め、その願いを叶えられた。


《活性スリヴァー》は例のごとく自他問わずすべてのスリヴァーに瞬速を与えるタイプのスリヴァーだ。
ただし既に確認したように実際に瞬速を与えているわけではなく、瞬速を持っているかのように唱えることを許可する形でだ。

フレーバーテキストにある激浪計画は人間とタコやイカのような見た目のセファリッドと呼ばれる種族の間で行われた共同魔術研究機関の名前だ。
彼らは偶然見つけたスリヴァーの残骸を復元、増殖させることとそれらを突然変異させる研究に熱狂し、ついにそれに成功するわけなんだけど、スリヴァーたちの増殖スピードを制御できず、最終的にスリヴァーたちは研究所を逃げ出し暴れまわることになるんだ。
《活性スリヴァー》はその暴走直前の様子を描いているわけだ。
そう考えるとイラストも永い眠りから覚め、他のスリヴァーたちに合図を送っているようにも見えるね。
《活性スリヴァー》という訳もフレーバーをより濃く表していると思うよ。

ちなみに英語名である《Quick Sliver》は水銀の英語"Quicksilver"とのシャレ。
SliverがSilver(銀)と似ているということでよく間違えられていたことに由来するらしい。
だけどそのせいでこのカードはデザイン上「失敗」と言われてしまったんだ。
それには《活性スリヴァー》が収録されたレギオンにいるこのカードが関係している。

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例のごとく"速攻"はまた今度


このカード、日本語名だと何の問題もないんだけど、英語名では《Clickslither》(=クリックスリザー)といい、《Quick Sliver》(=クイックスリヴァー)に非常に発音が似ているんだ。
……耳で聞くだけだと聞き間違えてしまいそうだ。
これが全然違うセットに収録されていたら小ネタの1つくらいで済むだろうけど同じセットに入っているということはドラフトやスタンダードでどっちも見かける可能性がありプレイアビリティ上の問題があるね。
この教訓からWotCはカード名のつけ方に注意を払うようになったらしい。
もう何度目かわからないけどやっぱり命名は難しいね。


次に紹介するカードはこの2枚だ。

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条件を達成することで自分自身が瞬速を持つカードたち


瞬速を与えるカードが《ザルファーの魔道士、テフェリー》だけだという話は既にしたけど、実は自分自身に瞬速を与えるカードは2枚だけあるんだ。
それが《粉砕する潮流》と《相互破壊》だ。

《粉砕する潮流》はマーフォークをコントロールしている限り瞬速を持つキャントリップ付き*7のバウンスだ。
もともとはマーフォークをコントロールしているとキャントリップできる呪文だったけど弱すぎたために今の形になったらしい。

《相互破壊》は瞬速を持つパーマネントをコントロールしていると瞬速を得られる《骨の粉砕》の上位互換だ。

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自分のクリーチャーをコストに相手のクリーチャーを破壊する


なぜこの2枚は瞬速を得る形で書かれているんだろう?
もしかしたら仮説は間違っていたのかな?

いや、これにはおそらく次のルールから瞬速を与える形でも問題ないと判断されたんだと思う。
それは「インスタントやソーサリーに書かれているテキストはスタック上でしか働かない」というものだ。
より正確にルールを書き出すと以下のようになる。

113.6 インスタントまたはソーサリー・呪文の能力は、通常、そのオブジェクトがスタックにある間にのみ機能する。他のオブジェクトの能力は、通常、そのオブジェクトが戦場にある間にのみ機能する。例外は以下の通り。
(中略)

  • 113.6d オブジェクトの、その特定のオブジェクトをプレイするあるいは唱えることに制限や修整をもたらす能力は、プレイできるあるいは唱えられる領域にある間とスタックにある間に機能する。その特定のオブジェクト自身にそれをプレイするあるいは唱えることに制限や修整をもたらす他の能力を与えるそのオブジェクトの能力は、スタックにある間にのみ機能する。

要は唱え始めようとスタックに移った段階で瞬速を持つかどうか条件をチェックするわけだ。
ここでチェックOKの場合は晴れて瞬速を持つことが許されコストの支払いへと進むことができ、NGだった場合は(それがソーサリータイミングでなければ)その行動は差し戻されるという流れになるんだ。
つまり、《粉砕する潮流》も《相互破壊》も唱えている間以外は瞬速を持つことは一切ないから前述したような問題が起きないんだ。
だからより直感的なテキストにしようとしたんじゃないかな。

特に《相互破壊》が収録されたイコリアではキーワード能力を付与するカウンターやキーワード能力を参照するカードが多数収録されたセットだ。
瞬速も例にもれずすでに登場している《狡賢い夜眷者》の他にも《滑りかすれ》といった瞬速を参照するカードが登場している。

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瞬速を持つカードを唱えると1ドローと(なぜか)対戦相手を1点ルーズさせることができるクリーチャー


こういったカードがある中では瞬速か「瞬速を持つかのように」かは大きな違いになるね。
そういった点も実際に瞬速を与える形にした理由なんじゃないかな。

余談だけど《相互破壊》を唱える時に追加コストとして瞬速を持つクリーチャーを生け贄に捧げた結果、瞬速を持つパーマネントをコントロールしている状態じゃなくなった場合を考えてみよう。
この場合、瞬速を持つかのチェック時はまだコストを支払っていないから、実際に瞬速が与えられ、適正に唱えられると判断される。
だけどコストを支払った結果、瞬速を持つことができる条件から外れ、瞬速を持たない状態に戻ってしまう。
だけど適正に唱えられるかどうかのチェックは既に終えているから差し戻されることはなく通常通り解決される。
つまり、「解決自体はするけど瞬速を持つ呪文を唱えることで誘発する能力は誘発しない」というのが答えとなるんだ。


閑話休題
この変更は今後も続くんだろうか。
そもそも「ソーサリーだが条件を達成することでインスタントタイミングで唱えられるようになるカード」そのものがそう多いものでもないんだ。
そのようなカードはイクサランの《粉砕する潮流》の前はマジック・オリジンの《迅速な報い》でさらに前となるとインベイジョンのサイクルまで遡る必要がある。

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魔巧は「墓地にインスタントやソーサリーが2枚以上あったら~」を表す能力語
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追加で2マナ支払えばインスタントタイミングで唱えられるサイクル


今後瞬速を持たせる形が定着するのかはたまた元の書式に戻るのか注目だね。


最後にテストカードから2枚紹介しよう。

まず1つ目が《Animate Spell》だ。

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《動く○○》シリーズのスペル版

これはスタック上にあるインスタントかソーサリーをクリーチャーにするオーラだ。
これがエンチャントされたインスタントかソーサリーは本来出るはずのない戦場に自身のマナ総量*8に等しいパワーとタフネスを持つクリーチャーとして出すことになるんだ。
そしてこれが外れると戦場に出ていたそのカードは元の呪文に戻り、戦場から唱えられることになる。
つまりこのオーラがついている限り使いきりだった呪文に実態を与えようというのがこのカードのコンセプトだ。

なぜこれが瞬速を持っているか、理由は簡単だね。
そもそもスタック上のソーサリー・呪文やインスタント・呪文を対象にエンチャントしようと思ったら、そのオーラもインスタントタイミングで唱えられないといけないね。
瞬速が機能上持っていないとカードがやろうとしていることを実現できないから持たされているいい例だ。

ちなみにこのカードは実は黒枠でカード化されているんだ。
それが《生ける伝承》というカードだ。

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墓地にあるインスタントかソーサリーを実体化させるカード


いろいろ見た目は違うけどやりたいことのコンセプトは同じなのがわかるね。
これは銀枠セット用に作られていた《Animate Spell》のアイディアを黒枠で実現できるように調整されたものなんだ。
このようにボツとなったカードが別のカードとして実現することはよくあることなんだね。

もう1つは《Visitor from Planet Q》だ。

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名前は《Q惑星からの訪問者》といった感じか


これは厳密には瞬速を持つカードではないけど、瞬速の歴史と深いかかわりあいのあるカードだと言える。
テキストにはこれが戦場にある限り、全ての瞬速を持つカードは本来のカードタイプに加えインスタントとしても扱うとあるね。
つまり、マローがやりたかったことを実際にやってしまおうというのがこのカードが持つコンセプトだ。

余談だけどこのカードが持つ"Alien"というサブタイプは黒枠の世界には存在しないからこれがクリーチャータイプなのか呪文タイプなのかわからないんだ。
普通に考えればエイリアンだしクリーチャータイプだろうけど、追加するインスタントはあくまでカードタイプであり特殊タイプでないから呪文タイプの可能性も残っていてテストカードならではの謎があるカードだと言えるね。



さて、今回は瞬速について色々見てきた。
この記事が面白いと思っていただけたのなら幸いだ。

次回はおそらくキーワード能力の中で一番有名なあの能力がついに登場する。
その日まで、あなたの速さが足りていますように。

*1:土地は唱えられない

*2:優先権については割愛

*3:後から持たせることはできるんだけどわかるかな?答えはこの記事のどこかにあるから探して見てほしい

*4:この能力で《ドライアドの東屋》が瞬速を持つ土地になる

*5:「基本」や「伝説の」のようなカードタイプの前に書かれる特殊なタイプ

*6:"飛行"については割愛

*7:本来の効果のおまけとして「カードを1枚引く」がついているカードの総称

*8:ストリクスヘイヴン以前では点数で見たマナ・コストと呼ばれていたもの。

キーワード能力雑記:【第6回目】~その手に持つのは~

キーワード能力雑記へようこそ!

この記事では毎回1つのキーワード能力に焦点を当てて色々深堀していこうと思う。
第6回となるキーワード能力は『装備/Equip』だ。

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クリーチャーを強化する武器・防具


装備も前回のエンチャントがオーラに紐づいていたのと同様、あるカードタイプとセットになっている能力だ。
とりあえず、その定義を確認してみよう。

702.6 装備/Equip

  • 702.6a 装備は装備品・カードの起動型能力である。「装備 [コスト]/Equip [cost]」は、「[コスト]:あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とし、このパーマネントをそれにつける。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。」を意味する。
  • 702.6c 「[性質]クリーチャーに装備/Equip [quality] creature」は、装備 能力の変種である。「[性質]クリーチャーに装備 [コスト]/Equip [quality] [cost]」は、「[コスト]: あなたがコントロールしている[性質]クリーチャー1体を対象とし、このパーマネントをそれにつける。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。」を意味する。この能力は、装備品をつける先を制限するものではない。
  • 702.6d 「[性質]クリーチャーに装備」能力は装備 能力であり、「[性質]クリーチャーに装備」コストは装備 コストである。オブジェクトの装備 能力をプレイヤーが起動することに影響する効果は、そのオブジェクトの「[性質]クリーチャーに装備」能力にも影響する。装備 コストを増減させる効果は、「[性質]クリーチャーに装備」コストも増減させる。
  • 702.6e 単一のパーマネントに複数の装備 能力がある場合、そのいずれの装備 能力も起動できる。


まず装備の正体について見てみよう。

702.6a 装備は装備品・カードの起動型能力である。「装備 [コスト]/Equip [cost]」は、「[コスト]:あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とし、このパーマネントをそれにつける。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。」を意味する。

702.6b 装備品に関する更なる解説は、rule 301〔アーティファクト〕を参照。


装備は装備品・カードが持つ起動型能力だということが示されているね。
そしてそれはソーサリータイミングにコストを払うことで、自分がコントロールするクリーチャー1体にその装備品・カードをつけられることを意味しているんだ。
「つける」という単語はオーラでも出てきたね。
どうやらこの装備品というカードはオーラに似た性質を持つカードのようだ。
じゃあ具体的なルールはというと702.6bにあるように別の章にあるからそちらを確認してみよう。

301.5 アーティファクトの中には、「装備品/Equipment」というサブタイプを持つものがある。装備品はクリーチャーにつけることができる。クリーチャーでないものに適正につけることはできない。

  • 301.5a 装備品がつけられているクリーチャーは、「装備しているクリーチャー/equipped creature」と呼ばれる。装備品は、クリーチャーにつけられる、あるいは「装備される/equip」ことになる。
  • 301.5b 装備品は、他のアーティファクトと同様に唱えられ、戦場に出る。装備品がクリーチャーにつけられた状態で戦場に出ることはない。キーワード能力「装備/equip」は、その装備品をあなたがコントロールしているクリーチャーにつける(rule 702.6〔装備〕参照)。クリーチャーのコントロールに関する条件は、装備 能力の起動時と解決時にのみ確認する。呪文や他の能力によって装備品がクリーチャーにつけられることがある。効果によって装備品をそれを装備することができないオブジェクトにつけようとした場合、その装備品は動かない。
  • 301.5c クリーチャーは、クリーチャーでもある装備品を装備できない。クリーチャーは、「装備品」というサブタイプを失った装備品を装備できない。装備品は自分自身を装備できない。不正あるいは存在しないパーマネントに装備されている装備品は、そのパーマネントからはずれるが、戦場に残ったままである(これは状況起因処理である。rule 704 参照)。装備品は同時に複数のクリーチャーにつくことはない。呪文や能力によって複数のクリーチャーに装備させるようなことが起こった場合、その装備品のコントローラーはどちらのクリーチャーにつけるかを選ぶ。
  • 301.5d 装備品のコントローラーは、装備しているクリーチャーのコントローラーとは別物である。この2つは同じである必要はない。クリーチャーのコントローラーが変わっても装備品のコントローラーは変わらないし、逆も同様である。装備品のコントローラーのみが、それの能力を起動できる。ただし、装備品がそれを装備しているクリーチャーに能力を(「得る/gains」あるいは「持つ/has」等によって)得させる場合、装備しているクリーチャーのコントローラーのみが、その能力を起動できる。
  • 301.5e パーマネントの、「装備しているクリーチャー/equipped creature」を参照している能力は、そのパーマネントが装備品でなくても、そのパーマネントがついているクリーチャーを参照する。


いろいろ書いてあるけど、実は装備品とオーラは近い性質を持っているんだ。
ここでは両者の相違点・類似点をまとめてみたから確認してみよう。

装備品 オーラ
つけられる対象 クリーチャー エンチャント能力で定義されたカード
つける方法 自分がコントロールするクリーチャーを対象に装備コストを支払う 唱えた時に対象にとる or (唱えていないなら)戦場に出た時に選ぶ
戦場に出るとき 他のパーマネント同様単独で出る つけられる対象についた状態で出る
はずれたとき 戦場に残る 状況起因処理で墓地に置かれる
ついている対象が存在しなくなっていた はずれる はずれる
ついている対象がつけられる条件を満たさなくなった はずれる はずれる
自分自身のサブタイプを失った はずれる・つけられない はずれる(戦場には残る)
自分自身がクリーチャーになった はずれる・つけられない はずれる
単独で戦場にいられる? Yes No
自分自身につけられる? No No
複数の対象につけられる? No No

こうしてみてみると、装備品はクリーチャー限定の使いまわしがきくオーラのような性質をしていることがわかるね。
そしてその使いまわすためのコストを決めるのが装備というわけだ。

さて、装備と装備品の関係がわかったところで次に進もう。

702.6c 「[性質]クリーチャーに装備/Equip [quality] creature」は、装備 能力の変種である。「[性質]クリーチャーに装備 [コスト]/Equip [quality] [cost]」は、「[コスト]: あなたがコントロールしている[性質]クリーチャー1体を対象とし、このパーマネントをそれにつける。この能力は、あなたがソーサリーを唱えられるときにのみ起動できる。」を意味する。この能力は、装備品をつける先を制限するものではない。


ここでは装備の変種について取り扱っているんだ。
この「[性質]クリーチャーに装備/Equip [quality] creature」というやつは基本的に装備と全く同じ挙動をするんだ。
この変種は[性質]にあたるクリーチャーには通常の装備コストとは違うコストで装備させたい場合に使われるんだ。
どういうことか具体例を見てみよう。

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《再鍛の黒き剣》は2マナの装備品で、装備クリーチャーに自分がコントロールする土地の数だけ+1/+1修整を与える強力な装備品だ。
ただ実際にクリーチャーに装備させるには7マナも払う必要があり使いづらいよね?
そこで「[性質]クリーチャーに装備/Equip [quality] creature」だ。
今回の場合[性質]は「伝説の」が当てはまるね。
もし、装備しようとしているクリーチャーが伝説のクリーチャーだったらこの「伝説のクリーチャーに装備」の方を起動することでたった3マナで装備することができるんだ。

この例から[性質]を持つクリーチャーはこの装備品を他のクリーチャーよりもうまく扱えるというフレーバーを表しつつ、同時にその[性質]のクリーチャーを引かなかったときに完全に置物と化してしまうことを通常の装備コストで回避することができる実用性を備えているといえるね。
過去に実在した似たようなコンセプトのカードと比べてみるとそのメリットが一目瞭然だと思う。

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伝説のクリーチャーにしか装備できないから使いづらさが目立ってしまっている


《今田の旗印》と違って装備先を制限するものでないというのもポイントだね。


流れで残りの定義もみていこう。

702.6d 「[性質]クリーチャーに装備」能力は装備 能力であり、「[性質]クリーチャーに装備」コストは装備 コストである。オブジェクトの装備 能力をプレイヤーが起動することに影響する効果は、そのオブジェクトの「[性質]クリーチャーに装備」能力にも影響する。装備 コストを増減させる効果は、「[性質]クリーチャーに装備」コストも増減させる。


「[性質]クリーチャーに装備」も装備能力である以上、装備に関わる効果を同等に受けることをここでは示しているんだね。

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装備に関わることは全部適用される

702.6e 単一のパーマネントに複数の装備 能力がある場合、そのいずれの装備 能力も起動できる。

こっちに関しては《再鍛の黒き剣》の例で見たときに分かったと思うけど、複数の装備能力を持っている場合、その中から好きな装備能力を起動してつけていいということだ。
これに関しては書いてある通りのままだからこれくらいにしておこう。


一方で定義されていないことについて確認してみると、まず装備はあくまでつけることしか定義していないということがあるね。
すでに装備されている装備品を別のクリーチャーに装備し直すことはできても、単に装備を「はずす」ことはできないんだ。

一方で装備を「はずす」ことで効果を発揮するようなカードもいくつかあるんだ。

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「はずす」ことで効果を発揮する装備品たち


こういった装備品はそれを投げつけて攻撃したり状況を変化させたりといったフレーバーを持っていることが多いんだ。
こういった能力ははずれたら墓地に行ってしまうオーラでは表現しにくい効果だね。

また、他のクリーチャーにつけかえられることを生かして装備品とそれを装備したクリーチャーが一体となり、はずれたら死んでしまうといった表現にも「はずす」は使われたりするんだ。

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装備者と融合する装備品


さて、次は恒例の装備の歴史について見てみよう。

装備と装備品が登場したのはアーティファクトがテーマであるミラディンだ。
元々クリーチャーが武器や防具を持って武装するというイメージのカードはあったんだけど、それをより直接的にわかりやすく表現したわけだね。

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装備品の元になったタップされている限り対象のクリーチャーを強化し続けるアーティファクトたち


ただ装備品と装備が実際に印刷に至るまでには紆余曲折あったみたいだ*1

まず、WotCアーティファクトとエンチャントの差別化ということを非常に意識しているんだ。
なぜならアーティファクトでできることはエンチャントでもでき、その逆もしかりであるため、意識的にデザインしないと両者の区別があいまいになってしまうからだ。
両者を分け隔てている最も大きい理由、それが質量を持つ物体なのか魔法的な影響なのかという点だった。
そして同じことがオーラ(当時はまだ個別エンチャント)でもいえたんだ。
例えば《燃え立つ剣》というカードは魔法的な武器だからエンチャントでもいいけど、ロングソードそのものをカード化しようと思ったらエンチャントでは不適切でアーティファクトとして印刷されるべきだね。

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赤マナから作り上げられた炎の剣はマジックアイテムとしてエンチャントでOK


そういった考えから装備品は当初アーティファクト版オーラとして作られたみたいなんだ。
だけどある開発者がある疑問を投げかけた。
「装備品を装備しているクリーチャーが死んだとき、落ちたその装備品はどうなるんだい?」
この問いかけに他の開発者たちは初めは無視していたらしいんだけど、問いかけた開発者が必死に疑問を投げかけ続けたことで一人また一人とその疑問について考えるようになっていったんだ。
そして彼らは前回も紹介したあの奇怪な奴らに行き着いたんだ。

そう、リシドだ。
つまり、リシドのようにクリーチャーについているとき(オーラ状態)とついていないとき(クリーチャー状態)を切り替えられるという発想だ。
ただリシドは様々なルール的問題を抱えていてルールマネージャーが存在を否定したほどだ。
それにリシドとは違い装備品は常にアーティファクトであり続ける必要があるという制限もあった。
そこで生まれたのが装備品をクリーチャーにつけるためにコストを払うというアイディアだ。
それを用いると装備を「落とす」ことが可能になるだけではなく、カードバランスを調節するための2つのつまみ(カードそのもののマナコストと装備コスト)を得ることができ、カードデザインの幅が広がるといったメリットが生まれたんだ。

こうして装備品は他のアーティファクトと同様に単独で戦場に出、装備コストを払ってクリーチャーにつけるという今の形になったんだね。

ちなみにこの段階で僕らが親しんでいる今の装備になったわけではなく、この後もテストプレイによって多少の変化を遂げているんだ。

まず、原案では装備できるタイミングがインスタントタイミングだったんだ。
これがソーサリータイミングに移った理由は、テストプレイの結果装備品を普段は装備せずに、戦闘中にコンバット・トリックとして装備するような使われ方が支配的になってしまったからなんだ。
これはWotCが想定する使われ方と違ったことから装備できるタイミングに制限をかけたわけだね。

次に対戦相手に装備するようなカードのアイディアを破棄したことだ。
これは武器・防具を持って自軍クリーチャーを強化するという装備品のフレーバーとはかけ離れてしまうから*2という理由で破棄されたんだ。

そうして生まれた装備品と装備はたちまちプレイヤーたちに気に入られ、次のブロックである神河でも採用され、基本セット第9版に収録されたことから常盤木能力としての地位を築いたんだ。
ところが、装備品には1つ欠点があった。
それは簡単に強すぎるカードになってしまうという点だ。
アーティファクト版オーラとして作られた装備品はそのデザインの中で、ついているクリーチャーが除去されてしまうと1対2交換になってしまう点クリーチャーを先に戦場に出さないと手札で腐ってしまう点といったオーラの弱点を自然に解消していたんだ*3
その結果、環境を一変させるような強力な装備品が大量に作られることになったんだ。

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様々なフォーマットで暴れまわる凶悪カードの一部


装備品はデッキに入っているあらゆるクリーチャーを脅威へと変貌させてしまう。
そういった理由で近年の装備品は意図的に弱くデザインしているんだ*4


装備/Equipという名前に関してはそのままの意味だね。
一応補足しておくとカードタイプであるEquipment装備品、キーワード能力Equip装備と訳し分けられているのはEnchantmentEnchantの翻訳から学んでいると感じるね。


それと装備のカラー・パイもエンチャント能力同様機能上必要とされたものだから特に役割はないんだ。
装備品はアーティファクトである関係上、ほとんどが無色であるからなおさらだね。
ただ、最近では有色のアーティファクトが増えてきているため、そういった意味だと装備品が存在する色には多少の偏りがあるんだ。
具体的には多色も含めて一番多い順からと続き、一番少ないのがという形になっている。
アーティファクトと深いかかわりがある色だから一番少ないのは意外に思うかもしれないけど、そもそもは好戦的な色ではないことや装備品とのかかわりは兵士や戦士の持つ武器としてが担っている点を考えると妥当なのかもしれないね。
一方でそういった色の役割を抑えてに多いのは、アーティファクトシナジーを持つことやの暴力性を表しているからだと思う。
に関しては多色の中ではの装備品が多かったことでカウントを伸ばしていて、同様も攻撃的な側面を持っていることが原因だと考えられるね。
ただこの辺はまだ有色アーティファクトの装備品が少ないから今後カラー・パイ通りに是正される可能性はあるね*5


最後に装備に関わるカードを見てみよう。

まず初めは装備品にもかかわらず装備を持っていないカードだ。
どういうことと思うかもしれないけど、そのカードを見ればなぜ持っていないのかはわかるはずだ。
そういったカードが2種類存在するから順にみてみよう。

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「るつぼはあなたが思い描いたものを生み出します。あとは、あなたがこの中に手を伸ばして、傑作を引き出してあげるだけ。」 ――るつぼの守り手、ワハラ


まず1つ目は《創意工夫の傑作》だ。
これは戦場に出る際に他の装備品のコピーとして出るカードだ。
つまりこのカードの装備コストはそのコピーした装備品が持っている装備コストであるから、このカード自体は装備を持っている必要はないというわけだね。
一方でこれが戦場に出る際に、他の装備品がなかったりそもそもコピーすることを選ばなかったりした場合はこれはバニラ*6アーティファクトとして出ることになるんだ。
その時は装備のできない装備品というよくわからないものが出来上がるね(きっとるつぼからの引き上げに失敗したんだろう)。


2つ目が《血に飢えた刃》だ。

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その武器は持つ者の手を利用する。


これを装備したクリーチャーはパワーが上昇する代わりに使嗾されてしまうんだ。
この「使嗾する/Goad」とは、少し変わった攻撃強制を付与するキーワード処理だ。
詳しいことは触れないけど、要はあることないことを吹聴して自分以外にヘイトを向けさせる効果だと思ってもらえればいい。

その効果からこの《血に飢えた刃》は、対戦相手のクリーチャーにつけることを想定したカードだ。
ただ1つ思い出してもらいたのが、装備はあくまであなたがコントロールするクリーチャーにつける能力だということ。
つまり、装備だとこのカードがしたいことを表現できないんだ。
そこで、このカードは装備の代わりに対戦相手のクリーチャーにつけることができる起動型能力を持つことで表現したんだね。
このカードは性質上明らかに装備品だし、そのためにわざわざ新たなキーワード能力を制定するわけにもいかない*7からこのような形になったんだ。

ちなみについているクリーチャーは対戦相手のクリーチャーだけど、《血に飢えた刃》のコントローラーは自分だからこの能力を対戦相手は起動できないし、君は別の対戦相手のクリーチャーにつけかえることができるね。
それと《血に飢えた刃》をつけたクリーチャーのコントロールを君が奪った場合は《血に飢えた刃》が勝手に外れることはないんだ。
装備はそれをつける時の制限であってついた後のことには言及していないのと同じだね。


次に紹介するのは装備品・トークンを生み出すカードだ。
これも2種類あるから順番に見てみよう。

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《石術師、ナヒリ》は大好評発売中『ゼンディカーの夜明け』でも舞台となっているゼンディカー出身のプレインズウォーカーで古のコーだ。
これが彼女の初カード化であり、その能力は彼女のモチーフになった《石鍛冶の神秘家》同様装備品に精通した能力となっている。

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モチーフではあるがナヒリ本人ではない


そしてその奥義とも呼べる[-10]能力はなんと装備品そのものを作り上げてしまうとういうものだ。
そのスペックは装備コスト0で装備クリーチャーに+5/+5修正と二段攻撃を与えるというとんでもないものだね。
ひとたびこの装備品が出たなら今後すべてのクリーチャーがお手軽にゲームを決められるフィニッシャーにすることができるんだ!(そもそも奥義を起動するまでがお手軽じゃないとか言わない)

次のカードはそれ本当に装備品か?と疑いたくなる装備品を作り出すカードだ。

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装備品(岩)

《ゴブリンの武器職人、トッゴ》はドミナリアに住むゴブリンだ。
彼はオンスロートをはじめとして様々なカードのフレーバーテキストに登場するんだけど、そのほとんどが岩がいかに優れているか力説するものとなっているんだ。

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岩がいかに優れているかを語るトッゴ(かつてはトーゴと訳されていた)

そんな彼がついに統率者レジェンドにおいてカード化されたというわけだ。
もちろんカードの性能も岩に関することで、土地が戦場に出るたびにそこから岩を拾ってくるんだ。
その岩でできることは何だろうとみてみると、手に持って(装備)相手に投げつける(その岩を生け贄に捧げて好きな相手にダメージを与える)ことができるとあるね。

……うん。
岩そのものだ。

これを装備品といっていいのだろうかとも思うが、ここまで岩に精通している彼が選んだ岩だ。
きっと持ちやすく投げやすい岩を選び、誰が使っても同じ威力になるよう加工しているのかもしれない。


さて、装備について色々見てきたけどどうだったかな?

もしこれが面白いと思ってもらえたら幸いだ。

次回は器用さと素早さを兼ね備えたあのキーワード能力について見ていこう。
その日まで、あなたが多くの武具で身を固め、外敵からの脅威に対抗できますように。

*1:magic.wizards.com

*2:のちにそういったカードが出たけどそれはこの後紹介する。

*3:ちなみにこうした弱点の多さから「オーラ強化計画」と呼ばれる強力なオーラをデザインする計画があった。リシドもその1つ。

*4:mtg-jp.com もちろん例外はある。

*5:実際単色の装備品でカウントすると、赤、白、黒、緑、青の順になる。またこれを執筆現在、カルドハイムのプレビューが行われているけどそれはカウントしていない。

*6:何の能力も持っていないカードの総称。

*7:キーワード能力の意義は第0回を見てほしい。 teilving.hatenablog.com

キーワード能力雑記:【第5回目】~付与される力~

キーワード能力雑記へようこそ!

この記事では毎回1つのキーワード能力に焦点を当てて色々深堀していこうと思う。
第5回となるキーワード能力は『エンチャント/Enchant』だ。

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何かについて様々な効果を付与させる能力


えっ?それはカードタイプだろって?
いやいや、これはれっきとしたキーワード能力だ。
なぜならカードタイプとしてのエンチャントは英語ではEnchantment
今回紹介するEnchantとは別物だ。

ではキーワード能力としてのエンチャント(以下エンチャント能力)はどういうものなんだろう。
この能力はある種のカードと深くかかわりがある能力だから今回はそれも一緒に見てみよう。

702.5 エンチャント/Enchant

  • 702.5a エンチャントは、「エンチャント [オブジェクトまたはプレイヤー]/Enchant [object or player]」と書かれる常在型能力である。エンチャント能力は、オーラ・呪文が対象に取れるものと、オーラがエンチャントできるものを制限する。
  • 702.5b オーラに関しては、rule 303〔エンチャント〕を参照。
  • 702.5c オーラが複数のエンチャント能力を持っている場合、それらの全てが適用される。オーラの対象は、それら全ての限定に従わなければならない。オーラは全てのエンチャント能力に適合するオブジェクトまたはプレイヤーにしかエンチャントできない。
  • 702.5d プレイヤーをエンチャントできるオーラは、プレイヤーを対象にでき、プレイヤーにつけられる。その種のオーラはパーマネントを対象にせず、パーマネントにつけられることはない。


まず初めにエンチャント能力が何者なのか見てみよう。

702.5a エンチャントは、「エンチャント [オブジェクトまたはプレイヤー]/Enchant [object or player]」と書かれる常在型能力である。エンチャント能力は、オーラ・呪文が対象に取れるものと、オーラがエンチャントできるものを制限する。

702.5b オーラに関しては、rule 303〔エンチャント〕を参照。


まず、エンチャント能力はオブジェクトかプレイヤーを指定するんだ。
そして、その指定されたものはオーラと呼ばれるものを制限すると書いてあるね。
ここで出てくるオーラが今回紹介するエンチャントと切っても切り離せない存在なんだけど、ここでは説明されていない。
その代わりにrule 303で説明しているから確認してくれとルールには書いてあるね。
それじゃあ確認してみようか。

303. エンチャント
(中略)

  • 303.4 エンチャントの中には、サブタイプとして「オーラ/Aura」を持つものがある。オーラはオブジェクトまたはプレイヤーについた状態で戦場に出る。オーラをつけることができる先は、キーワード能力「エンチャント/Enchant」によって規定されている(rule 702.5〔エンチャント〕参照)。他の効果によって、あるパーマネントをエンチャントできるかどうかに限定が加えられる場合もある。
    • 303.4a オーラ・呪文は、エンチャント能力によって規定される対象を必要とする。
    • 303.4b オーラのつけられているオブジェクトやプレイヤーのことを、「エンチャントされている」という。そのオーラはそのオブジェクトやプレイヤーを「エンチャントしている」、あるいはそのオブジェクトやプレイヤーに「ついている」という言い方をする。
    • 303.4c オーラが、エンチャント能力やその他の効果による規定に対して不正なオブジェクトまたはプレイヤー上にエンチャントしていた、あるいはエンチャントされているオブジェクトやプレイヤーがすでに存在しなくなっていた場合、そのオーラはオーナーの墓地に置かれる(これは状況起因処理である。rule 704〔状況起因処理〕参照)。
    • 303.4d オーラはそれ自身をエンチャントすることができない。何らかの理由でそうなった場合、そのオーラはオーナーの墓地に置かれる。また、オーラがクリーチャーでもある場合、他のオブジェクトをエンチャントすることができない。何らかの理由でそうなった場合、そのオーラははずれ、そしてオーナーの墓地に置かれる。(これらは状況起因処理である。rule 704 参照)。 オーラは同時に複数のオブジェクトまたはプレイヤーにつくことはない。呪文や能力の効果によってオーラが複数のオブジェクトやプレイヤーにつくような場合、そのオーラのコントローラーはどちらのオブジェクトまたはプレイヤーにつけるかを選ぶ。
    • 303.4e オーラのコントローラーは、エンチャントされているオブジェクトのコントローラーあるいはエンチャントされているプレイヤーとは別物である。この2つは同じである必要はない。オーラがオブジェクトをエンチャントしている場合、そのオブジェクトのコントローラーが変わってもオーラのコントローラーは変わらないし、逆も同様である。オーラのコントローラーのみが、それの能力を起動できる。ただし、オーラがそれにエンチャントされているオブジェクトに能力を(「得る/gains」あるいは「持つ/has」等によって)得させる場合、エンチャントされているオブジェクトのコントローラーのみが、その能力を起動できる。
    • 303.4f オーラが、オーラ・呪文が解決される以外の方法でいずれかのプレイヤーのコントロール下で戦場に出、その出す効果がオーラのエンチャント先を指定していなかった場合、そのプレイヤーがそのオーラが戦場に出るに際してそのオーラのエンチャント先を選ぶ。そのプレイヤーは、オーラのエンチャント能力その他適用される効果に従い、適正なオブジェクトまたはプレイヤーを選ばなければならない。
    • 303.4g オーラが、適正にエンチャントできるオブジェクトやプレイヤーのない状態で戦場に出る場合、そのオーラが現在スタックにあるのでない限り、現在ある領域にとどまる。スタックにある場合、そのオーラは戦場に出る代わりに オーナーの墓地に置かれる。
    • 303.4h 効果によって、オーラでも装備品でも城砦でもないパーマネントをオブジェクトまたはプレイヤーにつけた状態で戦場に出す場合、つけられていない状態で戦場に出る。
    • 303.4i 効果によってオーラを適正につけられないオブジェクトやプレイヤーにつけた状態で戦場に出す場合、元あった領域がスタックでなければ、オーラは元あった領域に残る。スタックであれば、戦場に出る代わりに オーナーの墓地に置かれる。オーラがトークンであれば、それは生成されない。
    • 303.4j 効果によって戦場にあるオーラをオブジェクトやプレイヤーにつける場合、そのオブジェクトやプレイヤーが適正にエンチャントされることができなければ、オーラは移動しない。
    • 303.4k 効果によって表向きになるオーラがオブジェクトやプレイヤーにつけられた状態になる場合、そのオーラのコントローラーはそれが表向きで存在している場合のそのオーラの特性を用いて何につけることができるかを判断し、そのオーラの持つエンチャント能力やその他の適用されうる効果に従って適正なオブジェクトを選ばなければならない。
    • 303.4m パーマネントの「エンチャントしている[オブジェクトまたはプレイヤー]/enchanted [object or player]」を参照する能力は、そのパーマネントがオーラでなかったとしても、そのパーマネントがつけられているオブジェクトまたはプレイヤーを参照する。


一応オーラに関係する部分を全文書き出したけど、たくさんのルールがあって全部読むのは大変だよね。
興味のある人は読んでもらって構わないけど、この記事はキーワード能力が主役だから「オーラはエンチャントの1種であり、何かについている状態でしか戦場に出ることができない」「オーラが何かしらについているという関係を『エンチャントしている/されている』または単に『ついている』という」「エンチャントされているものがエンチャントで指定されたもの以外に変わった場合、そのオーラは墓地に置かれる」の3つを覚えてもらえれば十分だ。

つまりエンチャント能力は、オーラを唱えるために対象に取るべき存在や実際に戦場に出た時に何にエンチャントするべきなのかを紐づけてあげる能力だということがわかるね。



702.5c オーラが複数のエンチャント能力を持っている場合、それらの全てが適用される。オーラの対象は、それら全ての限定に従わなければならない。オーラは全てのエンチャント能力に適合するオブジェクトまたはプレイヤーにしかエンチャントできない。


ここで示しているのは1つのオーラが複数のエンチャント能力を持った時の挙動についてだ。
要約すると「持っているエンチャント能力が示すオブジェクトの制限をすべて満たしたものにしかエンチャントできない」ということだね。
例えばだけど、エンチャント(クリーチャー)とエンチャント(アーティファクト)をもつオーラがあったとしたら、それはアーティファクト・クリーチャーにしかつけることができないということを表しているんだ。
また、エンチャント(パーマネント)とエンチャント(クリーチャー)を持つ場合はより範囲の狭いエンチャント(クリーチャー)を持つことと同じだとわかるね。

ところで現状、追加でエンチャント能力を与えるようなカードは存在していないんだ*1
このルールは一見無意味に思うかもしれないけど、事前にルールの穴をふさいでおくことで将来的にそのようなカードが作られた時に対処できるようにしているんだね。

02.5d プレイヤーをエンチャントできるオーラは、プレイヤーを対象にでき、プレイヤーにつけられる。その種のオーラはパーマネントを対象にせず、パーマネントにつけられることはない。


エンチャント能力はオブジェクト以外にもプレイヤーを指定できるということが書いてあったね。
ここではプレイヤーにつくタイプのオーラについて言及しているんだ。


さて、次はエンチャント能力の歴史についてだけど、エンチャント能力の歴史はオーラの歴史とともにあるんだ。
マジックの黎明期からクリーチャーについてそのクリーチャーを強化するエンチャントは存在した。
ただし、今とは呼ばれ方が違ったんだ。

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第4版の《聖なる力》


現在とはタイプ行が違うことがわかるかな?
このころは現在のエンチャント能力が担っている仕事をタイプ行で行っていたんだ。
こういったエンチャントを『個別エンチャント/Local Enchantment』と呼んでいたんだ。(反対に何にもつかず場に残り続けるエンチャントは『全体エンチャント/Global Enchantment』と呼ばれていた)

これでも何の問題もなさそうだけど当時のルールマネージャーは気にくわない点が4つあると主張していたんだ。*2
順に確認していこう。

1つ目はタイプ行が仕事をしていないということだ。
これがどういうことかというと、クリーチャーにはクリーチャー、アーティファクトにはアーティファクトとタイプ行に書かれているから僕たちはそれがそうだと判断できるわけだね。
ただしエンチャントはそうもいかなかったんだ。
個別エンチャントには「エンチャント([何か])/Enchant [何か]」、全体エンチャントには「エンチャント(場)/Enchantment」と書かれていて統一されていなかったんだ。
例えば「Artifact Creature」と書かれていればそれはArtifactでありCreatureあることがわかるね。
だけど「Enchant Creature」はCreatureでないことはもちろんEnchantでもないんだ。
逆に書かれていないけどこれはEnchantmentとして扱っていたんだ。
これでは「Enchant Creature」が何なのかタイプ行見ただけではわからないよね。
しかもこのカードは当時のルールだと「Enchant Creature」というサブタイプを持っているという扱いだったんだね。
これは非常にわかりづらいよね。
オーラを導入することでこれが「Enchantment - Aura」と記載されることになるから、これがEnchantmentというグループのAuraという種類のカード群であることが明確になったんだ。


2つ目に個別エンチャントは、テキストに『対象』と書かれていない唯一の対象を取る呪文であるという問題があったらしいんだ。
これについては僕もよくわかっていないところが多いから調べたことを書こうと思う。
上記にある第4版の《聖なる力》を見てもらったら分かるようにテキストにはしっかりと「対象」と書かれているよね。
ところが第8版の《聖なる力》を見てみるとたしかに「対象」とは書かれなくなっているんだ。

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第8版の《聖なる力》


どうやらホームランドとアライアンスの間で個別エンチャントのテキストに「対象」と書かれなくなったらしい。

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左がホームランドの《一角獣の饗宴》、右がアライアンスの《Viscerid Armor》


個別エンチャントのテキストに関するルール変更がこの頃にあったんだろうことは予想できるけど、如何せん1995~96年の話だから詳しいことはよくわからなかった。
ただ少なくともオーラ導入前夜では個別エンチャントは対象を取る呪文でありながら「対象」と書かれていないカードになっていたんだ。
この問題はオーラを導入し、エンチャントできるものの定義をキーワード能力にすると解決されるんだ。

唐突だけどキーワード能力の後にかっこ書きでそのキーワード能力を詳しく説明している文章を見たことがある人も多いんじゃないかな。
そういった文章を注釈文といって基本セットや低いレアリティのカードのような初心者が目にする機会が多いカードにはあえて注釈文を添えることでその用語が何をするのかわかりやすくするという手法があるんだ。

オーラとエンチャント能力を導入することで必要な場面では注釈文を添えることができるようになったんだ。
そしてそこにはしっかりと「対象」と書くことができるようになったんだ。

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第9版の《聖なる力》


こうすることで初心者に対してエンチャント能力を持つカードは対象を取るということが明確になったね。
一方で注釈文はルール的には何の意味も持っていないんだ。
だからオーラを見ただけでそれが対象を取るカードだと理解できる既存プレイヤー向けのカードではわざわざ注釈文を用意しなくてもいいよね。
このように必要な場面に応じてテキストを使い分けられるようになった点もオーラ導入のメリットだ。


3つ目はタイプ行にルールが紛れているという問題だ。
防衛について紹介した時に壁というクリーチャー・タイプがルール上特別な意味を持っていたというのがあったね。
これと同じ問題を個別エンチャントは抱えていたんだ。
壁が持っていた「壁は攻撃できない」というルールが壁から切り離されて防衛となったように個別エンチャントが持っていた「エンチャントできるものを指定する」役割はエンチャントに移行することでタイプ行の整理が進んだんだ。


4つ目にそもそも「個別エンチャント」や「全体エンチャント」を参照するようなテキストのカードがほとんど存在しなかったということが挙げられているね。
つまり当時のユーザはそれが個別なのか全体なのか意識してプレイする必要が特になかったということがいえるね。
使われていない用語を廃止して今までとルール上ほとんど変わらない新たな用語に置き換えるだけならほとんど混乱は生まれないよね。


これらの理由を見てみるとルールとタイプが絡み合っていた使いづらくわかりづらい用語を廃止するために生み出されたのがオーラとエンチャント能力というわけだね。
マジックの歴史は何度もルール改定が行われてきたんだけどそれはより分かりやすくより簡潔にゲームを楽しめるようにというWotCの努力があったわけだ。

と、すべてうまくいったように書いてはいるがもちろんルールが変わったことで過去のカードが若干の強化・弱体を受けることになったんだ。
何故カードの挙動が変わってしまうのかはいったん置いといて実際にどう変わったのかを見てみよう。

まず強化されたカードが《篤信の魔除け》だ。

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このカードが持つモードの1つに「エンチャント(クリーチャー)1つを対象とし、それを破壊する。」とあるね。
これは現在「クリーチャーにつけられているオーラ1つを対象とし、それを破壊する。」というテキストに変更されているんだ。
この変更によってクリーチャーにつけられているエンチャント(パーマネント)を持っているオーラが破壊できるようになったんだ。

これと同じように《アカデミーの研究者》や《Bartel Runeaxe》、《真心のハープ奏者》など様々なカードが微妙にだけど強化を受けたんだ。

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若干の強化を受けた皆さん


一方残念ながら弱体化してしまったカードたちはこちら。

その1つが《脂火玉》だ。

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Tallowisp / 脂火玉 (1)(白)
クリーチャー — スピリット(Spirit)
あなたがスピリット(Spirit)か秘儀(Arcane)呪文を唱えるたび、あなたはあなたのライブラリーからエンチャント(クリーチャー)を持つオーラ(Aura)・カードを1枚探し、それを公開し、あなたの手札に加えてもよい。そうした場合、あなたのライブラリーを切り直す。
1/3


《脂火玉》はこのルール改定で自身の能力でサーチできるカードが「エンチャント(クリーチャー)を持つオーラ・カード」になったんだ。
それによってサーチできなくなってしまったカードが生まれたんだね。
それが《珊瑚の網》のようなカードだ。

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このカードは現在のルールだとこうなっている。

Coral Net / 珊瑚の網 (青)
エンチャント — オーラ(Aura)
エンチャント(緑か白のクリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーは「あなたのアップキープの開始時に、あなたがカードを1枚捨てないかぎり、このクリーチャーを生け贄に捧げる。」を持つ。


そう、元々のカードではエンチャント(クリーチャー)のサブタイプを持つエンチャントできるクリーチャーに条件があるカードであったのが、ルール改定でオーラのサブタイプを持つエンチャント(緑か白のクリーチャー)を持つカードになったんだ。
これは《脂火玉》がサーチできる「エンチャント(クリーチャー)を持つオーラ・カード」ではないよね。
だから《脂火玉》は《珊瑚の網》をサーチすることができなくなってしまったんだ。

他にも《ルートウォーターのシャーマン》も同じような理由でインスタントタイミングで唱えられるオーラの幅が狭くなってしまったんだ。

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このようにルール改定では必ず微妙にではあるけど既存カードのカードパワーの変化が伴ってしまうんだ。
それでもその変化を最小限に抑えながらより遊びやすいよう進歩していっているんだね。


さて、エンチャント能力が生まれた経緯、そしてそれによって起きた変化について見てきたね。
次はエンチャントが持つフレーバーについて確認してみよう。

まずエンチャント能力はオーラを制定する過程で生まれたことを確認したね。
つまり機能上必要だから作り出されたキーワード能力だと言えるね。
そしてオーラが色の理念とは関係なしに全色であるようにエンチャント能力も特定の色に依存した能力ではないんだ。
このようにキーワード能力は必ずしもカラーパイと関連付けられているというわけではなく、ゲーム上必要な処理を簡潔に表現するという役割もあるんだ。

次に名前だ。
英語版ではカードタイプの方はEnchantment、キーワード能力の方はEnchantと特に問題はないんだけど、日本語版ではカードタイプとキーワード能力でエンチャントという用語がかぶってしまっているという問題があるんだ。
そこで英語版のEnchantmentとEnchantの違いについて調べてみよう。
Enchantmentは「魔法にかけること、魅力」といった名詞で、Enchantは「魔法をかける、魅了する」といった動詞だ。
カードタイプの方はカードの分類だから名詞、キーワード能力の方はEnchant ○○で「○○に魔法をかける」といった文になるから動詞が使われているんだろう。

この問題は日本語版だけの問題なのかな?

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今回は《霊気トンネル》で検証してみた
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左上から英語版、スペイン語版、フランス語版、ドイツ語版、イタリア語版、ポルトガル語版、韓国語版、ロシア語版、簡体字版、繁体字


全部区別されてるじゃないか。
どうやらこの問題は日本語版だけのものらしい。
他の言語では英語版同様カードタイプは名詞、キーワード能力は動詞として訳しているみたいだ。
翻訳が同じになってしまった理由は全体エンチャント(Enchantment)をエンチャント(場)、個別エンチャント(Enchant ○○)をエンチャント(○○)と訳してきたときからの名残だろうと僕は思う。
明確に訳し分けるならばカードタイプの方を「エンチャントメント」、キーワード能力の方を「エンチャント」とするか簡体字/繁体字版みたいに二字熟語でキーワード能力を制定すればよかったかもしれない。
まあ英語版でもマーカーとしてのcounterと打消しのcounter、敗北のloseと失うのloseとか重複している用語がいくつかあるし、わざわざこんな記事を書かなければ困るようなこともないのかもしれない。


最後にエンチャント能力に関するカードについて紹介するね。


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まず呪いと呼ばれるカード群だ。
呪いはエンチャントのサブタイプの1つだけど、オーラと違って呪い自体が何か特別なルールを持つわけじゃないんだ。
呪いは全てエンチャント(プレイヤー)を持つオーラで、名前の通りつけられたプレイヤーに対して何らかの不利益がもたらされるデザインをしているんだ。

呪いが初登場したイニストラードはゴシックホラーの世界、再登場したアモンケットはエジプト風の世界でどちらも呪いや呪術のイメージにぴったりだね。
あと呪いは一応全色に存在しているんだけど、黒が一番多くて12枚、次いで赤の6枚、青の5枚、白の4枚と続いて緑に至っては2枚しか存在しないんだ。
禁忌とされる力でも使えるものは使う黒とその対抗色であり運命を捻じ曲げることを嫌う緑といったカラーパイがここで表現されていて、その点においてもフレーバーにあふれているね。

そういったフレーバーに富んでいる呪いはユーザから好評で、落葉樹*3カニズムとしてこれからも呪いが使える機会を増やそうと考えているらしい。
呪いファンにとっては朗報だね。

mtg-jp.com


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次に紹介するカード群も呪いと同じでエンチャントのサブタイプを持つカード群だ。
その名もカルトーシュ
カルトーシュはさっき呪いの紹介の時にも出たアモンケット次元だ。
この次元には神が存在していて、その神々が与える試練をクリアした称号としてもらえるのがこのカルト―シュなんだ。

ところでカルトーシュと当たり前に呼んでるけどこれっていったい何なんだろう?
調べてみると古代エジプトで王の名前を囲うための装飾を指すフランス語らしい。
要は装飾品の一種ということなんだろうけど、アモンケット次元では試練をクリアした勲章やミイラに対する命令装置を指してカルトーシュと呼んでいるみたいだね。
エジプトを舞台にしたアモンケットに登場するアイテムとして筋が通っているね。

さて、メカニズム的な話になるとカルトーシュは全てエンチャント(あなたがコントロールするクリーチャー)を持つオーラだ。
そしてエンチャントしているクリーチャーの強化とは別に戦場に出た時にも恩恵を授けてくれるデザインになっているね。
これは試練をクリアした褒章と捉えることができるかな。
そしてカルトーシュがなぜわざわざサブタイプとして扱われているかを示すエンチャントのサイクルとして試練サイクルがあるんだ。


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試練サイクルのカードは戦場に出た時にしか効果のないエンチャントで一種のソーサリーのような扱いだけど、カルトーシュが出たことに誘発して手札に戻ることができるんだ。
これによって試練をもう一度起こすことができるんだね。
まず試練が与えられて、それをクリアした証としてカルトーシュが与えられ、そして試練は手札に戻りまた次の試練を与える準備に入るといった流れを忠実に表していてよいサイクルだと思うよ。


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次は未来予知から《新たな精力》と《流動石の抱擁》だ。
この2枚はエンチャントでありながらタップ能力を持つという変わった奴らだ。
未来予知にはこの2つとオーラではないエンチャントとして《魔女の霧》の3枚がタップ能力を持つエンチャントとして収録されている。

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これだけはオーラじゃない


WotCアーティファクトと差別化するためにエンチャントの特徴は有色でタップ能力を持たないことと認識しているらしい*4のでこれは未来予知というマジックのあり得る/ありえない未来を垣間見るという特殊なセットだからこそ成り立ったカードだと言えるね。
ちなみにエンチャントだから戦場に出したターンにタップ能力を使うことができる。
アーティファクトと同じだと覚えておこう。

さて、このカードたちの特殊性に触れたところで個別に見てみようか。

《新たな精力》は自信をタップすることでエンチャントしているクリーチャーをタップ/アンタップができるオーラだ。
その効果は《現実からの遊離》を彷彿とさせるね。

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こちらはタップ能力ではなく青マナをコストとする


普通に使うなら自分のクリーチャーにつけてタップ能力を使いまわしたり攻撃したクリーチャーをアンタップさせてブロッカーにも使えるようにするとかがいいかもしれない。
もしくは相手クリーチャーにつけてタップし続けることで疑似的に攻撃不能にするという使い方も考えられるね。
コンボ的には《キオーラの追随者》につけるとお互いを無限にアンタップし合うから何かしら悪いことができそうだ。

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エンチャントもアンタップできるのは何気に強み


思いつくところだと《催眠の宝珠》で自分のデッキを全て墓地に送る、《水流を読む者》で無限ライフ、《航跡の打破者》を無限パンプアップなんかが考えられるけど強いかどうかは知らない。


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次に《流動石の抱擁》はタップすることでエンチャントしているクリーチャーに+2/-2の修整を与えることができるオーラだ。
類似のカード、《炎の供犠》と比べると1マナ重い代わりにエンチャント先のクリーチャーのサイズが小さくてもとりあえずつけて強化してから起動することができるようになっている。

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こちらはつけた瞬間に修正が入る


このカードも《新たな精力》同様クリーチャー強化と除去どちらにも使える柔軟性が持ち味と言えるね。

フレーバーの話に移ると名前にある流動石は暗黒次元とも呼ばれるファイレクシアの軍勢がドミナリアに攻めるために作った人工次元ラースを構成する物質だ。
流動石は必要に応じてあらゆる形へと変形させることができる物質で、ラースには地形や建物、果ては生物までもが流動石で構成されているんだ。

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流動石を名前に含むカードたち


そしてカードを見てもらうと分かるように多くの流動石を名前に含むカードはアーティファクトか赤を含む多色でタフネスを下げその分パワーを上げるといったパンプアップ能力を持っているんだ。
そして《流動石の抱擁》に戻ると、これらの過去のカードが持つ特徴を受け継いでいるね。


次に紹介するカードたちはエンチャント能力の対象が変なカードたちだ。
一気に見ていこう。


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変なエンチャント先その1は《動く死体》と《Dance of the Dead》だ。
この2枚がエンチャントするのは墓地にあるクリーチャー・カード
イメージとしてはどちらも墓地にある死体が急に動き出すといった感じだけど、そのためのゲーム的な処理はとても複雑なんだ。

例として《動く死体》の方で見てみよう。
まず、《動く死体》が戦場に出た時は墓地にあるクリーチャー・カードをエンチャントした状態だ。
そして戦場に出た時の能力が誘発してエンチャント(墓地にあるクリーチャー・カード)を失い、代わりにエンチャント(動く死体によって戦場に出されたクリーチャー)を得るんだ。
それと同時に《動く死体》にエンチャントされていた墓地にあるクリーチャー・カードは戦場に戻り、新しくエンチャント能力を持った《動く死体》がつき、一連の流れが処理されるんだ。

ここで大事なのはエンチャント能力を得る/失う効果とクリーチャーをリアニメイトする効果は1つの誘発型能力の処理として行われる点だ。
もし戦場に出た時の誘発型能力が打ち消された場合、エンチャント能力は変わらず、エンチャントしているクリーチャー・カードも移動しないから《動く死体》はエンチャントしているクリーチャー・カードが墓地から移動しない限り戦場に残り続けるんだ。
かなり奇妙な状況だね。

それと《動く死体》が戦場に出た時の能力を解決する前に壊された場合はどうだろう。
これには誘発の条件として「それが戦場にある場合」という文言があるから一瞬たりともエンチャントしていたクリーチャーが戦場に出ることはないんだ。
オーラの力がないのに一瞬だけ動き出す死体はかなり不自然だから当然そうなっていてほしいわけだけど、この文言はカードが意図する直感的な挙動をするためにあるんだね。

さて、カードが持つフレーバーを再現するためにかなり複雑な処理をしていることが分かったところでこれらのカードは過去何度もエラッタが出されてきて現在の形に落ち着いたんだ。
エラッタはカードテキストの誤りからルール変更に基づくもの、強すぎるから弱体化させるといったものまで様々な理由でカードのテキスト自体が変更されることを言うんだ。
これらのカードがエラッタされる前のテキストを見てなぜエラッタされたのか、また《動く死体》を見て考えてみよう。

動く死体/Animate Dead (1)(黒)
エンチャント
動く死体が場に出たとき、墓地にあるクリーチャー・カード1枚を対象とする。動く死体が場にある場合、動く死体はエンチャント(クリーチャー)を持つオーラになる。そのクリーチャー・カードをあなたのコントロール下で場に出し、動く死体をそれにつける。
エンチャントされているクリーチャーは-1/-0の修整を受ける。
動く死体が場を離れたとき、エンチャントされているクリーチャーを破壊する。それは再生できない。

一番驚くのはエラッタ前はそもそもオーラじゃなかったという点だね。
これは何度も何度もエラッタされてきた結果で、一番最初に印刷された時はエンチャント(死んだクリーチャー)/Enchant Dead Creatureである個別エンチャントだったんだ。
わざわざオーラ(個別エンチャント)でなくなった後に再びオーラに戻ったところを見ると、オーラを参照するカードに参照されず、印刷時の挙動と変わってしまっていたのを元に戻そうとしたと推測できるね。

そしてもう1つの違いが《動く死体》が外れた時の挙動だ。
《動く死体》はエンチャントしているクリーチャーから外れるとそのクリーチャーは動かなくなり再び墓地に戻るわけなんだけど、エラッタ前はこれが破れてしまっていたんだ。
それが起きるのは戦場に出た時に対象に取ったクリーチャー・カードは対象として適正だけど、いざ戦場に戻ってみたらオーラの対象としては不適正だった場合だ。
そうなると《動く死体》は適正なオブジェクトについていないオーラということで墓地に行くわけだけど、この時墓地から戻ってきたクリーチャーには一瞬たりともエンチャントしていないから「エンチャントされているクリーチャーを破壊する」の部分が起きず、結果《動く死体》のついていないクリーチャーが元気に戦場に残り続けてしまうんだ。
現在のエラッタ適用後だと《動く死体》が戦場に出た時の能力に《動く死体》が戦場を離れたら墓地から戻ってきたクリーチャーも生け贄に捧げることが組み込まれたからおかしな挙動をすることはなくなったんだ。


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変なエンチャント先その2は銀枠に移って《Animete Library》だ。
死体が動くんならライブラリーが動いてもいいじゃないかということでこいつが持つのはエンチャント(あなたのライブラリー)だ。
ライブラリーは手札や戦場と同じく領域の名前だからそれにエンチャントってどういうことだよと思うかもしれないけど銀枠だからその辺はスルーだ。
ライブラリーが動き出すと、それは残りの枚数だけのP/Tを持つクリーチャーとして暴れだすといったデザインをしているね。
毎ターンのドローで少しずつサイズダウンしてしまうけど、基本的に20/20以上はあるだろうから1回殴れればゲームを決められるだけのパワーを秘めているね。
ところでクリーチャーとなったライブラリーが破壊されてしまったらどうなるんだろう。
正解は代わりに《Animete Library》が追放されて元の動かないライブラリーに戻るだ。
さすがに銀枠といえどもライブラリー破壊()は許されなかったみたいだ。
あと仮に君の大切なライブラリーのコントロールを奪われてしまったりしても安心だ。
それは変わらず君のライブラリーとしてカードを引くことができるぞ!(その前に殴られて死んでしまうかもだけど)

ちなみにフレーバー・テキストは以下の通りだ。

Sometimes the books hit back.

直訳すると「しばしば本が殴り返してくる。」となる。
イラストでもわかるように書庫が急に動き出して殴り掛かってくるといったカードの持つ効果にぴったりなフレーバー・テキストだ。
それとこのフレーバー・テキストにある「the books hit back」の部分は英語表現の1つ「hit the book(猛勉強する)」とかかった言葉遊びになっているんだ。
銀枠のカードはカード名やフレーバー・テキストでこういった言葉遊びが多く使われていて調べてみると面白いよ。

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変なエンチャント先その3は黒枠の世界に戻ってきて《呪文織りの渦巻》だ。
このカードは《動く死体》や《Dance of the Dead》同様墓地にあるカードにエンチャントするカードだ。
これがエンチャントするのは墓地のインスタント・カードだね。
それらとの違いはこれは正真正銘墓地にあるカードにエンチャントし続けることだ。
しかも一度エンチャントしたあとに別のカードにエンチャント先が変わる点も他のオーラにはあまりない効果だね。

効果は自分がソーサリーを唱えるたびにエンチャントしているインスタントのコピーを作れるというものだ。
一度コピーしたインスタントは追放されてしまうから何度も使いまわすことはできないけど、コストの踏み倒しができる点、相手の墓地のインスタント・カードもエンチャントできる点はなかなか強力だ。
しかも一度このカードが戦場に出れば、エンチャントしているカードが墓地から移動したりコピーを作った後に墓地に他のインスタント・カードがなかったりして墓地に落ちない限りアドバンテージを稼ぎ続けてくれるところも魅力的だね。
一方で誘発条件が自分がソーサリーを唱えると狭いところや打消しみたいなカードはコピーしても基本的には意味がないところには注意が必要だね。

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変なエンチャント先その4はR&D Playtest cardから《Soulmates》だ。
なんとも可愛らしいイラストだけど、こいつはこれまでのカードとは一線を画すほど変なエンチャント先を持っている。
それはエンチャント(2体のクリーチャー)
……流石テストカードだ。
これまでに紹介したカードと比べてもなかなかに突飛なエンチャント先を持っているね。
これがエンチャントされている2体のクリーチャーはともに+1/+1修正とhexproof*5を得、片方が死ぬともう片方も死んでしまうといったカードになっている。
カード名の通り、運命の相手と一蓮托生になれるわけだ。

ところでエンチャント(2体のクリーチャー)はルール的にはどうなっているんだろう。
現状は以下のルールを破っているように見える。

  • 303.4d オーラはそれ自身をエンチャントすることができない。何らかの理由でそうなった場合、そのオーラはオーナーの墓地に置かれる。また、オーラがクリーチャーでもある場合、他のオブジェクトをエンチャントすることができない。何らかの理由でそうなった場合、そのオーラははずれ、そしてオーナーの墓地に置かれる。(これらは状況起因処理である。rule 704 参照)。 オーラは同時に複数のオブジェクトまたはプレイヤーにつくことはない。呪文や能力の効果によってオーラが複数のオブジェクトやプレイヤーにつくような場合、そのオーラのコントローラーはどちらのオブジェクトまたはプレイヤーにつけるかを選ぶ。

もしこのカードが黒枠として実際に印刷に至ったらこのルールを改正することになるのかもしれないけど、リリースノートを確認してみるとこう書かれていた。

Soulmates
2G
Enchantment — Aura
Enchant two creatures
Enchanted creatures each get +1/+1 and have hexproof.
When one of the enchanted creatures dies, destroy the other.

  • If one of the target creatures becomes an illegal target while Soulmates is on the stack, Soulmates resolves but doesn't enter the battlefield because its enchant ability won't be satisfied. If both targets are illegal, it doesn't resolve at all. In both of these cases, it's put directly into its owner's graveyard from the stack.
  • If one of the enchanted creatures leaves the battlefield without dying, Soulmates is put into its owner's graveyard but the other creature won't be destroyed. The same is true if one of the enchanted creatures can't legally be enchanted by Soulmates (perhaps because it gained protection from enchantments or it's no longer a creature).

magic.wizards.com

エンチャント能力についての注釈は1つ目に書かれている。
翻訳してみると、《Soulmates》を唱えている間に対象に取った2体のクリーチャーのうち、片方が不正な対象になっていた場合は解決されるけど戦場には出ず(=オーラのルール303.4gによって墓地に置かれる)、両方とも不正な対象になっていた場合は解決されない(=解決されなかった呪文は墓地に置かれる)とある。
要は2体のクリーチャーとも適正な対象であるときに限り《Soulmates》になれるということだね。

ちなみに2つ目の注釈には「片方が死んだときもう片方も死ぬ」効果についてのものが書かれていて、《Soulmates》がエンチャントされている片方のクリーチャーが手札や追放領域などの墓地以外の領域に移動した場合は《Soulmates》は墓地に落ちるけどもう片方のクリーチャーは戦場に残るといったことが書かれているんだ。
さすがに死ぬときも一緒と誓った相手とはいえ農場に行った相手を追って自分も一緒に鍬を握るわけではないみたいだね。

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農場には運命の人も来てくれない


R&D Playtest cardのカードを紹介したからもう1つ触れておくと、R&D Playtest cardの中に《Enchantmentize》というカードがある。

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これはクリーチャーかエンチャントにエンチャントしてそれを名前の通りエンチャント化させるカードだ。
クリーチャーを失わせるというところは少しだけ奇抜だけど、よくある疑似的な除去とほぼ同じカードをわざわざ紹介したのはとあるカードが関係しているんだ。

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《Enchantmentize》をもとにしたと思われるカード


そのカードがテーロス還魂記で印刷された《星々とあるもの》だ。
効果は《Enchantmentize》と同じところを見ると、R&D Playtest cardの中には本当に将来のセットに向けたテストカードが入っているんだということがわかるね。


長くなってしまったけど次が最後に紹介したいカードたちだ。
それはそのあまりの複雑さに存在をなかったことにしようとジョークが飛ばされたカードたちだ。
それがこいつらだ!


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エンチャント能力の紹介でクリーチャーを紹介するなんてと思うかもしれないが、こいつらもれっきとしたオーラだ。
ただしそれはこいつらが持つ起動型能力を使ったときに限りだが。

こいつらはリシドというクリーチャー・タイプを持つカード群で、イラストに描かれているなめくじのような軟体生物が本体だ。
リシドたちはみなマナを払って自身をタップすることで、対象に取ったクリーチャーにつくオーラへと変形するという能力を持っている。
そしてその能力の中にマナを払うとエンチャントしているクリーチャーから外れ再びクリーチャーに戻ることができることも含まれているんだ。

イメージとしては宿主に寄生して操り、不要となったら宿主から抜け出すといった感じだろうけど、これをルールで整備するのは非常に難しいんだ。

現在のルールでは能力を起動すると、クリーチャーであることを失い、代わりにエンチャント(クリーチャー)を持つオーラ・エンチャントとなる。
そして、対象に取ったクリーチャーへとエンチャントされ、以降コストを払いこの効果を終了させるまでは普通のオーラとしてふるまうんだ。
ここまではまだ変わったカードだで済むんだけど、ややこしいことがいくつかあるんだ。

まずこの「コストを払いこの効果を終了する」という能力だ。
この効果を終了するとは要はエンチャントしているクリーチャーから外れ、エンチャント(クリーチャー)とオーラ・エンチャントを失い再びリシド・クリーチャーに戻るということだ。
この一連の流れは「特別な処理」と呼ばれていてスタックを用いずに解決されるんだ。
簡単に言えば土地をプレイしたりマナ能力を起動したりする際に対応できないように、このオーラをリシドに戻そうとマナを払い始めた段階で対戦相手は邪魔をすることができないということだ。

次にオーラになる能力を自分自身を対象にした場合はどうなるだろう。
その答えはオーラのルールを確認するとわかる。

  • 303.4c オーラが、エンチャント能力やその他の効果による規定に対して不正なオブジェクトまたはプレイヤー上にエンチャントしていた、あるいはエンチャントされているオブジェクトやプレイヤーがすでに存在しなくなっていた場合、そのオーラはオーナーの墓地に置かれる(これは状況起因処理である。rule 704〔状況起因処理〕参照)。
  • 303.4d オーラはそれ自身をエンチャントすることができない。何らかの理由でそうなった場合、そのオーラはオーナーの墓地に置かれる。また、オーラがクリーチャーでもある場合、他のオブジェクトをエンチャントすることができない。何らかの理由でそうなった場合、そのオーラははずれ、そしてオーナーの墓地に置かれる。(これらは状況起因処理である。rule 704 参照)。 オーラは同時に複数のオブジェクトまたはプレイヤーにつくことはない。呪文や能力の効果によってオーラが複数のオブジェクトやプレイヤーにつくような場合、そのオーラのコントローラーはどちらのオブジェクトまたはプレイヤーにつけるかを選ぶ。

つまりリシドは寄生態勢にはなるけど自分自身には寄生できずに死んでしまうといことだ。

最後にかなりややこしいけど、リシドをコピーした場合のことを考えてみよう。
マジックにはコピーするクリーチャーをころころ変えられるものがいる。
例えば《謎の原形質》がそれだ。

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アップキープのたびに他のクリーチャーのコピーになれる


こいつがリシドになってオーラになる能力を起動し、次のアップキープにリシドではない何かにコピー先を移した場合どういう挙動をするんだろう。
順を追って確認してみよう。

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上の図のように《謎の原形質》が《異形化するリシド》のコピーになり、自身が持つ能力で《灰色熊》にエンチャントした場合、元《謎の原形質》と《灰色熊》はこうなるよね。

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元《謎の原形質》は「アップキープの開始時に別のクリーチャーのコピーになれる」ことを除いて完全に《異形化するリシド》として振る舞い、《灰色熊》はその恩恵にあずかってアーティファクトのタイプと+1/+1の修整を得る。
ここまではいいけど、じゃあ次のアップキープの開始時に元《謎の原形質》であるオーラ状態の《異形化するリシド》が別のクリーチャーのコピーになるとどうなるんだろう。

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例として《チフス鼠》になると仮定


するとこういう状態になるんだ。

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元《謎の原形質》は今は《チフス鼠》だから基本的には《チフス鼠》と同じテキストを持つはずだ。
だけど、《異形化するリシド》の時に起動した「コストを払って終了させるまでオーラになる」という効果はまだ継続中だから、この《チフス鼠》はエンチャント(クリーチャー)を持つオーラ・エンチャントととして扱うんだ。
だから元《謎の原形質》は《灰色熊》についたままだけど、《異形化するリシド》が持っていた「エンチャントされているクリーチャーは+1/+1の修整を受けるとともに、それの他のタイプに加えてアーティファクトである。」というテキストは失われ、《灰色熊》に対して何の修正も与えないんだ*6

ところで同じ理由で元《謎の原形質》は《異形化するリシド》でなくなった後でも「コストを払ってクリーチャーに戻る」ことが可能なんだ。
その場合はもちろん現在コピーしているクリーチャーである《チフス鼠》に戻る。

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ちなみに《灰色熊》についている《異形化するリシド》のコピーである《謎の原形質》が別のリシドのコピーになることを選んだ場合は、《チフス鼠》の理由と同様のことが起き、そのリシドが持っている「エンチャントされているクリーチャーに修正を与える」能力を持つから《灰色熊》は新たに修正を受けることになるね。

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リシドからリシドへコピーすると…
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コピー後のリシドの能力をついているクリーチャーに与える


ここまではクリーチャーのコピーとなるカードについて整理してみた。
そしてもちろんエンチャントのコピーになれるカードもマジックには存在している。

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エンチャントのコピーになるエンチャント


《エンチャント複製》がオーラになったリシドのコピーになった場合はどうなるんだろう。

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結論を言うと、《エンチャント複製》はリシドのクリーチャーとしての特性を持って戦場に出るんだ。

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これは「オーラになる」能力を戦場に出たばかりの《エンチャント複製》はまだ起動していないからなんだ。
その結果、エンチャントではない元《エンチャント複製》という奇妙なものが誕生することになるんだ(リシド自体が奇妙だって?)


さて、様々な状況を見てきたわけだけど、これ以外にもルール的に複雑なリシドたちはルールマネージャーの頭を悩ませ、ついには「リシドなんか存在しない」という冒頭のジョークを生んだというわけだ。
やりたいことのイメージがわかりやすいこととルール的にわかりやすいことは別だということがリシドを見るとわかるね。



ここまで長々とお付き合いいただきありがとう。
今回はエンチャント能力からオーラが生まれた経緯、ルール的な話に関連カードの話と紹介したいものが多すぎてかなりの文字数になってしまった。

次回はオーラとはまた違った方法でクリーチャーを強化するあの能力だ。
その日まで、あなたが不運に魅了されず幸運の加護にありつけますように。

*1:オーラでないカードが後からオーラになり、その際にエンチャントを得るカードや持っているエンチャントを失って新たなエンチャントを得るカードはいくつか存在する。

*2:web.archive.org

*3:常盤木メカニズムほどではないが使いたいと思ったときにいつでも再録することができるメカニズムの総称

*4:magic.wizards.com

*5:これについてはまた別の機会に語りたいと思う。

*6:接死を持っているのは元《謎の原形質》の方であって《灰色熊》に与えているわけではないことに注意が必要だね。

キーワード能力雑記:【第4回目】~隙を生じぬ二段構え~

キーワード能力雑記へようこそ!
この記事では毎回1つのキーワード能力に焦点を当てて色々深堀していこうと思う。
第4回となるキーワード能力は前回もちょくちょく登場していた『二段攻撃/Double strike』だ。

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2回攻撃できる能力


早速定義に移っていこう!

702.4 二段攻撃/Double Strike

  • 702.4a 二段攻撃は、戦闘ダメージ・ステップのルールを変更する常在型能力である。rule 510〔戦闘ダメージ・ステップ〕参照。
  • 702.4b 1体以上の攻撃クリーチャーまたはブロック・クリーチャーが、戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃(rule 702.7 参照)や二段攻撃を持っていた場合、そのステップに戦闘ダメージを与えるのは先制攻撃か二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後に、戦闘終了ステップに進む代わりに、第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかったか、この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後で、戦闘終了ステップに移行する。
  • 702.4c 第1戦闘ダメージ・ステップの間に二段攻撃を失うと、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを割り振ることはできない。
  • 702.4d 第1戦闘ダメージ・ステップに先制攻撃の戦闘ダメージを与えたクリーチャーに二段攻撃を与えると、そのクリーチャーは第2戦闘ダメージ・ステップにも戦闘ダメージを与えることができる。
  • 702.4e 1体のクリーチャーに複数の二段攻撃があっても効果は変わらない。


先制攻撃のときにも出てきたようにこの二段攻撃は先制攻撃の亜種なんだ。
だから今回は先制攻撃とは違う部分のルールだけ見ていこう。

702.4b 1体以上の攻撃クリーチャーまたはブロック・クリーチャーが、戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃(rule 702.7 参照)や二段攻撃を持っていた場合、そのステップに戦闘ダメージを与えるのは先制攻撃か二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後に、戦闘終了ステップに進む代わりに、第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかったか、この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後で、戦闘終了ステップに移行する。


あれ?前回も同じ説明をしたって?
でも前回わざと説明を省いたところがあったのをみんなは覚えているかな?

(前略) 第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、 (中略) この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。


そう、ここの部分こそが二段攻撃が二段攻撃である所以だ。
二段攻撃も先制攻撃同様第1戦闘ダメージ・ステップでダメージが与えられることができる。
ところで先制攻撃の場合は第2戦闘ダメージ・ステップではダメージを与えることができなかったね。
ダメージを与える権利は1人1回までだ。
だが、二段攻撃は違う。
二段攻撃は既に攻撃を終えたにもかかわらず第2戦闘ダメージ・ステップでも攻撃を仕掛けてくるんだ。


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二段攻撃の名の通り相手に2回ダメージを与える


このことから二段攻撃は実質的にパワーを倍にする能力ともとらえることができるね。

それと《巨大化》みたいなパワーにプラスの修正の与えるカードは相性が抜群だ!

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また、ダメージを与えることで誘発する能力は2回誘発するから非常に相性がいいね。

このように二段攻撃は非常に優れた能力だということができるんだ。
特に先制攻撃と比べたとき、二段攻撃はほぼほぼ上位互換*1だといえるね。
そのためか二段攻撃を持つクリーチャーは先制攻撃を持つクリーチャーよりも重いマナ・コストに設定されていたり、素のP/Tが低めに設定されていることが多いんだ。

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同じ色、P/Tでも二段攻撃の方が重かったり
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同じマナコストでも二段攻撃の方が素のスペックが低かったりする


だから二段攻撃を持つクリーチャーはマナレシオが低くなりがちという特徴があるんだ。

さて、次にいこう!

702.4c 第1戦闘ダメージ・ステップの間に二段攻撃を失うと、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを割り振ることはできない。

702.4d 第1戦闘ダメージ・ステップに先制攻撃の戦闘ダメージを与えたクリーチャーに二段攻撃を与えると、そのクリーチャーは第2戦闘ダメージ・ステップにも戦闘ダメージを与えることができる。

この2つは戦闘中に二段攻撃を得た/失った場合について書かれているんだ。
それがどういうことか改めて第2戦闘ダメージ・ステップでダメージを与えられる条件を確認してみよう。

第2戦闘ダメージ・ステップでダメージを与えられるクリーチャーの条件

  1. 最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかった
  2. この時点で二段攻撃を持っている

つまり、第1戦闘ダメージ・ステップで二段攻撃を持っていたけど第2戦闘ダメージ・ステップの時点で失ってしまっているクリーチャーは1.2.どちらの条件も満たさないから戦闘ダメージを与えられない。
一方で第1戦闘ダメージ・ステップで先制攻撃を持っていたクリーチャーに二段攻撃を与えて第2戦闘ダメージ・ステップに入った場合は、2.の条件を満たすから戦闘ダメージを与えられるというわけだ。


最後に

702.4e 1体のクリーチャーに複数の二段攻撃があっても効果は変わらない。

はいつも通り。

二段攻撃を複数持っても三段攻撃にはならないんだね*2

ちなみに書いていないことに関しては基本的には先制攻撃と同じだ。
戦闘ダメージ・ステップ開始時以降に二段攻撃を得ても関係ないし、二段攻撃を持つクリーチャーが格闘してもダメージを与えるのは1回だけだ。
ただし、1つだけ注意しないといけないことがある。
それは『第2戦闘ダメージ・ステップの段階でブロック・クリーチャーがいなくなってもプレイヤーにダメージを与えることはできない』という点だ。
これは普通の戦闘において、ブロック・クリーチャーが除去された場合でもブロックは成立しているのと同じ理屈なんだ。


さて話は移り変わって、過去に紹介したキーワード能力の中と二段攻撃の相性を見てみよう。

まず、接死との組み合わせは非常に相性がいいね。
なぜなら相手クリーチャーがいくら強かろうが先にダメージを与えられれば接死で倒すことができるからだ。
これは先制攻撃も同様のことが言えるね(先制攻撃の記事では言及し忘れたけど)。
一方で、接死を持つクリーチャーが二段攻撃(先制攻撃)を持つクリーチャーを相手にするのは、まず相手の攻撃に耐えてからでないと肝心のダメージを与えるタイミングが来ないからかなり厳しいね。

他にも先制攻撃と同時に持ってたときのことを確認してみよう。
このときは基本的には何の意味もなさないと考えて問題ないよ。
もう一度確認するけど第1戦闘ダメージ・ステップでダメージを与えられるのは『先制攻撃か二段攻撃を持っている』ことが条件だから両方持っても挙動としては二段攻撃を持つクリーチャーと何ら変わらないんだ。
ただし、先制攻撃と二段攻撃は違う能力だから『片方を失ってももう片方がある限り先にダメージを与えられる』ということは覚えておこう。

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前回登場した《タールルームの勇者》も二段攻撃相手にはさすがに驚いてしまうかもね

ちなみに相手が先制攻撃を持っていた場合、第1戦闘ダメージ・ステップでお互いにダメージを与えあうから普通の戦闘とあまり変わらないけど、もしここで決着がつかなければ二段攻撃側はもう一度ダメージを与えられることを考えると二段攻撃の方がやや有利と考えることができるね。
二段攻撃が先制攻撃の強化版だということがこの関係からもうかがえるね。


それじゃあ次になぜ二段攻撃が生まれたのか見てみよう。
二段攻撃はレギオンで初登場したキーワード能力だ。
このレギオン、なんと収録されているカード全てがクリーチャー・カード(しかも基本土地すら入っていないんだ!)という前代未聞のセットだったんだ。
つまり、レギオンにはクリーチャーが持ちうる能力しかセットに入れることはできないことを意味していたんだ。
そしてレギオンというセット名は『軍団』という意味で、戦闘をする上で有利となるような能力が求められたんじゃないかな。
だからこそこのセットで二段攻撃が収録されたんだと僕は思うよ。

ところで二段攻撃の原型はレギオンよりも前に生まれていたということを知っているかな?
それはこの当時イベントされていた『カードを作るのは君だ!/You Make the Card!』という企画が関係しているんだ。
このイベントはWotCから何個かの選択肢が公開され、ユーザがそれらに投票していくという形でカードをデザインしていくというものだったんだけど、この時にそのカードが持つ能力について一般から公募した能力の中に二段攻撃の元型が含まれていたんだ。
でもその時ユーザの投票によって作られるカードは「緑のクリーチャー」であることが決まっていて二段攻撃は緑にはふさわしくないと判断されWotCが公開する選択肢から除外されることになってしまったんだ*3
一度はお蔵入りとなった二段攻撃だったが、その能力自体は非常にエレガントであるとWotCは判断した結果、開発中だったレギオン赤いカードとして収録することにしたんだ。

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ギオンに収録された初の二段攻撃を持ったカードたち


ところでなぜ二段攻撃が緑のカードとしてふさわしくないと判断されたんだろう?
二段攻撃は先制攻撃の派生作品のようなものだ。
それを踏まえると先制攻撃のカラー・パイと同様が担当することも違和感がないよね。
それに、は訓練された戦闘技術として、はその素早さから実現される手数の多い攻撃として二段攻撃を持つことに違和感がないのに対して、は巨躯から繰り出される重い一撃を持って相手を打ち倒すという側面が強いから二段攻撃のイメージとは合わないんだ。
ちなみに先制攻撃の時は許容されていたなんだけど、二段攻撃に関してはほとんど存在していなくて、何の条件もなく二段攻撃を持っている黒単色のクリーチャーは《墓所の勇者》しか存在しないんだ。

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黒の二段攻撃持ち


しかも《墓所の勇者》はマナを支払わないと戦場に残れないから純粋な単色のクリーチャーとしては誰も持っていないと言えるね。
これは、もある1枚の例外を除いてとの多色カードであったり起動型能力のコストとしてマナやマナを要求してくる形以外で二段攻撃を持つカードは存在していないんだ。

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例外中の例外として0マナで二段攻撃を持てる青いカード
これだから次元の混乱は……


そのことを考えるとが先制攻撃が得意であることの延長線上に「先制攻撃が得意であるゆえに通常の戦闘と先制攻撃を同時にこなす二段攻撃も操れる」という表現なのかもしれない。


二段攻撃の生い立ちもわかったところで次にその名前について考えてみよう。
『二段攻撃/Double strike』は英語名・日本語名ともに読んで字のごとく2回攻撃するということをストレートに表現しているね。
この名前はキーワード能力の中でも特に『名前と実際の挙動が一致している』能力の1つだと個人的には評価しているんだ。
下手したら先制攻撃よりも先に二段攻撃を見た方が先制攻撃の挙動を間違えないんじゃないかと思うくらいいいネーミングだと思うよ。
first strikeとdouble strike、先制攻撃と二段攻撃でネーミングをそろえている点も両者に関連があると示しているよね。
二段攻撃の名前に関しては文句のつけようがないね。


さあ、最後に恒例の二段攻撃に関するカード紹介だ。

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消滅した都市の子孫。忘れられた武将の弟子。現代の鍛冶には作れぬ刃の達人。これらの称号はすべて歌われるに値する生涯で彼が手に入れたものである。


まず初めに紹介するのは《フェメレフの誇り、クェンデ》だ。

能力としては先制攻撃を持つものに対してさらなる強化として二段攻撃も伝授するものだ。
これは彼が軍人としてだけではなく指導者としても優れていることを表現しているように思うね。
ただし気を付けなければならないのは彼はあくまで既に先制攻撃を持つもののみを指導の対象としていることだ。
一度彼の恩恵で二段攻撃を得たとしてもその後先制攻撃を失ったものは二段攻撃の仕方も忘れてしまうから気を付けなければいけないね(まあ、先制攻撃もできないものが二段攻撃なんかできないだろうと考えれば辻褄は合うか)。

ところで彼は一体どういう人間なんだろう。
彼はドミナリアにあるフェメレフという宗教国家に属する騎士だ。
だが彼の本当のルーツは失われた国家ザルファーの英雄、マギータにあるんだ。
彼はマギータの子孫を自称し、見たこともない故郷ザルファーを永劫の彼方へと奪い去った(と信じられている)テフェリーに復讐を誓うキャラクターとして登場するんだ。
ストーリー上、彼は悪役として登場しそしてその復讐は失敗に終わってしまうから一見彼は小物のように見えてしまうかもしれない。
だけど彼の能力やフレーバー・テキストの彼を賛美する内容を鑑みると軍人・指導者としての力は本物だったんじゃないかな。
彼の歪んだ正義感が生来のものなのか育ちの中で形成されたものかはわからないけど、最終的にはテフェリーをかばったスビラという女性(後のテフェリーの妻)に「テフェリーを殺したければ私を殺せ」と言われ手にかけることなく去ったところから彼がその後改心して真っ当な人生を送れているといいね。


さて、次はいつものようにスリヴァーたちについて見てみよう。

まずは《骨鎌スリヴァー》だ。

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「やつらの尖腕は俺達の剣より鋭く、しかも俺達の弓より速い。」 ――― テューンの斥候、ハストリック


《骨鎌スリヴァー》は基本セット2014で登場した白のスリヴァーだ。
こいつの特徴は何と言っても名前にもなっている鎌のように大きく発達した腕にあるね。
光が透けるほど薄い刃でありながら、骨の固さも同時に持ち合わせていることがこのイラストから読み取れるね。

フレーバー・テキストでは基本セット2014の舞台であるシャンダラーにあるテューンという国で斥候をしていた人物によってその攻撃力と素早さについて言及されているね。
ところでハストリックという人物、斥候としての活動中に偶然スリヴァーたちの巣を発見してしまい捕虜となってしまったという経緯から他のスリヴァーのフレーバー・テキストにもちょくちょく登場するんだけど、最終的にはスリヴァーの”歌”によって狂乱してしまい街中でスリヴァーたちの脅威について喚き散らかすだけの存在になってしまったんだ。
彼の戯言が現実になってしまう日が来ないことを祈ろう。


次に《憤怒スリヴァー》について見てみよう。

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裂け目が開き、我らの矢は突然止まった。動くことは世界を押し返すようなものだった。しかし、スリヴァーの爪は動き続け、セッドの胸に赤い傷が見えたかと思うと、空中に赤い血の帯が浮かんだのだ。 ――― ベナリアの勇士、エイドム・キャパシェン


《憤怒スリヴァー》は時のらせんで登場した赤のスリヴァーだ。
セット発売の時系列で考えるとこいつの方が《骨鎌スリヴァー》より先輩ということになるね。
昔のスリヴァー同様こいつも敵味方関係なく自身の能力を付与する効果になっているんだ。

ところでこいつは何に対してそんなに怒っているんだろう。
フレイバー・テキストに目を移すと《吐毒スリヴァー》の時にも紹介したエイドム・キャパシェンがいるね。
彼の台詞を見るとおそらくスリヴァーたちとの戦闘中に『時の裂け目』と呼ばれる次元そのものを荒廃させるほどの現象が起き、彼らが放った矢は空中で止まるという世界の理を無視した結果が目の前で起きたみたいだ。
もちろんスリヴァーたちにも影響はあったがこいつらはその力に屈しなかった。
『時の裂け目』の中でもこいつらは暴れまわりエイドムの僚友であるセッドに切りかかった。
その時の原動力が自分たちを押さえつけようとするものに対する激しい怒りであり、その力の表現として二段攻撃を得たんじゃないかなと思うよ。

あと《憤怒スリヴァー》は当時のスリヴァー能力のテンプレートに従っているだけだから意識されていないだろうけど、名前やフレーバー的にも敵味方気にしてられない状況だったことが表されてて全スリヴァーが能力を共有することに説得力を与えているように思うね。


さて、二段攻撃について色々見てきたけどどうだったかな?

もしこれが面白いと思ってもらえたら幸いだ。

次回はキーワード能力としては意識されていないであろうあるサブ・タイプと密接にかかわる能力だ。
その日まで、あなたに2倍の恩恵が訪れますように。

*1:MTGにおいて完全上位互換というものはほとんど存在しないけどここでは大まかなイメージとして使っている。

*2:おっと。ここは黒枠の世界だ。

*3:ちなみにこの時作成されたカードというのが《忘れられた古霊》。 f:id:teilving:20201017020029j:plain

キーワード能力雑記:【第3回目】~先手必勝~

キーワード能力雑記へようこそ!
この記事では毎回1つのキーワード能力に焦点を当てて色々深堀していこうと思う。
第3回となるキーワード能力は『先制攻撃/First strike』だ。


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相手より先に攻撃ができる能力


いつもの通り先制攻撃の定義を見てみよう!

702.7 先制攻撃/First Strike

  • 702.7a 先制攻撃は、戦闘ダメージ・ステップのルールを変更する常在型能力である。rule 510〔戦闘ダメージ・ステップ〕参照。
  • 702.7b 1体以上の攻撃クリーチャーまたはブロック・クリーチャーが、戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃や二段攻撃(rule 702.4 参照)を持っていた場合、そのステップに戦闘ダメージを与えるのは先制攻撃か二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後に、戦闘終了ステップに進む代わりに、第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかったか、この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後で、戦闘終了ステップに移行する。
  • 702.7c 第1戦闘ダメージ・ステップの戦闘ダメージが与えられた後で先制攻撃を持たないクリーチャーに先制攻撃を持たせたとしても、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを与えなくすることはできない。第1戦闘ダメージ・ステップの戦闘ダメージを与えた後で先制攻撃を持つクリーチャーから先制攻撃を取り除いたとしても、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを与えることはできない(二段攻撃を持つ場合を除く)。
  • 702.7d 1体のクリーチャーに複数の先制攻撃があっても効果は変わらない。


先制攻撃を端的に表せば「相手より先に戦闘ダメージを与えることができる」能力といえるんだ。
詳しいことは今回も一つ一つ紐解いていこう。

702.7a 先制攻撃は、戦闘ダメージ・ステップのルールを変更する常在型能力である。rule 510〔戦闘ダメージ・ステップ〕参照。

ここで出てくる戦闘ダメージ・ステップは戦闘フェイズの一部で、攻撃クリーチャー、防御クリーチャーがどのように戦闘ダメージを与えるのかを決定して実際にダメージを与えあうためのステップだ。
戦闘フェイズは以下の5つのステップから成り立っているんだ。


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戦闘フェイズの内訳
今回は戦闘ダメージ・ステップが主役


先制攻撃は戦闘ダメージ・ステップに干渉してルールを捻じ曲げるらしいことがここで定義されているね。
それじゃあいったいどういう風に変えているんだろう?
それは702.2b以降で定義しているから次に行ってみよう。

702.7b 1体以上の攻撃クリーチャーまたはブロック・クリーチャーが、戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃や二段攻撃(rule 702.4 参照)を持っていた場合、そのステップに戦闘ダメージを与えるのは先制攻撃か二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後に、戦闘終了ステップに進む代わりに、第2戦闘ダメージ・ステップが発生する。このステップに戦闘ダメージを割り振るのは、最初の戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃も二段攻撃も持っていなかったか、この時点で二段攻撃を持っているクリーチャーだけである。そのステップの後で、戦闘終了ステップに移行する。

長いね……
でも大丈夫!順を追って確認してみよう!

まず、攻撃クリーチャーかブロック・クリーチャーが戦闘ダメージ・ステップ開始時に先制攻撃を持っている場合に何かが起こるみたいだ。(おっと!二段攻撃君の出番はまだだから座っててくれ。君の出番はすぐにやってくるから!)
その起きることとは大きく分けると2つ。

1つ目が本来なら攻撃クリーチャー、ブロック・クリーチャー全員が行うはずの戦闘ダメージの発生が、先制攻撃を持つクリーチャーしか行うことができなくなるんだ。
この結果、先制攻撃を持つクリーチャーだけが一方的に相手を殴りつけられるわけだね。


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つまり攻撃クリーチャーのパワーがブロック・クリーチャーのタフネス以上なら一方的に倒せるんだ。


2つ目が通常の戦闘ダメージ・ステップが終わると追加でもう一度戦闘ダメージ・ステップが開始するということだ。(追加されたこのステップを第2戦闘ダメージ・ステップと呼んでるね)
ただし第2戦闘ダメージ・ステップでは、先制攻撃を持つクリーチャーはダメージを与えられないと言っている。
今度は先制攻撃を持たないクリーチャーたちの番というわけだ。

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第1戦闘ダメージ・ステップを生き残れば今度は先制攻撃を持たないクリーチャーたちが反撃する番だ


先制攻撃は「先制攻撃を持っているクリーチャーが戦闘に参加している」という条件で上記2つの効果を生み出す能力だというのこの定義では示しているんだ。


ここで重要なことは先制攻撃を持つクリーチャーが攻撃もブロックもしてなければそもそもその後に書かれている事柄は起きないという点だ。
つまり、元々戦闘ダメージ・ステップは2回あるわけではなくて、先制攻撃を持つクリーチャーが戦闘に関わることで初めて2回発生するようにできているということだ。

なんでこんな風に定義しているんだろう?
それはある種特殊な状況下でしか発生しないことを考慮するために常に戦闘ダメージ・ステップを2回発生させるのは処理の流れ的に無駄が多いからなんだ。
特殊な状況下でしか発生しないことはその状況になって初めて定義した方がゲームのデザインがスッキリしていいよね。

あとこれはイメージの話なんだけど、普段のゲームプレイの感覚では通常の戦闘ダメージ・ステップの前に新たな戦闘ダメージ・ステップが挟み込まれるようなイメージを持っていた人もいるんじゃないかな?
でも実際には通常の戦闘ダメージ・ステップが先制攻撃用のステップに変化して、その後に追加の戦闘ダメージ・ステップが起きるという流れが挙動としては正しいんだ。

わざわざこんなことを意識しなくてもゲームをプレイする側は何の不都合も起きないけど、これもゲームをデザインする側からすると重要なんだ。
同じ効果を実装するのであればよりシンプルなものが素晴らしいデザインだといえるよね。
複雑なマジックが長く続いているのはこういったシンプルさを重視していることも秘訣なんじゃないかなと思うんだ。


それじゃあ次の定義に移ろう。

702.7c 第1戦闘ダメージ・ステップの戦闘ダメージが与えられた後で先制攻撃を持たないクリーチャーに先制攻撃を持たせたとしても、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを与えなくすることはできない。第1戦闘ダメージ・ステップの戦闘ダメージを与えた後で先制攻撃を持つクリーチャーから先制攻撃を取り除いたとしても、第2戦闘ダメージ・ステップに戦闘ダメージを与えることはできない(二段攻撃を持つ場合を除く)。

ここでは戦闘の途中で先制攻撃を得たり失ったりしたときのことについて定義しているね。

まず、第1戦闘ダメージ・ステップ(通常の戦闘ダメージ・ステップのことだ)で処理を終えた後に先制攻撃を得たクリーチャーについて。
この場合、第2戦闘ダメージ・ステップでは戦闘ダメージを与えるとあるね。
もしこの定義がなかったら

このクリーチャーは第1戦闘ダメージ・ステップの開始時に先制攻撃を持っていなかったからダメージを与える権利はない。ところで第2戦闘ダメージ・ステップ時は先制攻撃を持たないクリーチャーがダメージを与える番だけど今このクリーチャーは先制攻撃を持っている。よってここでもダメージを与える権利はない。

となってしまってダメージを与えるタイミングを失ってしまう。
でもこのクリーチャーは確かに戦闘には参加していてダメージを与える権利を持っているはずだ。
それにこんな処理だとしたらかなり直感的じゃないよね?
だからルールの方でそんなことはないですよと定義しているわけだ。

次に先制攻撃を持っていたクリーチャーが第1戦闘ダメージ・ステップの後に先制攻撃を失った場合。
この時、そのクリーチャーが第2戦闘ダメージ・ステップでダメージを与えることはないと書かれているんだ。
つまり、

第1戦闘ダメージ・ステップ開始時に先制攻撃持ってたから既にダメージを与えたけど、第2戦闘ダメージ・ステップに入ったときには先制攻撃を失ってるからもう一度ダメージを与えてもいいよね?

みたいなことを許さないための定義なんだ。

このルールによってダメージを与えるタイミングは(第1)戦闘ダメージ・ステップ開始時の先制攻撃の有無にのみ左右されていて、ダメージを与える機会を失ったり不当に2回攻撃することがないということが定義されているんだ。


さあ、最後はいつものあれだ。

702.7d 1体のクリーチャーに複数の先制攻撃があっても効果は変わらない。

常在型能力恒例の2つ以上持っても意味ないよルールだ。
だって例えば先制攻撃を2つ持ってたら第1戦闘ダメージ・ステップに2回ダメージなんておかしいもんね。


さて、書かれているのはここまで。
次は書かれていないことについて考えてみよう。

まず、戦闘ダメージ・ステップ開始時以降に先制攻撃を持っても意味はないね。
確認したように先制攻撃の有無を確認するのは戦闘ダメージ・ステップの開始時だ。
その後で先制攻撃を持ったとしてももう遅いんだ。
だから先制攻撃を得るタイミングは計画的に。

次に戦闘以外では一切影響しない点だ。
例えば格闘する際を考えてみよう。
格闘は簡単に言えば「クリーチャー2体が互いに自身のパワーに等しい点数のダメージを相手に与えあう」という効果だ。
先制攻撃を持っているからって先にダメージを与えられるというわけではないんだ。
あくまで戦闘フェイズでのみ効果が発揮される能力だということを覚えておこう。


ここで少し目線を過去に移してみよう。
先制攻撃のルールは初期からあまり変わっていないんだけど、その変種としてこんな表記のカードが存在したんだ。


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これらのカードも先制攻撃を持っているみたいだけど少し見慣れない形をしているね。
これは『先制攻撃(攻撃時のみ)/First strike when attacking』という形で定義された特殊な先制攻撃だ。
効果は名前の通り、「これを持つクリーチャーが攻撃した時、戦闘終了時まで先制攻撃を得る。」といった誘発型能力として定義されていたみたいなんだ。
現在ではこの定義は廃止されて代わりに「このクリーチャーは、それが攻撃しているかぎり先制攻撃を持つ。」といった常在型能力に変更されているんだ。
これによってかつては先制攻撃を得るのに対応して何か行動ができたけど今はそのタイミングがないという違いがあるから気を付けないといけないね。

ちなみに最近のWotCは常に先制攻撃を持つクリーチャーよりも攻撃時や自分のターンの間だけなど限定的に先制攻撃を持つクリーチャーの方を採用する傾向があるとマローは語っているんだ*1


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「あなたのターンであるかぎり、これは先制攻撃を持つ」というテキストを持つクリーチャーたち


この理由として「先制攻撃は攻撃的に使うと楽しいが、防御的に使うとゲームをシャットアウトしてしまいつまらなくなるから」というのを挙げている*2
これはどういうことだろう。

例えば先制攻撃を攻撃的に使うとどうなるだろう。


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先制攻撃は戦闘を優位に進めることができる能力だ。
だから積極的に戦闘に参加させることで勝利に近づくことができる。
もちろん相手もこのままだと負けてしまうからその状況を変えるために動いてくるだろう。
結果として先制攻撃はゲームに流動性を与え、マジックを楽しいものにしてくれるんだ。

一方で防御的に使った場合を考えてみよう。


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この場合、攻撃側は攻撃すると自分のクリーチャーを一方的に失うことになる。
そうなると攻撃しないことが正しい選択となり勝利に近づくことができないんだ。
また、防御側は無理に行動をしなくても負けることはない。
だから相手の動きを待って対処できるよう準備することが得策となるよね。
その結果、盤面は膠着しいつまでたってもゲームに変化は訪れなくなる。
それが長引けば長引くほどゲームとしてはつまらないものになってしまうことが予想できるよね。

戦闘をエキサイティングなものにするはずの先制攻撃が逆にゲームを退屈なものに変えてしまっている。
これがマローが言っていた問題点だ。
これは先制攻撃が戦闘において攻撃・防御どちらに使っても優位に働くことから生まれるジレンマなんだ。
そしてこのジレンマを解消するためにWotCが考えたのがさっき書いた「限定的な先制攻撃」というわけなんだ。


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限定的な先制攻撃の場合も通常の先制攻撃と同様攻撃的に用いることでゲームの優位性を獲得できるね。
これは先制攻撃をカードに持たせることでゲームをエキサイティングにするという目的を満たしているね。
対して防御的に用いた場合はどうだろう。


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防御的に用いたとしてもこれは結局普通のクリーチャー同士の戦闘と同じだ。
となると攻撃側は単純に盤面にあるクリーチャーのP/Tだけを比べて戦闘するかを決めることができるよね。
しかも今回の場合、相手がブロックしてくるかもしれないクリーチャーは相手のターンには先制攻撃を持って攻撃してくるかもしれないクリーチャーだ。
そうなると相手のターンに備えて攻撃しなかったとしても仮に攻撃された場合ブロックすると損してしまうよね。
だけどもしここで攻撃することで相手がブロックしてくれたらどうだろう。
その場合、お互いのクリーチャーは相打ちとなって相手ターンの攻撃に対して憂慮することがなくなるかもしれないよね。
仮にブロックされなかったとしても相手のライフを減らすことができるからライフレースをどちらが制するかという話になってゲーム自体は進行するよね。
つまりどちらになっても攻撃側は攻撃することでゲームを進めることができるんだ。


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これを見ると限定的な先制攻撃の場合、防御的に用いるとむしろ相手に攻める理由を与えてしまうことがわかるよね。
だから優位性を獲得したかったら攻撃的に運用していく必要があるんだ。
そしてこの状況こそがWotCが望んでいたエキサイティングなマジックだ。
普通の先制攻撃に比べ弱くなっているように感じるかもしれないけど、ゲームを面白くするための道具としてこの「限定的な先制攻撃」は使い勝手がいいとWotCは判断しているということなんだね。


さて、次は先制攻撃の歴史を見てみよう。

先制攻撃は接死や防衛と違いアルファから存在する由緒正しい能力だ。


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アルファには3種類の先制攻撃持ちクリーチャーと先制攻撃を与えるオーラが1種類あった。
今のマジックでは先制攻撃は、そしてたまにが扱うという役割分担がされている。
だからである《エルフの射手》が先制攻撃を持っているのは少し違和感があるかもね。
黎明期は色の役割があやふやで今とは違う考え方だったということが見て取れるね。

さて、上に書いた通り先制攻撃は基本的にの役割だ。
では何故その色に割り振られているのか、それは先制攻撃が持つフレーバーを考えてみよう。
先制攻撃は読んで字のごとく相手より先に攻撃できることを表しているんだ。
それをどのように実現させるかというところでこの2色が選ばれているんだ。

は統率された軍隊の色だ。
その際には槍や弓といった長距離からの攻撃手段を持って戦いを有利に進めるだろう。
そうなると必然的に敵よりも先に攻撃する手段を持つわけだ。
それが先制攻撃として表れているんだね。

対して、赤は白に比べてもっと単純だ。
悩んでる暇があったら相手より先に殴ったらいいじゃん!と素早く行動に移す。
そのフットワークの軽さが先制攻撃として表現されているんだ。

一方では積極的に自ら動く色じゃないから先制攻撃を持たないんだ。

ところではたまに持つことが許されていると言ったよね。
では、どいうときに黒が先制攻撃を持つことが許されるんだろう。
それは白と対をなす存在として描かれる時だ。
アルファにあった《黒騎士》もその1つ。
騎士というクリーチャー・タイプは白と黒に多く存在する。
そして白と黒は対抗色と言って互いが敵対関係にあって、対比して描かれることが多い色なんだ。
ところで騎士は素早く敵を倒す機動性、槍を使ったレンジのある攻撃など先制攻撃を持つフレーバーがそろっているよね?
特に白い騎士は色の理念も併せて先制攻撃を持つことが多いんだ。
となるとその白い騎士と対比して描かれる黒い騎士も先制攻撃を持ってもいいよね?
そういう時に黒は先制攻撃を持つことが許されるんだ。


次に『先制攻撃/first strike』という名前について考えてみよう。
まず目につくのは2単語で構成されているところだ。
基本的にキーワード能力は英語名詞一単語で表現されることが多いんだけど、絶対そうしなければならないというほど強いルールではないんだ。
アルファを作るときには意識されなかっただけの可能性もあるけど、無理に1単語にまとめるよりわかりやすさを重視した結果なんだろうね。
そしてfirst strikeという名前は読んで字のごとく先に攻撃するという意味だ。
能力のイメージそのままだね。
でも僕はマジックを始めたばかりのころ、この能力のことを「召喚したターンから攻撃ができる」能力だと勘違いしたんだ*3
これはデュエルマスターズ『スピードアタッカー』からくる連想だったんだけど、どちらも素早いことがフレーバーとなっている能力だから僕の中で変な関連が生まれてしまったのかもしれない。
これは僕の個人的な勘違いだけどこれまで紹介してきた接死や防衛に比べると必ずしも名前=効果という風には一致しづらいんじゃないかな。
先制攻撃はまだわかりやすい方だけど今後紹介していく予定の能力たちも必ずしも名前だけで能力が予想できるとは限らない(とはいえフレーバー面を考えると名前と効果には関連があるように作られてるけど)から変な先入観を持たないようにしようね。


最後に先制攻撃と関連のあるカードたちを見ていこう。

まずいつも通り先制攻撃を共有するスリヴァーを見ていこう。


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やはり基本的な能力だけあって共有するスリヴァーも多いね。

まず初めは《かぎ爪のスリヴァー》だ。
スリヴァーは基本的に「○○(漢字2文字)スリヴァー」といった日本語訳が与えられるんだけど、テンペスト収録のこいつはまだ翻訳ルールが決まっていなかったのかもしれないね。
このスリヴァーは名前の通り仲間たちにその鋭いかぎ爪を共有するみたいだ。
しかもただのかぎ爪じゃないみたいだ。

「剣の長さ分ぐらいは奴らから離れていろ!」というジェラードの号令は、スリヴァーのかぎ爪が突然長く伸びてきたために途中で止まってしまった。「待て!! ―長槍を出せ!」

ジェラードはベナリア軍の指揮官として武芸の達人として称えられている人物だ。
最終的にはファイレクシアと戦い自らの命と引き換えにヨーグモスを打ち倒したいわば英雄だ。
そんな彼をも驚かせたのが《かぎ爪のスリヴァー》というわけだ。
本来なら剣ほどの距離で十分だった間合いがこいつの登場で長槍ほどもかぎ爪を伸ばして襲う姿に変形するのは相手よりも先に攻撃する機会を得る先制攻撃のイメージにぴったりだね。


次に《長槍スリヴァー》。

「この長柄の武器が役に立ちそうだったのに!」
―ベナリアの巡回兵、メリク・エイダー

メリク・エイダーもベナリアの兵士で、ジェラードの一族であるエイドム・キャパシェンの副官を務める人物だ。
彼も突如長槍のように伸びたかぎ爪のせいで自分の武器が優位性を失ったことを嘆いているね。
性能面を《かぎ爪のスリヴァー》と比べてみると1マナ重くなることでサイズが1周り大きくなっているね。
しかも《かぎ爪のスリヴァー》と違い自軍のみの強化になっているんだ。
《長槍スリヴァー》が現代マジックに適応していることが見て取れるね。

我らの槍の長さは、我らが群れと戦う時の助けだった。しかし、今やその優位さすらも失われてしまった。
―ベナリアの勇士、エイドム・キャパシェン

これは《吐毒スリヴァー》のフレーバ・テキストだね。
フレーバー・テキストに出ているのはさっき出てきたメリクの上官だけど、おそらく《長槍スリヴァー》で言及しているメリクと彼は会っていないんじゃないかな?
それは、《吐毒スリヴァー》が次元の混乱で収録されたスリヴァーだからだ。
次元の混乱では「現在我々が知るマジックの歴史とは異なる世界線のマジックがとある事件で混在してしまった世界」をテーマにしているんだ。
だから《吐毒スリヴァー》と出会ったエイドムの部下であるメリクと《長槍スリヴァー》と出会ったメリクはパラレルワールドの関係にあるといえるね。
さて、改めて別の歴史を歩んだ次元の混乱のスリヴァーたちに話を戻そう。
次元の混乱側の歴史では先制攻撃は白ではなく黒が担っているみたいだね。
そして、白が槍状の武器を用いてリーチを確保してきたのに対して次元の混乱側ではその吐き出す毒によってリーチを確保しているんだね。
あと《吐毒スリヴァー》は《かぎ爪のスリヴァー》同様全てのスリヴァーを強化するんだ。
この頃のスリヴァーたちには敵味方隔てることのない強烈な仲間意識があったのかもしれないね。


最後に《先制スリヴァー》。

恐怖のあまり背を丸めることばかり考えて、すでに攻撃を受けたことにも気づかない。

もう名前からして素早く相手をしとめる姿が見て取れるね。
他の3種が攻撃のリーチを伸ばすことで戦闘を有利にするよう変質したのに対して《先制スリヴァー》は素早く相手をしとめる方向に変質したみたいだ。
ちなみに赤1マナのスリヴァーは《先制スリヴァー》が初めてらしいよ。
1マナ1/1という身の軽さも先制攻撃のイメージとマッチしていていいね。


さて、スリヴァーたちには別れを告げて次はこのカードについて見てみよう。


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なかなかふざけた見た目をしているね。
でもこれも立派なマジックのカードなんだ。(まあ、大会とかでは使えないけど)
このカードはMystery Boosterというセットに収録された「R&D Playtest card」と呼ばれるものでWotCが開発中にテスト用として作成したデザインを楽しむことができるものとして作られたものなんだ。

このカードの性能を見る前になぜこのカードのことを取り上げるのか先に話そう。
その話をするためにはまずマジック黎明期まで遡ることになるんだ。

その当時プレイヤーたちの間ではこんなジョークが流行っていたらしい。
曰く「Throat Wolfという名前のFirstest strikeを持ったウルトラレア(またはスーパーレア)のカードが存在する」と。
このFirstest strikeという能力、要は先制攻撃/First strikeよりも先に攻撃ができる能力であると噂されていたんだ。(ゆえにFirstest)
よくあるジョークの類だけどこれと他のジョークの違いは、WotCが当時出していたマジック専門誌『Duelist』でこれについて取り上げられたということだ。
そしてその時《Throat Wolf》はこんなテキストだと紹介されたんだ。

Throat Wolf (5)
Throat Wolfの召喚
Firstest Strike
Throat Wolfは、対戦相手のアンタップ・ステップの間に攻撃してもよい。
Throat Wolfは、攻撃に参加してもタップしない。

4/4

まあ能力についてはジョークだからマジックのルール内でどう動くのかは触れないけど、このジョークがWotCにまで届くほど当時有名だったことがわかるね。

それから時を経てビジョンズには《Throat Wolf 》をもとにこんなカードが収録された。


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《タールルームの勇者》は普通の先制攻撃しか持ってないけどブロックするかされるたびに相手の方の先制攻撃を失わせることでFirstestを再現しているね。
フレーバーテキストからも彼が誰よりも素早く対応できることがわかるね。

タールルームの言葉に、「驚かされる」という言い方はない

彼らに対して意表をついてやるのはなかなか難しそうだ。

それじゃあ本題に戻って「R&D Playtest card」として印刷された《Throat Wolf 》のテキストを見てみよう。

Throat Wolf (1)(赤)(赤)
狼(Wolf)の召喚
あなたはThroat Wolfを対戦相手の戦闘フェイズの間に唱えてもよい。
Firstest strike(このクリーチャーは先制攻撃を持つクリーチャーよりも前にクリーチャーに戦闘ダメージを与える。)
各対戦相手の各ターンの最初の戦闘フェイズの後に、追加の戦闘フェイズを行う。その戦闘フェイズの間は、Throat Wolfのみが攻撃できる。
[テストカード - 構築では使用できない。]

3/1

Firstest strikeについては元のジョークに則っているから省くとして、他の能力も相手の戦闘フェイズに出てきて奇襲する感じとか各対戦相手のターンに戦闘するフットワークの軽さとかでその素早さを表現しているね。
ちなみに「狼(Wolf)の召喚」となっているのはかつてクリーチャーのサブタイプを「○○の召喚」と書いていた再現なんだ。
元ネタの時代背景に合わせた細かい再現だね。





さて、先制攻撃について色々見てきたけどどうだったかな?

もしこれが面白いと思ってもらえたら幸いだ。

次回は今回の記事にも既に名前が出てきていたあのキーワード能力について見ていこう。
その日まで、あなたの対応力の早さが相手を上回りますように。

*1:マローのtumblr"Blogatog"で言及 

https://markrosewater.tumblr.com/post/184051958838/were-seeing-more-first-strike-when-its-your
markrosewater.tumblr.com

*2:同じく"Blogatog"内で言及 

https://markrosewater.tumblr.com/post/184052468393/whats-wrong-with-first-strike-that-wizards-isnt
markrosewater.tumblr.com

*3:この能力は別のキーワード能力としてマジックに存在している。それについてはまたの機会に…

【お気持ち表明】禁止告知から見るマジック

禁止告知から1週間が経った。

 

mtg-jp.com

 

今回はスタンとヒストリックに対しての禁止、相棒のルール変更がなされることが事前にアナウンスされていた。
禁止についてもそうだけど何よりも相棒のルール変更という前代未聞の処置にあちこちで話題に上っていた。

そしてやっぱりというべきかその告知は様々なところで物議をかもしている。
僕もこの改定を見ていろいろ思った1人だ。
先に断っておくと僕はお気持ち表明が得意ではない。
なので誰かを共感させようとかこの界隈に一石を投じようなど一切考えていない。
この記事は僕がこの瞬間に思ったことを後で見返すための記事だということをあらかじめ記しておく。

 

 

まず、やはり大きな反響を呼んだのは相棒のルール変更だろう。

 

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これまでもカード単位での細かい修正・エラッタは行われたことがあったがメカニズムすべてが別物になったのはおそらく初めてだ。
イコリアリリース以降、相棒が根本からおかしいことは早い段階で認知されていた。
そして公式からも何度か相棒についてルール変更も含めた議論をしていることが言及されていた。
だから変更が加わることに関しては僕も異論はない。

ただ僕は腑に落ちていなかった。

それは僕自身が相棒というメカニズムを楽しんでいたからだ。

確かに相棒はマジックの根底を変えてしまった節がある。

変更がなされていなければ確実に相棒以前・相棒以後といった具合の断絶がもたらされるのは確実だった。

それでも相棒を擁護したくなるには大きく分けて3つの理由があった。

 

 

1つ目の理由が相棒の使用感がとてもよかったからだ。

制限は創造の母とマローが常々口にしている通り、相棒がデッキ構築に与えた制限は久しぶりにデッキ構築欲を刺激した。

そして相棒は僕にとって使ってみて楽しく使われて不快でないメカニズムだった。

普通に考えると強すぎるメカニズムは使われるとウンザリすることもしばしばあるが、相棒に関しては例外だった。

おそらくゲーム前に相棒が見えてることでキープ基準が決められるから一方的に蹂躙されることが少ないことが起因しているんじゃないかなと思う。

まあ、それがゲームの分散性を下げて不健全な方向にマジックを進めていることも確かで、相棒というメカニズムの壊れ具合の一端を担っていたわけだが。

ともかく相棒は端的に言って楽しいカニズムだった。

 

よく強すぎるカードが出現するたび「公式はテストプレイをしていない」「テストプレイチームは仕事しろ」などと冗談交じりに批判されることがある。

相棒に関してもその手の批判がなされているのを何度か目にしたことがあるし一時期の僕もそう考えていた。

 

 

だけど最近は「しっかりテストプレイをした、だからこうなった」という考えに代わった。

それはテストプレイしたのでなければここまで強さと楽しさを両立したカード(しかもサイクル・メカニズム単位で)が作れるとは思えないという結論に至ったからだ。

そもそも少人数のテストプレイチームが製作途中でカードの効果も収録されるカード群も変化する中で行ったテストプレイ環境と収録カードが完全に固定された環境で全世界のマジックプレイヤーが24時間絶えず試行錯誤を行う現実の環境を比べて「なぜ見逃したんだ。見ればわかるだろ」と批判するのはお門違いもいいところだったと僕自身の発言に対して思う。

そして「安全だが弱く面白みに欠けるカード」よりも「強くて危険だが使って楽しいカード」を優先するのがマジックのあるべき姿だとも思う。

それがセットの看板になるメカニズムであるならなおさらそうだったのだろう。

 

 

2つ目の理由が相棒がいたこの環境が(少なくともスタンでは)ひどく歪んでいるとは思わなかったからだ。

実際《空を放浪するもの、ヨーリオン》を使ったデッキがトップメタには君臨こそしていたが、《夢の巣のルールス》や《巨智、ケルーガ》、《獲物貫き、オボシュ》といった他の相棒もメタゲームに食い込んでいたし、《空を放浪するもの、ヨーリオン》デッキ自身もジェスカイルーカファイアーズにする以外にアゾリウスにまとめたりバントカラーにしてみたりと1つの相棒にも選択肢は複数存在していた。

また、荒野の再生やジャンド要塞、ウィノータなどの相棒を使わないデッキも存在し、イコリア以降のメタゲームは群雄割拠の様相を呈していたように見えた。

少なくともArenaで遊んでいる間、僕は特定のデッキに対する過剰にヘイトが高まることはなかった。

これは環境がうまく自浄作用を働かせてメタを回していたからといえるんじゃないかなと思っている。

 

相棒が消えたスタン環境は何も失わなかった荒野の再生とジャンド要塞あたりが早速結果を残したようだ。

 

www.izzetmtgnews.com

 

www.izzetmtgnews.com

 

 

相棒がいたときから活躍していたデッキたちだ、即座に結果を出すことは当然のように思う。

これが一時的なメタゲームの側面であり、相棒がいたときより良い環境が生まれるかは基本セット2021次第だ。

 

 

3つ目の理由が相棒というシステムがイコリアでなければ収録されなかったであろうという明確なフレーバーに基づいたメカニズムだったからだ。

カニズムには大きく分けて2つあると考えている。

1つが変容や星座、動員みたいなその次元やストーリーに深く根差したフレーバーに富んだメカニズム。

もう1つがサイクリングやキッカーなどのゲームバランスのために採用されたフレーバーに寄り添っていないメカニズムだ。

こういう形で2つに分けると、相棒というのは圧倒的に前者に含まれるメカニズムだといえる。

まず、イコリアというのを端的に表すとそれは怪物の世界といえる。

強大で理不尽な災厄を撒き散らす怪物とそれらから身を守り対抗する人間たちという対立構造がイコリアという次元が他の次元とは違う明確な要素の1つだ。

しかし、同時にそんな分かり合えないはずの両者が絆で結ばれ協力しながら生きていくという要素もイコリアたらしてめている要素の1つだ。

これらの要素のうち、相棒は後者の要素をゲームにうまく落とし込むために作られたものだ。

そして相棒はその仕事を見事にやり遂げている。

なぜそれはクリーチャーなのか。それは概念的存在でも非生物でもない生身の生き物であるからだ。

なぜそれは人間ではないのか。それは人間と怪物の絆をフィーチャーしている。そしてプレイヤーは(ほとんどの場合)人間だ。

それはなぜゲーム外から出てくるのか。それはプレイヤーのそばに寄り添い、協力を求めるときには素早く駆け付け君の助けになるためだ。

なぜデッキ構築に制限をかけてくるのか。普通人間と怪物は対立しているものだ。その両者が手を取り合うとすればそれは互いの中に同じ価値観、もとい絆が必要だ。

何故それは相棒という名前なのか。これまでの要素でカード(怪物)とプレイヤー(人間)は互いに同じ方向性を持ってデッキ作成という共同作業を成し遂げた。そして実践では君の呼びかけに従いゲームを有利に運ぶ手助けをしてくれる。それはもはや一蓮托生の存在、相棒と呼ぶにふさわしい関係を表しているからだ。

ヴォーソスだけでなく、メルヴィン的視点からもフレーバーに富んだとてもよくできたメカニズムだと思う。

 

 

さて、僕が相棒を楽しんでいた理由は挙げたけど、当然相棒というシステムが壊れていたことも認識している。

かつて第3回グレート・デザイナー・サーチという企画で提出された《遠見の忠告/Farsight Counsel》というカードがあった。

 

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それは青黒6マナのソーサリーで1ドローするだけのカードだったが、ゲーム外から唱えてもよいというデザインだった。

このカードは開発部内で「やるかどうかは置いといて適切なマナコストはいくらになるか」という議論が活発になされたカードだったとマローが紹介している。

それから時を経て、その時の議論が活かされたかどうかは確かめる術は僕にはないが、満を持してマジックの世界にやってきた相棒はその議論は十分に生かされなかったように思う。

6マナソーサリーで1ドローできるだけの呪文が散々議論されたのだ。

生物という形で戦場に残り続け、最悪そのままゲームを決めることができるカードのコストにしては甘すぎる決定だったと思う。

これは単純に今ある相棒たちのコストを増やせばいいという話ではない。

もちろん今の相棒たちのコストはそのパワーに対して安いが、根本はもっと別のところにある。

それは「毎ゲーム必ず初手にありしかもハンデス等で邪魔されない安全な8枚目の手札」という点だ。

前述のとおりスタンダードではうまくメタを回していたとはいえ大量の強力カード、サポートカードがある下環境ではそうも言えない。

わざわざ語るまでもないだろうから詳しくは語らないが相棒というシステムの都合上ヴィンテージでさえ禁止にするしかなかったというだけで十分その脅威は語れる。

しかし相棒はイコリアの看板メカニズム、多くのプレイヤーに使ってもらいたいという気持ちがあったのだろう。

みんなに使ってもらうにはカードパワーが求められる。

WotCは相棒が持つデッキ構築に制限をかけることが結果的にコストとして働きある程度のカードパワーを担保できると思ったのかもしれない。

だがその結果は知っての通り。

その制限はコストとしては緩すぎ、もしくはコストにすらなっておらず結果的に何の制御もかかっていない相棒は次々と下環境を自分たちで染め上げてしまった。

かくして相棒はマジックの歴史を激変させてしまった。

 

ここでWotC下環境において相棒をすべて禁止にすることも選択できたが、それは彼らが望んだ未来ではなかったようだ。

だから相棒そのもののルールを変更するという前代未聞の解決策に移った。

 

では実際にどう変わったのか。それを見てみよう。

 

 各ゲーム中に1度だけ、あなたはソーサリーを唱えられるとき(あなたのメイン・フェイズの間でスタックが空であるとき) に{3}を支払うことでサイドボードからあなたの相棒をあなたの手札に加えることができる。これは特別な処理であり、起動型能力ではない。 

 

 つまり、直接ゲーム外から戦場に出していた代わりに3マナを支払って手札に加えられるようになったというわけだ。

この変更を見たとき僕はある知見を得た。

それは今までの相棒は超強力な『願い』をいつでも撃ってていたようなものという事実だ。

『願い』はゲーム外から手札にカードを引っ張ってくるカードの総称だ。

最近だと《成就》がそうだ。

 

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『願い』は手札1枚とそのマナコストを支払ってカード1枚をデッキ外からサーチしてくることができる。

ほしいけど普通には引きたくないカードを必要なタイミングで引っ張って来れる、それが『願い』の強みだ。

その代わり『願い』は本来ならテンポを失うし、手札も増えないようになっている。

でも相棒は違う。

厳密には違うけど相棒を唱えたとき、それはその直前にマナも手札も使わずテンポ損を気にしない(打ち消されない)『願い』を撃っていたと言い換えられるんじゃないかな。

これがいかに壊れているか想像するまでもないよね。

 

ということで相棒のルールは変わるべくして変わった。

それによってスタンを含め多くの環境で相棒を見る機会は少なくなるだろう。

現にスタンで使っていた僕の相棒デッキはルール変更後に何度か回してみたがほとんど勝てなくなってしまった。

それに対戦相手として相棒を見る機会もめっきりと減ってしまった。

相棒を楽しんでいた身としては少し寂しさもあるがこの選択がマジックにとっていい方向に進むと信じている。

 

ただ、下環境について僕はほとんどプレイしないから人ごとだけど、一度でいいから今のルールにしてから禁止するかどうかの判断をしてほしかったという気持ちもある。

まあ、それでも《夢の巣のルールス》はヴィンテージ禁止を免れなかっただろうけど。

 

 

 

さて、相棒のことは一回置いておいて禁止されたカードについて見てみよう。

僕は禁止告知が発表されたとき次のように考えた。

 

《時を解す者、テフェリー》と《創案の火》は禁止の可能性が高い。《軍団のまとめ役、ウィノータ》と《裏切りの工作員》のうちどちらかを禁止にするならばデッキを残す意味でも《裏切りの工作員》の方が禁止になるだろう。

 

結果はご存じの通り《創案の火》と《裏切りの工作員》がスタン禁止、ヒストリック停止となった。

 

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この結果については概ね異論はない。

《創案の火》は踏み倒しカードの常としてカードプールが広く、強力な高コストカードがある環境ほど脅威度が増すカードだ。

そして、これが《時を解す者、テフェリー》との最大の違いだと思うんだけど、次のローテで《創案の火》は落ちない。

つまりローテ後の環境まで考えると《創案の火》がある前提のデザインはとても窮屈なものになってしまうということだ。

しかもよりによってローテ後一発目のセットはゼンディカー次元への再訪だ。

土地をテーマとした次元でランプデッキの成立やそこでフィニッシャーを張るようなファッティが収録されることが期待されている中で《創案の火》から踏み倒した方が強いというのはWotCが望んだ環境じゃないと感じる。

だから禁止予想に挙げたし現に禁止となっても納得がいく。

 

一方で《時を解す者、テフェリー》はローテで環境を去ることが確定している。

それでも僕はフラッシュ系をはじめとしたインスタントタイミングを重視しているデッキを環境から追い出し、またその効果から除去することが非常に困難なカードは非常に不健全だと考える。

だから個人的ヘイト感情も多分にあったことは承知の上で禁止カードの予想に挙げたんだけど、その後基本セット2021でこんなカードたちがプレビューされた。

 

 

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露骨に対策カードを刷ってきた。

なるほど、ローテも近いし基本セットでも対策するからOKとみなされたわけだ。

……うん、個人的なヘイト感情はあるけどそれと禁止の是非は関係ない。そういうことだと納得して残りの3か月を耐え忍ぼう。

 

さてもう一方の禁止は《裏切りの工作員》だ。

《裏切りの工作員》は《軍団のまとめ役、ウィノータ》や《銅纏いののけ者、ルーカ》などから早期に踏み倒され、そのままゲームを一方的にしてしまうカードだということで禁止にされた。

また、禁止の理由としてそれをされると非常に不愉快という理由も挙げられていた。

おや、そのような理由でかつてスタンで禁止になったカードがあったような……

 

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そう、《反射魔道士》だ。

 

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どちらも一度仕事をすればその後の反撃を許さずにアドを維持し続けるカードだ。

そういった意味で《裏切りの工作員》が禁止となるのは妥当性がある。

しかし、デッキを維持する目的として《裏切りの工作員》が禁止になると予想はしたけどやはり《軍団のまとめ役、ウィノータ》も危険な気がする。

それは《銅纏いののけ者、ルーカ》も含めてどちらも《創案の火》と同じ踏み倒し系のカードだからだ。

今後デザインしていくにあたってこれらのカードを意識し続けるのはデザインに強い負荷を与えているんじゃないかと僕は思う。

もしこの負荷を意識しなければ間違いなく《軍団のまとめ役、ウィノータ》(もしかすると《銅纏いののけ者、ルーカ》も)も禁止リストに名を連ねる可能性がある。

ただ現時点ではその踏み倒し先たる《裏切りの工作員》が禁止されたから様子見といったところなのだろうか。

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さて、禁止の内容については文句がないのは既に述べたとおりだ。

だけど最近のWotCの禁止方針については少し不満がある。

それがこれだ。

 

 

まあ、これは禁止告知直後に感情的になって書いた文だから口が悪いが今も概ね感じていることだ。

少し懐古的になってしまうが、僕がマジックを始めたタルキール・ブロックの頃は「WotCはスタンとリミテを意識してカードのデザインをしている。だから下環境で禁止を出すのは仕方ないがスタンで禁止を出すのはデザインの失敗を認めることになる」といった風潮があった。

この風潮は僕も賛同だった。

この頃の僕はスタン禁止のことを「ただでさえ2年間しか使えないカードから禁止を出すのはWotCの敗北宣言」だと認識していた。

この方針が変わったのが先ほど挙げた2017/1/9の禁止改定だ。

その前のローテでは《集合した中隊》をキーカードに据えたデッキが圧倒的勝率をたたき出していた。

 

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しかし前述したようにWotCはスタンからは極力禁止を出さないという方針を取っていた。

だから非常に強力で環境を染め上げたにもかかわらず《集合した中隊》はローテまで見逃されることになった。

その状況をWotCは間違っていたと判断したようだ。

過去のスタンの禁止はハードルが高すぎたと。

 

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その方針変更自体は素晴らしいことだと思う。

環境が不健全でつまらないまま次のローテまでの2年間を過ごすのは避けるべきだと僕も思う。

だが、そこから少しずつ何かが崩れていったようにも感じる。

 

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《守護フェリダー》の緊急禁止、カラデシュ・ブロック全レアリティ禁止排出など記憶に新しいプレイヤーも多いと思う。*2

 

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そして、激動のカラデシュ・ブロックが過ぎ、スタンにも平穏が訪れたと思ったところで奴らがやってきた。

 

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ここまでくると最近始めたプレイヤーも見知った顔が勢ぞろいする。

まず初めに《死者の原野》が先陣を切ると続くエルドレインの王権では《王冠泥棒、オーコ》《むかしむかし》《夏の帳》が暴れまわり瞬く間に禁止になった。

 

その時、WotCはこんな声明を出している。

 

 

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この記事では主に過去(カラデシュ)に出した禁止について、そこから学んだ教訓、最近(エルドレイン)の禁止と《王冠泥棒、オーコ》の失敗についてが掲載されている。

 

まずカラデシュの禁止について、WotCは「スタンのパワーレベルが低すぎたことが禁止乱発の原因」だと説明している。

つまり、全体的に弱いカードが多い中では少し強い方向にぶれたカードがあるだけで他のカードがそれを止められず、そのカードが支配的になってしまうということだ。

これは環境が非常にカード1枚1枚に敏感で脆いことを表している。

禁止された《密輸人の回転翼機》や禁止にはならなかったものの環境を支配した《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》なんかは本来環境が強ければ起こりえない形で支配的であったと彼らは認識している。

 

ここから彼らはスタンのカードパワーを上げて歪な支配が起こらないようにと舵を転換した。

全体としてのカードパワーが底上げされれば一部の強力なカードが支配的になりかけても他のカードたちが押さえつけることができる。

こうすることで自浄作用が働き環境は健全な方向へと向かうというわけだ。

この方針転換はうまくいっていると彼らは評価している。

ただし《王冠泥棒、オーコ》を除いて。

 

彼らがその禁止カードを輩出したセットがスタンにあるにもかかわらず明確にデザインの失敗だったと認めることは非常に珍しいことだ。

アメリカが謝罪=責任を取るという文化が関係しているのかもしれないが、基本的に彼らが失敗を失敗だとタイムリーに認めることは少ない。

それほどまでに《王冠泥棒、オーコ》は彼らの目指すべき理想からかけ離れた存在だったことがわかる。

 

 

この記事から、彼らが過去を振り返り、そしてそこから学ぼうとする姿勢があることはわかる。

それはいいことなんだけど、根本的にずれているんじゃないかなと僕なんかは思ってしまう。

それは、「そもそも禁止カードを出すハードルを下げたのが間違いじゃないか」ということだ。

前述したようにあるカードが環境を支配し歪んだ状態が続くことを僕もよしとは思わない。

ただ、このことで「最悪禁止にすれば環境を正せる」と思っているんじゃないかという心配がある。

上の記事ではカラデシュとエルドレインの禁止は違う理由で生まれたと語っている。

本当だろうか?

カラデシュの禁止カードたちは本当に環境だけが理由だったのだろうか?

後発のコストの踏み倒しカードは《霊気池の驚異》の教訓を生かせたのか?

 《反射魔道士》《約束された終末、エムラクール》のような使われると不愉快になるカードから何を学んだのか?

そして、彼らのいう”うまくいっている”は本当に信用していいのだろうか?

もちろんカードの強さはその時の環境とメタによる相関関係であることはわかっている。

それでも過去の失敗がなぜ失敗したのか、それがどう先のデザインに生かされているのかを知りたいと思うことは許されていいんじゃないだろうか。

《王冠泥棒、オーコ》に関しては珍しくそれが語られた。

だが中身は「今のバージョンになる前はもっとつまらないものだった」「パーマネントを無力化する効果のコストを過小評価していた」「クリーチャーで対処できると考えていたが3マナプレインズウォーカーに対しては有効ではなかった」「もっと対策カード刷ります」といった感じでどこか腑に落ちない回答が多いと感じた。

 

まとめると禁止のハードルを下げるのならその分デザインは慎重になるべきだし、禁止せざる負えないのならばそのカードが印刷に至った経緯について説明があってもいいと思うわけだ。

ここ数年、《暴れ回るフェロキドン》解禁から《死者の原野》禁止までの約2か月間以外スタンには禁止カードが存在し続けている。

少なくとも僕はそんな環境は健全とは思えないしこんなにポンポン禁止を出し続けている現状に対してWotCがどう思っているのだろうかという疑問はある。

 

 

 

ここまで相棒について、禁止について書いたけど基本的にマジックが好きな気持ちは今のところ変わらない。

もしその気持ちが陰ってきていたなら僕はこんな記事は書かなかっただろう。

今回の禁止告知だけで見た場合、中身は概ね納得のいくものだった。

ただそこから相棒に対する気持ちの整理、最近のスタンの禁止方針に対する不満を文章にまとめておこうと思った。

最後にもう一度、これは僕のお気持ち表明であり回想録であり備忘録だ。

何を言っているんだと思われた方々には時間を取らせて申し訳ないが忘れてもらえると幸いだ。

それでは好きだった相棒に別れを告げ、いつの日か禁止のないスタンが戻ってくることを願って。

*1:この記事を書いている間に《軍団のまとめ役、ウィノータ》はヒストリックで使用停止となった。先週やっとけよという気持ちもなくはない

*2:のちに《暴れ回るフェロキドン》は解禁された。スタンでの禁止解禁は初